SINBA

日本に突然現れた奇跡の歌姫はまだ15歳。
あなたの手で磨いてください、この才能を!
SINBA、デビュー・マキシ・シングル『RESET』リリース。

（初出『Groovin'』2002年11月25日号）

　ある日、突然手にすることができたサンプル盤をドキドキしながら聴いている自分に驚いた。何でこんなに高ぶる期待感を持つことができたのか、実はわからない。今現在、手元にあるのはこのサンプル盤たったひとつ。その他に彼女を知ることが出来るものは無い。経歴、つまりプロフィールがまったくわからないのである。しかしこれは、プロフィールなんて気にせず、とにかく歌声を聴いて欲しいということなのではないか？説明をしないのではなく、その必要がないと了解した。もちろんこれを読んでいる皆さんにもその歌声を聴いてもらうのが一番ではあるが、ここはまず、サンプル盤に添えられていた私が気になって仕方がなかった文章を紹介したいと思う。
　「この声、15歳。奇跡の歌姫、突如現る。女性R&BシンガーやGIRL POPはもう出つくした、と、おおざっぱにお考えのあなた、われわれもそう思ってました」ここまで読んで、本当に同感だった。世紀末から多くの女性シンガーが誕生した。が、そこにも氾濫・衰退があった。今も歌姫として君臨しつづける2人がいる。あえて名前は挙げないが、2人が1つの時代を築き上げてしまった。新しいものが生まれたからといって、簡単に受け入れられていくのか?「が、いるところにはいるもんです。この声、15歳。あなたは信じられますか？」わからない。信じられない奇跡とはどういったものなのか？先へ進もう。「SINBA、この不思議な名を持つ少女は、歌とダンスと、思いつくままに詩や絵を書くのが大好きな、普通の女の子。特殊な教育を受けたわけでもなく、大げさなシンデレラ・ストーリーにのっかったわけでもなく、ごく偶然に、デビューのきっかけをつかみました。細かな紹介は、いまはやめておきましょう。なにか、夢がなくなるような気がしますから。とりあえず、できたての音楽を、聴いてみてください。今までに出会った誰とも違う、不思議な声。この声に、私たちは夢を見ます。あなたもいっしょに、かけてみませんか?」何か感じないだろうか？
　そして、このSINBAという名前が持つ、どこか不思議な響きにもインスピレーションを感じてしまう。どんな意味がそこに込められているかはわからないのだが、神秘的な力や宇宙規模の優しさをイメージさせるのだ。
　さて、やはり彼女の声の魅力については触れなければならないだろう。あくまでも私の感じたままだが、深い海のブルーと空の淡いブルーのちょうど境目にある爽快な空気を思わせるような、深くて透明感のある伸びやかな声。少し太めのしっかりした声質は高音になるとかすかにハスキーに聴こえる。リズム感は半端じゃない。ダンスが好きというだけあり、体の中で脈打つリズムといえるものを持っているのではないだろうか？これがまだ15歳なのか？と驚く。サウンド面では意外なほどのわかりやすいメロディ。1度聴いたら頭の周りをぐるぐる回る。不思議な声は何故か親しみやすく穏やかだ。
　細かい説明は要らない。偶然見つかったこの新しいこの奇跡に感謝し、この声を信じてみたいと思う。

Text by 有田幸恵（島田駅前店）