松田弘&Quiet Love Notes

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松田弘&Quiet Love Notes

サザンの松田弘から届けられた約5年ぶりのソロ・アルバムは、
個性的な8人の女性アーティストと織り成す<究極の愛のデュエット・コンピレーション>!
AORへのオマージュがここに見事に昇華。冬の夜長はこの1枚とともに…。

(初出『Groovin'』2002年11月25日号)

松田弘&Quiet Love Notes-A.jpg サザンオールスターズの松田弘が5年ぶりのソロ・アルバムを発表した。『[FUTARi.] O.S.T.』と題された本作は、街行く<ふたり>の様々な愛のかたちと日常を捉えた、架空のサウンドトラック・アルバムである。松田はプロダクション・ノートでこう語る。「80年代のバブルの時期には、豊かな日本だからこそ求めたスタイリッシュな愛の形があったような気がしているのですが、今は、本当にどこへ向かうのか混沌としていて、ステレオタイプに偶像的な対象もない時期だと感じているんです。だから僕は、もっと人間が本質的に求める安心感というか、つまり<愛>を歌うことで、ピースな雰囲気を届けることができたら良いな、と思ったことがレコーディングに入るきっかけになりました」そして、<愛を歌う>ための選択として、自分のペースとフィールドを大切にしながら、メッセージをしっかりと持って活動している8人の女性アーティスト達との共演という形がとられた。
 松田とともに愛を語る「Quiet Love Notes」なる8人の女性アーティストは、いずれも個性的な顔ぶれだ。まずは、女性の日常をリアルに描き出したら右に出る者なしの<OLの教祖>古内東子。ここでは、愛の終わりの情景を映す切ないナンバーを、表情豊かなヴォーカルで綴っている。会話をしているかのような松田と古内のデュエットは、まるで映画のワン・シーンを観ているようだ。そして、paris matchのミズノマリは、ボサ・ノヴァ調のリズムに乗せて、洗練されたヴォーカルを披露。晴れた休日の午後に聴きたくなる、ハッピーなラヴ・ソングだ。また、細野晴臣にその才能を見出されたHirokoは、鈴木茂の名曲「砂の女」のカヴァーという難しい題材にもかかわらず、新人らしからぬ情感溢れる歌声を聴かせてくれる。尚、この楽曲には、鈴木本人もギターで参加しているので要チェックだ。他にも、ジャンルを超えたアーティスト陣が並ぶ。ハワイのソングライター&プロデューサー、ケネス・マクアカネのもと、昨年夏にアルバム『hana』でデビューした有里知花を始め、ラジオ・パーソナリティーやCMナレーション等、多岐に渡る活動をこなすシンガー・加藤いづみ、今回が初めてのレコーディングだという女優・板谷由夏、新日本フィルハーモニーやワルシャワフィルハーモニー等で活躍してきたヴァイオリニスト・川井郁子、本格的にソロ活動を始めた、元COSA NOSTRAのヴァーカリスト・鈴木桃子…この個性豊かな8人は、言うなれば、監督・松田弘によって創られた『FUTARi.』という恋愛映画の中の女優である。そして各々が異なる輝きを放ち、見事な演技を見せてくれている。
 松田本人が愛してきた音楽へのオマージュ的な意味合いも込めて、「AORと呼ばれた良質ポップスの2000年代的ニューウェイヴ・サウンド」を目指したという本作。人肌恋しい冬の夜長に聴きたい1枚である。

Text by 池 佐和子

『[FUTARi.] O.S.T.』
[FUTARi]O.S.T-J.jpg



CD
ビクターエンタテインメント
VICL-61008
¥2,500(税抜)
11月27日発売

約5年ぶりのソロ・アルバム。日常の様々な愛のかたちを捉えた、架空のサウンドトラック・アルバム。古内東子、ミズノマリ(from paris match)、有里知花、川井郁子ら、個性的な8人の女性アーティストとの共演作。Hirokoとの共演曲「砂の女」では、鈴木茂がギターとして参加している。初回盤のみデジパック仕様。

【サザンオールスターズ 公式サイト】http://www.sas-fan.net/

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