CHEMISTRY

トリプルA面&トリプル・タイアップの超重量級のニュー・シングルが到着！
豪華サウンド・クリエイター陣を配した、三曲三様のカレイドスコープのような1枚。
年末のJ-POPシーンを席巻すること必至だ！

（初出『Groovin'』2002年11月25日号）

　2002年もCHEMISTRYは息もつかせぬ速さで駆け抜けていく。5都市7公演が実施された初のライヴ・ツアーの大成功に始まり、"韓国で戦後初、日本語楽曲全国放送"となった
2002FIFAワールドカップTM[KOREA/JAPAN]公式テーマソング「Let's Get Together Now」への参加、世界的な聖歌隊であるナタリー・ウィルソン&ザ・SOPコラールをフィーチャーした1stアルバムからのリメイク・シングル「君をさがしてた〜New Jersey United〜」や、彼らにとって新機軸である2STEPを基調とした、"自分自身を含めた同世代の代弁"ともいえる内容の5thシングル「FLOATIN'」のリリース、更に、Skoop On Somebodyや川村結花ら、ジャンルを越えたアーティスト達との精力的なコラボレーション等々…加速し続ける彼らから、遅れをとらずについていくのが精一杯だ。デビューわずか1年半にして、J-POPシーンをまるごと動かす存在である。何はともあれ、歌謡曲とR&Bの溝を完全に埋めたその功績は本当に大きいと思う。堂珍・川畑によって紡ぎ出されるヴォーカルの綾は、まさに唯一無二だ。雨後の筍のごとく出現した自称R&Bシンガーを尻目に、彼らは堂々と王者の風格を漂わせる。
　前作より約4ヶ月、早くもニュー・シングルが到着した。しかも、トリプルA面&トリプル・タイアップという重量感に溢れたものであり、日本の音楽シーンをリードする強力なサウンド・クリエイター陣を贅沢に配した1枚だ。1曲目の「It Takes Two」は、反町隆史&押尾学というゴールデン・コンビ出演による話題のフジテレビ系ドラマ「ダブル スコア」の主題歌としてO.A.中のナンバー。まさにCHEMISTRYの王道ともいえるミディアム・テンポのラヴ・ソングだ。MISIAの作品等でも知られ、プロデューサーの松尾"KC"潔氏が最も信頼をおくサウンド・クリエイター・和田昌哉によるトラックは、程よいポップ感覚を併せ持つ極上のR&Bチューンに仕上がっている。堂珍・川畑のヴォーカル・ワークの魅力も最大限に活かされている1曲だ。2曲目の「SOLID DREAM」は、フジテレビ系「めざましテレビ」のテーマ・ソング。「PIECES OF A DREAM」や「Point of No Return」を手掛けた、藤本和則&麻生哲郎の名コンビ久々の復活作だ。80年代のシティ・ポップスやAORに通じる爽やかなメロディーとトラックが心地よい。また、CMプランナーでもある麻生氏による叙情性に富んだ歌詞にも要注目だ。3曲目の「MOVE ON」は、ダイハツ「MOVEカスタム」CMソングとしてO.A.中のアップ・チューン。MISIAや平井堅らの作品を始め、「エヴァンゲリオン」の音楽監督としても知られる鷺巣詩郎がトラック・プロデュースを担当している。今までのCHEMISTRYの楽曲にはあまり見られなかったハウス的なアプローチが新鮮だ。
　何ともはや、三曲三様のカレイドスコープのような1枚である。それでも決して散漫な印象を受けないのは、プロデューサーである松尾"KC"潔氏の力量だろう。そして、それぞれのクリエイターが構築する世界を見事に消化して血肉とし、自分のものとして表現できるCHEMISTRYの実力はやはり本物だ。間違いなく年末の日本を彩る1枚になるであろう。

Text by 池 佐和子