久保田利伸

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久保田利伸

約9年振り、3枚目のベスト・アルバムとなる本作『the BADDESTⅢ』は、
渡米後から現在までの久保田利伸の軌跡をそのまま雄弁に語ってくれる超強力な1枚!
そのすさまじいまでの完成度の高さは、まさに真のアーティストが奏でるプロの神域だ。

(初出『Groovin'』2002年11月25日号)

久保田利伸-A.jpg ヤング(!)なみなさまには信じられない話かもしれませんが、R&B、HIP HOP、SOUL&FUNK等々、一般にブラック・ミュージックと称されるこれらのジャンルを日本人アーティストが体現し、なおかつそれがシーンのメイン・ストリームを担うなどということは、かつてはほとんど不可能だと思われていました。今はそんなことなど全くないですよね。現在、J-POPチャートを賑わしているのはHIP HOPやR&B系のアーティストですし、「日本人による日本人のためのブラック・ミュージックはすでにガッチリと市民権を獲得している」という意見に対して異を唱える人など、もはやどこにもいないのではないでしょうか。
 では、ブラック・ミュージック不毛地帯と思われていたかつてのメジャー・シーンに一石を投じ、その隆盛の礎を築いたのは誰なのでしょう?言うまでもなくそれは、久保田利伸その人に他ならないのです。彼の武器は、日本人らしからぬ抜群のリズム感、誰もが認めるヴォーカル・クオリティー、そして有り余る表現力。それらが如何なく発揮され、ブラック・カルチャーへのこだわりとリスペクトの念をポップなメロディーで巧みに包み込んだ彼の楽曲は、あっという間にシーンを席巻していきました。つまり、彼は日本のメジャー・シーンにブラック・カルチャーを持ち込んだチャレンジャーであり、ブラック・ミュージックをメジャーに浸透させたパイオニアでもあるのです。もし彼の存在がなかったら、現在のブラック・ミュージックの興隆は幻だったことでしょう。
 そんな彼が日本を離れ、活動の拠点をニューヨークに移したのは1993年のこと。奇しくもそれは、自身にとって2枚目のベスト・アルバム「the BADDEST II」がリリースされた年でもありました。すなわち、約9年ぶり、3枚目のベスト・アルバムとなる本作「the BADDESTⅢ」は、渡米後の彼の軌跡をそのまま雄弁に語る強力な1枚と言っても過言ではないのです。
 全16曲という破格のヴォリュームを備えた本作は、大ヒット曲「LA・LA・LA LOVE SONG」やシドニーオリンピック・イメージソング「ポリ リズム」をはじめ、ドラマ主題歌としてみなさまにも馴染み深い「Candy Rain」「Cymbals」、また「進ぬ!電波少年」で話題となった「AHHHHH!」などのヒット・ソングを収録。加えて「SOUL BANGIN'」「君は なにを 見てる」といったCMタイアップ・ソングの他、全米リリース・アルバムより「Nice & EZ」「Never Turn Back」をピックアップ。そう、本作はグルーヴィーでファンキー、かつメロウでスウィートな彼のBODY&SOULがたっぷりと詰め込まれた傑作盤なのです!
 そんな本作を聴けば、彼の楽曲の音楽的完成度がいかに高く、いかに素晴らしいものであるのか再認識させられること必至!あなたにも経験がありませんか?一見簡単そうに思える彼の曲をカラオケで歌おうとしたら難し過ぎて歌えなかった、なんてことが。すさまじく難しい技が盛り込まれているのに、それを久保田一流のポップ・センスでうまく中和してしまうのが彼の楽曲の最大の魅力であり、また心憎い玄人ワザの極地でもあるのです。
 渡米後、よりブラック・ミュージックへと傾倒しつつも決してポップな精神を失うことのない彼の音楽的センスは、年輪を重ねるごとにどんどん研ぎ澄まされ、また深みを増しているように思えてなりません。そんな久保田利伸という真のアーティストが奏でるプロの神域に、ぜひともその身を委ねてみてください。

Text by 秋野 櫻

『the BADDESTⅢ』
久保田利伸-J.jpg



CD
SME Records
SRCL-5460
¥2,913(税抜)
12月4日発売

久保田利伸が満を持して放つ約9年振り、3枚目のベスト・アルバム。大ヒット曲「LA・LA・LA LOVE SONG」「ポリ リズム」「Candy Rain」「AHHHHH ! 」を含む全16曲は、93年の渡米後から現在までの彼の軌跡を雄弁に物語っている。捨て曲一切ナシの傑作盤だ!初回盤のみ、豪華化粧箱BOX入り。

【久保田利伸 公式サイト】http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/kubota/

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