Lyrico

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Lyrico

まさに「Voices of Grace」=恵みの声。
4オクターブの声域を持つスーパー・ヴォーカリスト、Lyricoから全ての恋人達に贈るニュー・アルバムは、時空を越えた「出逢いと別れ」をテーマにした74分の壮大なドラマです。

(初出『Groovin'』2002年11月25日号)

Lyrico-A.jpg 女性ヴォーカルの曲が好きだ。「女性ヴォーカルものしか聴かない!」と決めている訳でもないし、男性ヴォーカルの曲が聴きたい気分の時もあるが、CDラックを眺めつつ何気なくステレオにセットするのは圧倒的に女性ヴォーカルものが多い。今年の夏はボサ・ノヴァ的な、ちょっと軽めの女性ヴォーカルの曲を好んで聴いていたが、季節の移り変わりと共に好みも変わり、最近はちょっぴり切ない女性ヴォーカルが気になっている。
 その名が「叙情的なソプラノ」という意味を持つLyricoは、強く切なく、今まさに私が求めている歌声を持つヴォーカリストである。Lyricoのニュー・アルバム『Voices of Grace』を聴いてまず感じたことは、この作品はLyricoが作り上げた「出逢いと別れ」をテーマにした74分のドラマなのではないかということだった。人が出逢い、愛し合い、そして別れる、そんな愛しく切ないドラマは遥か昔から繰り広げられ、そしてこれからも続いてゆく。その大きな時の流れの中であなたと出逢えた喜びを大切にしたい、という彼女の思いがアルバムを聴いていると伝わってくるのだ。
 『Voices of Grace』の中から特に紹介させていただきたい曲を挙げていくと、まずは和のテイストあふれる「キセキノハナ」。まさに「時を越えた愛の歌」といった壮大なラヴ・ソングだ。9月にシングルとしてリリースされた楽曲だが、今もロングセラーを続けているのも十分納得できる佳曲。Skoop On SomebodyのKO-ICHIROが楽曲を提供し、"あなたの痛みを分けてください〜世界でたった1人のあなたに出会えてよかった"というLyricoの優しい歌詞が印象的な「You're The Reason」は聴いているだけで優しくなれそうなラヴ・ソング。ベイビーフェイス風のロマンティックなサウンドに、Lyricoの少し抑えたヴォーカルが、大人のためのラヴ・ソングといった雰囲気を醸し出している。彼女の1人多重録音による「スカボローフェア」は、彼女が小学生の頃に出会った曲で、当時彼女が施した四重奏用のアレンジがもとになっているという、Lyricoのルーツ的楽曲だ。映画「目下の恋人」の主題歌でもある「キレイ」は、この映画の監督である辻仁成氏が詞を手がけ、さらに氏自身がバック・コーラスで参加しているという話題曲。今作の収録曲の中では短めの曲でありながらも、歌詞・曲共に独特の雰囲気が耳に残る、不思議な空気をたたえた曲である。イントロにアカペラを取り入れたアルバム・ヴァージョンの「Eternity.」では、コーラスに人気のヴォーカル・グループ「AJI」をフィーチャー。男性の声が入ったためか、シングル・ヴァージョンよりも切なさが際立ったような印象を与えている。
 2〜3曲おきにインタールードを挟み、Lyricoの時に切なく、時に力強いヴォーカルを充分に聴かせながらゆったりと進んでゆく今作。そこには"自分の内なる声に耳を傾け、大切なこと、やるべきことを見つけて時に流されずに歩いていこう"というLyricoのメッセージが込められている。街にはクリスマス・ソングが流れはじめ、1年のうちで最も慌しい季節に届けられた、このLyricoからの少し早いクリスマス・プレゼントを聴きながら、大切な人、大切なことに感謝するひとときが過ごせるように願っている。

Text by 大野裕子(函南店)

『Voices of Grace』
Lyrico-J.jpg



CD
Sony Records
SRCL-5495
¥2,913(税抜)
発売中

実力派ヴォーカリスト、Lyricoのニュー・アルバムは大ヒット・シングル「Eternity.」「キセキノハナ」他、映画「目下の恋人」(11月下旬公開)主題歌となった「キレイ」を収録。辻仁成が作詞&バッキング・ヴォーカルで参加。またSkoop On SomebodyのKO-ICHIROも楽曲を提供している。

【Lyrico 公式サイト】http://www.harumitsuyuzaki.com/

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