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ARTIST PICK UP

bkoz

願わくば時間をかけ、そしてユトリを持って、
彼らが徐々に大きくなるのを見ていたい。
そう思える「歌」と「音」がここで聴ける。

(初出『Groovin'』2002年11月25日号)

 bkozは沖縄発の音であった事は紛れもない事実だが、彼らが沖縄で生まれ育った人間たちではないのも事実。だからファースト・シングル(佳曲である)「南の島」をもって彼らの全てを知った気になるのは「まずい」よね。実際、今、手元にあって何回も繰り返して聴いている彼らのファースト・アルバムの中では「南の島」はあくまでも「完成度の高い一側面」でしかない。
 「?」という向きにはたとえば5曲目に収められた「Interact」を聴く事をおすすめしたい。リスペクト・アーティストにスティーヴィー・ワンダーとベイビーフェイスをあげる彼らの真骨頂がそこにはある。デビュー曲やセカンド・シングルの「真冬の魚」は素晴らしい楽曲ではあるが、アルバムの中には、それに比肩する名曲予備軍が隠されているってことだ。極上のバラード曲「U & I」のメロウな味わい、声質は微妙にダニー・ハザウェイを思わせ、ある意味70年代初頭のソウル・ミュージック(日本では当時ニュー・ソウルなんて言われていた)を想起させる。そう、普遍性の高い「音」は時代を超えた共通の「何か」があることの証明ともいえる作品だ。
 それにしても、このあたりの曲作りには彼らが普段相当に「音楽」を聴き込んでいるだろう事を感じさせてくれる。変に器用じゃなく、自らの信ずる=大好きな「音」を、内なる部分で醸成し「アルバム」を構築しているせいなのだろうか。
 他にも8曲目「瞳」やこれからの季節にはマストな曲「SNOW」も個人的には気に入った作品だ。願わくば時間をかけ、そしてユトリを持って(=最近は売り上げがすべてな風潮もあるので)、彼らが徐々にに大きくなるのを見ていたい。
 追伸:シングル「真冬の魚」のカップリング曲(「Stay」「OUR LAST TIME」)は共にアルバムには未収録。ところがこの2曲がまた良い曲なのですよ。特に「Stay」は80年代初頭のブラコン MEETS AOR 風な音作りが新鮮。ファンならずとも併せてお求めをおすすめしたい。

Text by 阿部犬郎

『v!be』
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CD
インペリアル レコード
TECI-1034
¥2,900(税抜)
12月4日発売

デビュー曲やセカンド・シングル「真冬の魚」に比肩する名曲予備軍が隠されている本作。70年代初頭のソウル・ミュージックを想わせる普遍性の高い「音」も聞こえて来る。おすすめは「Interact」「U & I」あたりか。「南の島」アルバム・ヴァージョンも心地よい。


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