マンハッタン・トリニティ

ARTIST PICK UP

マンハッタン・トリニティ

全員が超売れっ子アーティストで構成される
人気ジャズ・ピアノ・トリオの待望の最新作。
トップレベルのプレイとスタンダード中心の選曲で、すべての人におすすめできる1枚。

(初出『Groovin'』2002年12月25日号)

マンハッタン・トリニティ-A.jpg ジャズ・ピアノ・トリオというと、難しい顔をしてアドリブ・ソロを弾きまくり"聴いている方は全く分からん!"といったイメージが多少なりともあると思う。ここでおすすめするマンハッタン・トリニティの新作「ミスティ」はそういったものとは正反対の作品である。とは言ってもこの事は単に明るい楽天的な演奏であるという事とは一致しないのであしからず。
 まずアルバムを通して、メロディーがシンプルでゆったりとした曲が多いという事が1つ。楽しい雰囲気の中で演奏している様子が目に浮かぶようだ。特に、とっても有名な「YOU ARE MY SUNSHINE」が"こんな風になるんだ!"と感心させられる程のアレンジで楽しい気分にさせてくれる。よく考えればピアノ、ドラム、ベースの各パートが対等な立場でプレイしている点もそうした印象を与える要因かもしれない。ピアノがメインでリズム隊がサポートという図式はこのトリオには全くあてはまらないのである。この絶妙なバランスの良さも本作の完成度の高さを示す1つであろう。
 サイラス・チェスナット(p)、ジョージ・ムラーツ(b)、 ルイス・ナッシュ(ds)という超売れっ子アーティストで構成されるマンハッタン・トリニティはこれまで4枚のアルバムを発表してきた。前作以外の作品は「マンハッタン・トリニティ+1」というフォーマットを取ってきた。つまり、ピアノ・トリオにサックスが加わる形で発表されてきたのである。という訳で3人による純粋なトリオ・アルバムは前作『ラヴ・レターズ』に次いで2作目という事になるのであるが、今作の方がより"ピアノ・トリオらしさ"が強まり完成度がアップしているような印象を受けた(そもそも前作とその前の『ア・ラヴ・ストーリー』、そして今作と3作続けて「スウィングジャーナル」誌ゴールドディスク獲得という快挙!なのであるが…)。
 前にも少し触れたが、選曲がまた興味深いところ。「ALL OF ME」で始まり、クロージング・ナンバーが「TAKE THE A TRAIN」となるのだが、その間にも前述の「YOU ARE MY SUNSHINE」や「THROUGH THE FIRE」など他にも有名な曲を中心に収録されており、普段あまりジャズを聴かない方でも十分に楽しめる内容になっている。聴きやすいだけでなく、サイラス・チェスナットのピアノはもちろん、ジョージ・ムラーツとルイス・ナッシュのリズム隊も随所に素晴らしいプレイを織りまぜ、通も唸らせる作品に。
 寒い冬の夜、部屋の明かりを少し暗くして、少し明るいジャズを聴きながらお酒を…なんていかが?

Text by 堀尾康弘(東越谷店)

『ミスティ』
マンハッタン・トリニティ-J.jpg




CD
M&Iカンパニー
MYCJ-30175
¥2,667(税抜)
発売中

今作を含め3作連続「スウィングジャーナル」誌ゴールドディスク獲得の快挙。「ALL OF ME」や「MISTY」「TAKE THE A TRAIN」などお馴染みの曲を中心に全10曲を収録。ピアノ・トリオならではのインター・プレイの緊迫感が十分に味わえる。


inserted by FC2 system