大黒摩季

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大黒摩季

デビュー10周年を飾る待望のニュー・アルバム『PRESENTs』が遂に完成!
アーティスト・大黒摩季の持つ「凛とした強い女」というイメージを、
華麗に裏切ってくれる最高のラヴ・ソング集だ。

(初出『Groovin'』2002年12月25日号)

大黒摩季-A.jpg 大黒摩季には「強い女」を思わせるオーラがある。「姐さんッ」とつい呼びたくなるような、凛としたイメージを彼女に抱いている人もきっと多いはずだ。それは、とてつもなくハリのある卓越した歌唱力や、全霊で歌い上げるヴォーカル・スタイル、或いはどこか逞しさを感じさせる歌詞などによってもたらされるものだと思う。それより何より、彼女は同性の目から見ても、ルックス、生き方共にとにかくカッコイイ。そんな彼女を表現するのにピッタリの言葉がある。「ハンサムな女性」、コレだ。
 しかしながら、待望の新作『PRESENTs』は、彼女の持つそうした「強い女」的イメージを、華麗に裏切ってくれる素敵なアルバムに仕上がっているのである。本作は、今年デビュー10周年を迎えた彼女にとって初の試みとなる、珠玉のラヴ・ソング集だ。全作詞・作曲はもちろん自身の手によるもので、さまざまな恋のエピソードから生まれた12編のラヴ・ストーリーが収録されている。その全てに彼女の恋愛経験が反映されているというわけではないのだけれど、「アーティスト・大黒摩季独特の感性」というフィルター越しに描かれていく恋のシーンの数々は、まぎれもなく彼女自身の恋愛観をも雄弁に物語っているのである。
 恋とは、ふんわりとあたたかく、そして甘酸っぱいもの。プロデューサーを務めた武部聡志氏の「懐かしく暖かい音作りを目指した」という言葉通り、本作は程よく肩の力の抜けた自然な雰囲気に満ちている。普通、アルバムの1曲目といえば余分な力が見え隠れしたりするものだけれど、本作における1曲目「真夜中のホイッスル」は気負いのないラフなギター・サウンドが要。このイージーな感じがたまらなく良いのだ。かと思えば、2曲目「『愛してる』のかわりに」ではジャジーかつグルーヴィーな大人のサウンドをたっぷりと聴かせてくれたし、3曲目「TRUE LOVE」は自身の演奏する美しいピアノの音色と共に壮大に展開していくミディアム・バラード仕様。そう、本作には、ナチュラルにしてヴァリエーション豊かなサウンドが溢れているのである。ウルフルケイスケ、坂崎幸之助、佐藤タイジといった玄人はだしのミュージシャン達が参加しているのも見逃せないポイントだ。
 その中にあって、文句ナシのクオリティーを誇る彼女のヴォーカルは、言うまでもなく絶品中の絶品!聴く者をあっという間に歌詞の世界へと引き込んでいくパワーは健在、いや更に強力になっていると言ってもいい。昔の恋人との再会のシーンを静かに囁くように歌う「海でも行こうか」、互いに大切な人がいるのに会わずにはいられないねじれた関係、それを自嘲気味に自問する女の心情を描いた「キイチゴ」、遠距離恋愛中の女の子の不安な気持ちを切々と歌う「3-Call & 1-Mail」等々、12通りの恋のエピソードを見事に歌い切っているのである。
 恋に身を委ね、思い悩み、揺れ動く心。それに翻弄される人達。そこには、「強い女」はひとりもいない。「強い男」だってひとりもいない。大好きな人の前で最後まで強気でいられる人間なんて、どこにもいやしないのだ…そんな、心に染み入るラヴ・ソングをたっぷりと聴かせてくれる本作は、「強い女」のオーラを放つ大黒摩季の新たな側面に触れられるという点でも、非常に意味のあるアルバムだと思う。普段は至極強そうな女がふと見せた、脆い一面。それこそが、恋する女性の最大の魅力であるということを、本作は暗に物語っているのかもしれない。

Text by 秋野 櫻

『PRESENTs』
大黒摩季-J.jpg




CD
東芝EMI
TOCT-24903
¥2,913(税抜)
発売中

今年デビュー10周年を迎えた大黒摩季が、自身初の試みであるラヴ・ソング集をリリース!さまざまな恋のエピソードから生まれた12編のラヴ・ストーリーは、全曲本人が作詞・作曲を手掛けたもの。彼女の新たな魅力に溢れた素敵な、そして最高のアルバムだ。きっと、あなたの恋のかたちもここにあるはず…。

【大黒摩季 公式サイト】http://www.m-drive.net/

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