Kiroro

ARTIST PICK UP

Kiroro

さりげないけど、飽きることのない、いつの時代にも変わらない普遍の音楽。
目まぐるしく移り変わる現在の音楽シーンにおいて、
数少ないそういう音を届けてくれる彼女達からニュー・アルバムが届きました。

(初出『Groovin'』2002年12月25日号)

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 1年半前、ヴォーカルの玉城千春は喉の病気に突如襲われた。歌えないどころか一時は声を出せない状態にまでなり、Kiroroは活動を休止。当たり前だったことが当たり前に出来ない。重い病気を患った事がある人ならわかるだろうが、その当たり前の事が出来る事がどんなに幸せなことなのかが身に染みる。それが彼女達にとっては歌うことであり、音を届けることだった。
 このアルバムはその時期を乗り越え完成した1枚。「このアルバムを手にしたみんなに私達のHappyが伝わって、みんなもHappyになりますように…」そんな想いを込めて、タイトルは幸せの象徴「Four leaves Clover(=四つ葉のクローバー)」と名付けられている。ここに収録された11曲には奇をてらったようなモノは全くなく、Kiroroらしい優しさに溢れたアルバムに仕上がっている。伸びやかでまっすぐ澄んだ千春のヴォーカルは水を得た魚のように、活動停止以前よりさらに生き生きしてるようにも感じる。早速1曲1曲を見ていこう。
 1曲目「星砂」はKiroroらしいポップス。さらっとした爽やかな曲調で心地よさを覚えるナンバー。軽快に曲を彩るサックスがいい感じ。アルバムの先行シングル「ひとつぶの涙」は冬にぴったりの極上のピアノ・バラード。Bメロの高揚感にグッときます。「A song of love」では、バラード的イントロから一転、1曲目同様のポップ・ナンバーに。こちらも爽やか。復活第1弾シングル「愛さない」はKiroroが時折見せる大人っぽい楽曲で、金城綾乃の曲が初めてシングルになった記念すべき1曲でもある。シングル「愛さない」のC/W曲「君の声」は、声の病気から、前を向く強さを歌うポジティヴな曲。この「君」とは、同じ喉の病気を克服した友達を指している。「チョコレート」は、ブラスが鳴り響く、アルバム一番の盛り上がり部分。「くもりのち晴れ」は、パーカッションをバックにした軽やかなアコースティック・ナンバー。詩は「君の声」同様のテーマで結構重かったり。だけど晴れになったからこそ歌える曲。「秋風」は、サビにいくにつれ切なさが増していく、どっぷり悲しい曲。Aメロを千春、B、Cメロを綾乃が、それぞれ分担して制作している。「落書き」は、1stアルバムの頃を思い起こさせる、懐かしさ溢れる詩世界をKiroroポップスに乗せて。「Best Friend」はNHKドラマ「ちゅらさん」の主題歌となり、幅広い層に長く支持された曲。今回はAlbum versionとして2人の歌とピアノだけというシンプルかつ王道の編成での収録。当然、歌がより際立っている印象を受ける。最後を飾る「約束」は、「くもりのち晴れ」と同様の曲調に、千春の語学留学が糧になった中国語をコーラスで取り入れ、かつそのコーラスに親戚友達一同が参加した、楽しく、開放感あるナンバー。と、こんな全11曲である。
 本当に落ちるところまで落ちて、弱さを味わった人間にしかわからないことがある。今回の事でそれをKiroroは味わい、吸収した。どうして自分たちが歌い始めたのか?その原点を思い出した彼女達。これからもKiroroがKiroroたる魅力を放った曲を届け続けてくれるのは間違いないようだ。このアルバムがちょうどそうであるように。

Text by 麦山幸男 (木更津桜町店)

『Four Leaves Clover』
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CD
ビクターエンタテインメント
VICL-61050
¥2,900(税抜)
発売中

喉の病気による活動休止から復活したKiroroのニュー・アルバム。「愛さない」「ひとつぶの涙」そしてNHKドラマ「ちゅらさん」の主題歌「Best Friend」までをも含む全11曲。優しさに満ちたKiroroワールドをこの冬は暖かい部屋でじっくり聴いて下さい。初回のみデジパック仕様&Kiroroからのビデオレターが当たる応募はがき付。

【kiroro official web site】http://www.victormusicarts.jp/kiroro/top.php

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