椎名林檎

SPECIAL SELECTION

椎名林檎

これは事件だ!!"椎名林檎"という名の新ジャンルがついに確立した。
椎名林檎の最高傑作なだけでなく、今後のJ-POPシーンに大きな影響を与える
新たな金字塔、それがこの『カルキ』。

(初出『Groovin'』2003年2月25日号)

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 『加爾基 精液 栗ノ花(カルキ ザーメン クリノハナ)』というタイトルを聞いて正直引いてしまった人ってけっこう多いんじゃないかなぁ?実際、僕もちょっと引いちゃったし…。椎名林檎もいくとこまでいってしまったかと。そんなことを考えているうちにアルバムのコンセプトを凝縮したシングル『茎(STEM)〜大名遊ビ編〜』とアルバムの世界観を映像化した短篇キネマDVD『百色眼鏡』がリリースされた。怖いもの見たさ的にシングルを聴いてみると、予想していたものとはまったくかけ離れたものだった。むしろ、これまでの椎名林檎とは何か違うものを感じた。そして、短篇キネマ。オープニングから一気に映像の世界に引き込まれどっぷりとハマっていった。気が付くと僕は、椎名林檎の世界にハマり、当初抱いていたアルバムに対するイメージは払拭され、大きな期待へと変わっていった。
 そして、届けられた3rdアルバムとなる本作。1曲目の「宗教」から、ぐっとアルバムの世界に引き込まれ、最後までさらっと聴けてしまう。かといって、収録曲が印象に残らないほど弱い楽曲ではない。どの曲もシングルとしてリリースしても申し分ないほど「個」としての力を持っている。先行シングルに収録され、アルバムの世界観を凝縮したような「茎(STEM)」「迷彩」「意識」という3曲を聴いてもわかるように、これらはヴァージョンは違うが、まずアルバムありきで選ばれた楽曲であり、3曲が1つの世界観で括れ、かつ個としても充分立っている。ヴァージョン違いの話でいうと、3曲とも基本的に同じアレンジなのだが、よりバンドっぽい仕上がりになっている。「茎」は、元々の(アルバム)ヴァージョンでの収録。また、短篇キネマのエンドロールで流れていたバラード「おだいじに」は個人的にオススメ。
 短篇キネマを先に見ているせいか、サウンドトラック的な印象を強く受けるこのアルバムは、明らかにこれまでの椎名林檎とは違う。椎名林檎というとエキセントリックでイキかけたイメージが僕の中にはある。それこそアルバム・タイトルのようなネーミング・センスの世界や、巻き舌のヴォーカルや尖ったロック・サウンドなど。しかし、本作はたしかにこれまでのイメージを踏襲しているものの、ある種のまろやかさがプラスされている。これこそが"独特"から、"確立"への変化ではないだろうか。言い換えればオリジナリティあるサウンドの椎名林檎から、椎名林檎という"ジャンル"になったということ。1st、2ndアルバムでは、2番煎じ3番煎じなアーティストを生み出すほどの世界観を持った強烈なサウンドを作り、ミュージック・シーンに大きな影響を与えてきた。今思えば、それらは本作に至るまでの布石程度のものでしかなかったと感じられる。なぜなら、本作は椎名林檎が自身のの世界観を徹底的に拘り貫いた完成度の高い作品であるだけでなく、J-POPというこれまでにあった概念を打ち破った作品だからだ。そして、椎名林檎にしか作ることの出来ない唯一無二のジャンルを確立するに至った作品。本作こそ"金字塔"と呼ぶに相応しい内容である。大袈裟な言い方かもしれないが、本作は今後のJ-POPシーンにこれまで以上の大きな影響を与えるアルバムであることは間違いない。本作をより一層楽しむためにシングル『茎(STEM)』、短篇キネマDVD『百色眼鏡』をまだ聴いていない人、見ていない人にぜひオススメしたい。この3つのアイテムがすべて揃ってこそ、本作の深いまろやかさが存分に堪能できるはず…。

Text by 常盤安信(横須賀佐原店)

『加爾基 精液 栗ノ花』
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CD
東芝EMI
TOCT-24942
発売中
¥2,913(税抜)

およそ3年ぶりとなる3枚目のオリジナル・アルバム。これまでの尖ったバンド・サウンド的アプローチから一転、自身のイメージを忠実に再現するアプローチにより"椎名林檎"というジャンルをついに確立。まるでサウンドトラックのような印象を受ける椎名林檎の最高傑作。初回生産分のみ「林檎クン眉唾ステッカー」封入。

【椎名林檎 SR 猫柳本線】http://www.kronekodow.com/

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