MY BEST CHOICE!

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第36回 
松本真一(すみや大船笠間店 店長)

(初出『Groovin'』2003年2月25日号)

 音楽でも映画でも衝撃的な作品に出会ったとき、なぜか笑ってしまうことがあります。なにか、感動を超えた、強烈な高揚感の発露なのでしょうが、それがどういう訳か「笑」という感情表現になるんです。あまりに理解を超えてしまっているので、もう笑うしかない、となってしまう事もあります。僕の場合、おそらくあらゆる感情の頂点は「笑」なんだろう、と勝手に思ったりもしています。そんな「ある種の爆笑CD」って考えたとき、思い浮かぶのが今回のジェームス・ブラウン(以下JB)なのです(本当は「Yeah!めっちゃホリディ」を取り上げたいのですが、関係各位的にナニですので、そちらは次の機会に譲るとします)。
 このアルバムを知ったのはまだ学生の頃。友達にスゴイアルバムがある、と言われて聴いてみたのがきっかけです。当時の僕はザ・スミスやエコー・アンド・ザ・バニーメンなどニュー・ウェイヴ(っぽいモノ)を聴いていたので、いわゆるブラック・ミュージックとは縁のない生活でした。ですから最初の印象は「なんじゃ、こりゃクドい!」ってなものでした。しかし次の瞬間、もりもり歌いまくって、ベースがブヒブヒいっている強烈なそれにすっかり圧倒されてしまいました。今考えるとJBをきっかけにスライ・ストーンやPファンクとかに興味を持つようになっていったので、このアルバムとの出会いにはそういう意味でもとても感謝をしています。
 「ライヴ・イン・パリ'71」はその名の通り、1971年3月8日、パリのオリンピア劇場で行われたライヴ・テイクです。Pファンクの巨匠、ブーツィー・コリンズも参加していたJB'S全盛期(と言われてる時期)のものだけにとにかくテンションが異常なのです。「8時ダヨ!全員集合」でも始まるのかと思うような仰々しいイントロからスタートし、M.C.のボビー・バードの「じぇーむすぶらぁ〜ん」のコールがされると、あとはとにかくイキまくりオンパレード大会。とくに、名曲「パパのニュー・バッグ」を含むメドレーは、オリジナルの10倍速くらいなんじゃないか、と思うほどの高速ファンクで圧巻です。もちろん「トライ・ミー」や「セックス・マシーン」などおなじみのナンバーも、緊迫感あふれる演奏で楽しませてくれます。
 JBは他にも「ライヴ・アット・ジ・アポロ」や「トーキョー・ライヴ」などライヴ・アルバムを出していますが、やはり「パリ'71」には全く及びません。数年前、横浜でのJBライヴに行ったときも、すっかりJBはおじいちゃんになっていて、その場でほとんど動かずに歌っている、という具合でした(その代わり、変なチア・ガールっぽいお姉ちゃんは飛び跳ねまくってましたけど)。"盛者必衰"とでもいうのでしょうか?やはり「この時に生で観たかったなあ」と思ってしまいます。まあ、僕'71年生まれですからね。そりゃ無理か(笑)。


*なお次回は、岡本太祐氏(すみや久喜店 店長)が登場します。お楽しみに。

ジェームス・ブラウン
『ライヴ・イン・パリ'71』
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CD
ポリドール
POCP-1268
¥2,136(税抜)
発売中

ファンクの帝王、JBの1971年3月8日のパリ/オリンピア劇場で行われたライヴ・レコーディング。当時の黒人差別問題も手伝ってのブラック・ミュージックの盛り上がりか、またベトナム戦争、ヒッピー・ムーヴメント、力石徹の死去(?)などの閉塞した社会的背景がそうさせるのか、異常なテンションのまま、疾走する17曲。オリジナルJB'S唯一のライヴ盤でもある。

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