YUKI

ベイビー誕生までもうすぐ！愛に溢れ、充実した毎日を送る
今のYUKIだからこそ作ることができた2ndアルバム『commune』は、
春のぽかぽかした陽気みたいにあなたの心をハッピーにしてくれること間違いなし。

（初出『Groovin'』2003年3月25日号）

　最近のYUKIは非常に活動的だ。昨年1stアルバム『PRISMIC』を発表した後、お腹に新しい命を宿しながらラジオ、雑誌、アート・ユニット"Sleep"と精力的な活動をこなしつつ、2003年第1弾シングル「センチメンタルジャーニー」を発表。この曲を聴きながら「あぁYUKI、素敵な曲をありがとう。でもしばらくはお別れなのかな…」などと感傷に浸っていた矢先、シングル『ハミングバード』のリリースが。さらに3月26日には何と2ndアルバム『commune』を発表するという強者ぶりを発揮。あの小さな体のどこにそんなパワーが潜んでいるのだろうかと驚いているのは多分私だけではないだろう。
　そんなパワフル・ウーマン、YUKIのニュー・アルバム『commune』は、いつまでも末永く聴いてもらえるような楽曲を作ることを目標に、「SLOW」というテーマのもと制作されたのだそう。アルバム全体を包む緩やかな雰囲気からは、最近の雑誌のインタビューなどでYUKIがよく語っている「健康でないといい曲は書けない」という言葉通り、愛に包まれ充実した毎日を過ごす彼女の健やかな精神状態が透けて見え、今まで以上の落ち着きと力強さが感じられる。またゲスト・ミュージシャンは、デビュー・シングル「the end of shite」でもグッド・パートナーぶりを発揮した日暮愛葉（Seagull Screaming Kiss Her Kiss Her）、スネオヘアー、沖祐市&NARGO（東京スカパラダイスオーケストラ）、堀江博久（ニール&イライザ）、恒岡章（Hi Standard）と、音楽好きにはたまらない面子揃い。YUKI&日暮コンビが放つ「泣きそうだ」は「the end of shite」を思わせるガレージ・ロック風ノリノリの曲。「YUKI節炸裂！この曲だけでアルバム『commune』は買いでしょう！」と周りに言いふらしたくなるほど個人的にお気に入りだ。アルバム先行シングルとして発売された「ハミングバード」は、シンガー・ソングライターのCaravanが歌っていたものの詞にYUKIがアレンジを加え完成したもの。恋する誰の心にも存在するほろ苦く切ない思いが、YUKIのイノセントな歌声と、アコースティック・ギターから壮大なストリングス・アレンジへと変化するサウンドによって見事に表現された泣きの1曲。導入部のエキゾチックなサウンドが妙にハマッた「ファンキーフルーツ」は、トリンプ「恋するブラ」のCMでもおなじみ、YUKIのキュートさ全開の曲だ。
　充実した日々を送っている今のYUKIだからこそ創ることの出来た、キラキラした魅力いっぱいのニュー・アルバム『commune』。このアルバムがリリースされる頃には出産までカウントダウン状態の彼女。生まれてくるベイビーが大きくなって「ママ、"コミューン"ってアルバム、カッコいいよね！」などと言われ、にっこり微笑む彼女の姿が今から目に見えるようで、そんなことを想像する私もついニヤニヤしてしまうような、あたたかなハッピーがつまったアルバムなのである。

Text by 大野裕子（函南店）