山崎まさよし

ARTIST PUCK UP

山崎まさよし

長い共同作業のシーズンを経て、
山崎まさよしが再び"1人"という原点に戻ってきた。
久々のマキシ・シングルは、美しすぎるメロディが印象的な「孤高のラヴ・ソング」。

(初出『Groovin'』2003年3月25日号)

山崎まさよし-A.jpg "1人"が似合うアーティストが好きである。"孤独"ではない。あくまでも"1人"である。ここで言う"孤独"とは、1人が嫌でたまらないこと、"1人"とは逆に1人でいることを受け入れることだ。1人でいることの自信、1人でいることへの固執を漂わせている人に、なぜか昔から強烈に興味を覚える。今のJ-POPSシーンで挙げれば奥田民生とか草野マサムネとか。別に彼らはいつも1人でいるわけではないと思うが、作品とか佇まいとかに、1人でいても全然オッケーな強さを感じる。それは鈍感とは全く違う、逆に繊細であるが故の深さが孤高の域に達したというか。
 僕の中では山崎まさよしもそんなアーティストの1人だ。ギターの引き語りという表現方法も含め、音楽そのものにも圧倒的な「1人感」を感じる。彼の曲を初めて聴いたのは「セロリ」だったと思うが、その歌詞の「もともとどこ吹く他人だから」というフレーズからも、「所詮人間は1人」という現実を冷静に受け止めている強さを感じた。例えば今回の資料にこんな彼の発言がある。「もともと1人で(音楽を)やってたのに、人がどんどん寄ってきてくれたからね。で、そっから人が減ったり、増えたりすることもいくらでもあるだろうし。なんかこう、依存していったらあんまりカッコイイものにはならないと思う」…この自信たるや、相当カッコイイ。
 そんな彼の今年のコンセプトは「1人でやること」だそうだ。約2年前のアルバム『transition』はニューヨークの友人達との共同作業で制作し、その後全国89公演を廻ったツアーはトリオと言えどもバンド・スタイルだったから、長い共同作業の末にまた原点である"1人"に戻ってきたというわけだ。戻らざるを得なかったのかも知れない。そのことだけを見れば、単純に音楽を他人と一緒に表現することから1人で表現することへ移行しただけのことだが、このコンセプトにはもっと精神的な意味合いも含まれていると思う。そう思ったのは、3/19に発売されたばかりのニュー・マキシ・シングル「全部、君だった。」を聴いてからだ。
 2人から1人に戻った時の心境を歌った切ないラヴ・ソング。音楽を聴いても相手への気持ちの代弁にしか聴こえず、散歩しても木々から漏れる光の眩しさに恋人の笑顔を重ね合わせるといった、恋愛している時の輝きに世界の全てが包まれている状態から、急に1人になったと気付いた瞬間の感情を、美しすぎるメロディとシンプルなアコースティック・サウンドで綴っていく。しかし歌の後半「やがて雨音は途切れはじめて 街がにわかに動きはじめる 雲がゆっくり滑りはじめて 部屋は明るさを取り戻してく」という歌詞からは、以前のように1人の世界に戻り一回り成長した主人公の強さを感じるのだ。そこに「失恋ソング」の女々しさはさして感じられず、気高ささえ漂わせる「孤高のラヴ・ソング」となっている。
 最近は人と接してないと不安で仕方ない人が多いと言う。山崎まさよしの音楽はそういう人にももちろん共感できると思うが、1人の時間を怖がらず自分を深めている人にぜひ聴いてもらいたいと思うのだ。

Text by 高瀬康一(編集部)

『全部、君だった。』
山崎まさよし-J 初回盤.jpg 山崎まさよし-J 通常盤.jpg




Maxi Single
ユニバーサル J
[初回盤]DVD付 UPCH-9054 ¥1,500(税抜)
[通常盤]UPCH-5170 ¥1,200(税抜)
発売中

タイトル曲は美しすぎるメロディが印象的な孤高のラヴ・ソング。C/Wはインスト曲「mud skiffle track X」と、MITSUBISHI MOTORS "COLT"CMイメージ・ソングの「OVER THE RAINBOW」。初回限定盤は幻のライヴ・パフォーマンス映像等を収録したスペシャルDVD付き。

※写真は左が[初回盤]、右が[通常盤]のジャケットです。

【山崎まさよし OFFICIAL WEB SITE】http://www.office-augusta.com/yama/

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