白鳥マイカ

ARTIST PICK UP

白鳥マイカ

その歌声には、いらないものにまみれた心を綺麗に洗い流してくれる作用がある…。
シンガー・ソングライター:白鳥マイカの4thマキシ・シングル「Someday」は、
素朴でナチュラルな魅力に溢れた珠玉作だ。

(初出『Groovin'』2003年4月25日号)

白鳥マイカ-A.jpg

 「シンプルな生活」というものに憧れている。自分にとって物質的にも精神的にもほんとうに必要で大切なものは何なのか、そのことをきっちりと認識した上で生きていく毎日。ごまかしや嘘のない、穏やかな生活。そうした日々を送りたいと思うことは、裏を返せば、いまの生活がそれとはおよそかけ離れている証でもある。イエスかノーか答を出せずにぐらぐらしている毎日。人目を気にするあまり自分をごまかし続ける生活。
 かつて白鳥マイカの歌を初めて聴いたとき、そんな風に余計なもので縛られていた心の緊張がふっと弛むのを感じた。クセとかアクとかいったものとはおよそ無縁の、ごくごくナチュラルな質感を持った声。それが細かな粒子となってまるでシャワーのように優しく降りそそぎ、いらないものにまみれた心を綺麗に洗い流してくれたような気がした。だからなのだろう、テレビのCMを通してほんの数秒聴いただけなのに、その歌声と名前は、それ以来忘れられないものになっていたのである。
 実は、そのCMソングというのが本作のリード曲「Someday」。ちなみに楽曲が起用されているのはAEONセレブレイトスーツ+カジュアルのテレビCM。さわりを聴いただけで「あ、あの!」と思いあたる人もきっと多いのでは?
 2001年11月のデビュー以降着実にファンを獲得してきたシンガー・ソングライター、白鳥マイカにとって、通算4枚目のマキシ・シングルとなる本作は、マキシらしからぬ何とも豪華な内容。先の「Someday」をはじめ、キャノンPIXUS950i(プリンター)のCMに起用されている「My House」、自身のデビュー曲にして現在公開中の映画「ラヴァーズ・キス」の挿入歌でもある「Shelter」、同じく2ndシングルにして同映画のエンディング・テーマ曲でもある「Red Clover」の全4曲を一挙に収録。更に「Shelter」のビデオ・クリップまでも加えたCD-EXTRA仕様特別盤なのである。
 アコギの爽やかなストローク&つま弾きからはじまるリード曲「Someday」は、素朴でナチュラルなナンバー。これ以上足し引きする余地のない最良のバランスを備えた、シンプルなサウンド。ポップで、でもどこか落ち着いたメロディー。それらとひとつに溶け合うソフトな歌声は、なめらかなシルクというよりはむしろ洗いざらしのコットンを思わせる。そう、白鳥マイカは、その何もかもがあくまで自然体なのだ。
 英語で綴られた歌詞だってそう。新しい何かを見つけながら自分の道を歩いていこうとする気持ちを、ポジティヴにでもネガティヴにでもなく、ほんとうにあるがままに歌い描いていく。どこか寂しそうでいて、しかし静かな強さを湛えた声のトーンも、肩肘を張っている感じがまったくしない。そして、他の3曲にも一貫して感じられるその自然な空気は、聴き込むほどに心が洗われるような、ある種の浄化作用みたいなものを備えているのである。
 ほんとうに大切なものは見えにくい。派手に宣伝されているものにどうしても目がいってしまう。そんな日々を送っているわたしたちの心に、本作は、心地よい風穴をそっとあけてくれるはず。きっと白鳥マイカは、自分にとってほんとうに必要で大切なものが何なのか、きちんとわかっているアーティストに違いない。

Text by 秋野 櫻

『Someday』
白鳥マイカ-J.jpg




Maxi Single
ポニーキャニオン
PCCA-80019
5月21日発売
¥1,200(税抜)

ナチュラルな質感溢れる白鳥マイカの4thマキシ・シングル。AEONセレブレイトスーツ+カジュアルのCMソング「Someday」、キャノンPIXUSのCMソング「My House」他、映画「ラヴァーズ・キス」に起用されている既発2曲の全4曲を収録。更に「Shelter」のビデオ・クリップも加えたCD-EXTRA仕様特別盤だ。

【白鳥マイカ OFFICIAL WEB SITE】http://www.maikashiratori.net/

inserted by FC2 system