大江戸Love Songs〜三味線音曲の世界〜

Fun! Fun! Fun! File 大江戸Love Songs〜三味線音曲の世界〜

これは恋と時間をじっくりと楽しんだ昔の人々が残してくれた宝です。
江戸の音色と言葉で彩られた、粋で好色なラヴ・ソング集。

(初出『Groovin'』2003年4月25日)

『大江戸Love Songs〜三味線音曲の世界〜』収録内容

<Part1 大江戸 Hit Songs〜四季の恋歌>
01.都々逸 江戸の名残りの
02.端唄 木遣りくずし
03.端唄 初春(さわぎ入り)
04.端唄 梅は咲いたか
05.端唄 春雨
06.小唄 夜桜
07.端唄 潮来出島
08.小唄 夕立や(さっと吹きくる)
09.端唄 夕暮れ(「船に船頭」入り)
10.端唄 縁かいな
11.都々逸 忍び足して〜切れた男から木々の梢に
12.端唄 びんのほつれ
13.小唄 初雪に
14.都々逸 三千世界から九尺二間
15.新内流し
<Part2 大江戸Trendy Drama〜芝居の賑わい>
16.河東節「助六」より
17.常磐津節「関の扉」より
18.清元節「北州」より
19.新内節「蘭蝶」より
20.長唄「越後獅子」より
<Part3 大江戸Entertainment〜浮世の憂さ晴らし>
21.「たぬき」より
22.東雲節
23.さのさ
24.奴さん
25.かっぽれ
26.お江戸日本橋

 徳川家康が江戸幕府を開いたのが1603年、今年は江戸開府400年にあたるアニヴァーサリー・イヤーです。そして、この機会に江戸文化を見直そうという動きの中で制作されたのが、このコンピレーション・アルバム『大江戸Love Song』なのです。三味線に乗せて歌われる端唄や小唄など、江戸情緒あふれる名曲の数々を3部構成で聴かせる今作。Part1には四季折々の恋唄、Part2には江戸を代表する劇場音楽、Part3には宴会や寄席に付き物の音曲が集められています。当時流行歌として全国に波及していった楽曲(現代で言うシングル・ヒット?)も多く、実は「江戸's ヒッツ」ともいえる強力コンピ盤なのです。
 伴奏は三味線と鳴り物、ゆったりとしたメロディ(というのも少し違和感がありますが)、江戸言葉の詞…若い人たちにはもしかしたら少し取っつきにくい印象があるかもしれません。それでは、ラヴ・ソングという側面から入ってみるのはどうでしょう?時代劇の影響か、封建的なイメージがある江戸時代の恋ですが、文献を紐解いてみると、そこには私たちが驚くような恋愛事情があります。例えば遊郭での一夜限りの恋。今は淫らなものという認識ですが、この時代はそれが粋とされ、言葉やファッションなど、様々な流行がここから発信されていたとか。事実、遊郭から発生した流行歌も多かったそうです。そんな背景を探りながら、当時囁かれていた愛の言葉を味わうのも一興ではないでしょうか。
 巷に溢れるダンサブルなビートやクールなグル−ヴはここには無いかもしれません。しかしこの作品には、今という時をゆっくりと、じっくりと楽しむための空気が封じ込められています。その空気に包まれながら、雅やかな気持ちと粋を重んじる当時の人々の暮らしぶりを想像してください。きっと現代の私たちが忘れてしまった"心のゆとり"こそが、江戸の粋なのだと気付いてもらえるはずです。

Text by 鮎川夕子

『大江戸Love Songs〜三味線音曲の世界〜』
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CD
ビクターエンタテインメント
VCG-60540
発売中
¥2,400(税抜)

江戸開府400年を記念して制作された三味線音曲のコンピレーション。端唄や小唄など、江戸情緒あふれる名曲の数々を3部構成で聴かせてくれます。おじいちゃん、おばあちゃんへのプレゼントや外国人へのおみやげにも最適の1枚ではないでしょうか。

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