稲葉浩志

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稲葉浩志

とどまるところを知らない飽くなきクリエイティヴィティー!稲葉浩志のイニシャル
を冠するソロ・マキシ・シングル『K I』(ケーアイ)は、奔放にして自在、そして鮮やか
な「個人技」が余すことなく詰め込まれた力作だ。

(初出『Groovin'』2003年5月25日号)

稲葉浩志-A.jpg 2003年第1弾シングル『IT'S SHOWTIME ! !』でシングル・チャート初登場1位を獲得、ならびに既発8cmCDシングル10枚のマキシ化によって、この春、B'zは各チャートの上位をほぼ独占するという偉業を成し遂げた。その興奮も冷めやらぬうちに、B'zのヴォーカリスト・稲葉浩志の2ndマキシ・シングル『K I』(ケーアイ)が完成。無限のヴァイタリティーに支えられた飽くなきクリエイティヴィティー。ソロとはいえ、まさに畳みかけるような攻撃、いやリリースである。
 昨年のアルバム『志庵』以来約8ヶ月振りのソロ作品にして、98年の『遠くまで』以来約4年半振りのソロ・シングルとなる本作は、シングルでありながらミニ・アルバム的な色合いの強い1枚に仕上がっている。というのも、新曲3曲にREMIX2曲をプラスした全5曲というヴォリュームもさることながら、シングルにつきものの、いわゆるタイトル曲が本作には存在しないからだ。つまり「K I」とは、さながらアルバム・タイトルのごとく、あくまで本作全体を指しているのである。言うまでもなく「K I」は稲葉浩志のイニシャル。収録曲はいわば彼自身を構成する5つの異なる要素のピースであり、よってそれらの集合体である「K I」は、稲葉浩志というひとりのアーティストの「今」を雄弁に物語る完成型なのである。
 では、5つのピースをひとつひとつ見てみよう。オープニングを飾るのは本作の要的位置を占める「AKATSUKI」。日本テレビ系「K-1 JAPAN」のイメージソングとして今年1月よりオンエアされ、CD化が待ち望まれていた話題作だ。重量級のロック・サウンドが炸裂するこの曲、心に残るサビのラインが絶妙で、メロディー・メイカーとしての彼の才覚に今更ながらに感嘆させられることしきり。加えて、ヘヴィネスの追求のみに終始していないのも心憎いところ。ギターのアルペジオではじまるイントロ、そこへ突然切り込むディストーション・サウンド、ラテン・フレーズを利かせたアコギの旋律、その直後にいきなり唸りをあげるギター・ソロ。そうした巧みな「静」と「動」のせめぎ合いは、極限まで突き詰めるように歌い抜く稲葉のヴォーカルと相まって、厳しい状況に置かれた魂の激情をリアルに浮き彫りにしていくのである。
 続く2曲目「静かな雨」は、アンニュイな雰囲気のミディアム・ナンバー。雨の中の渋滞で遭遇したほんの数分間の情景が、緩やかな独白を思わせるヴォーカルに乗せて、あたかも映画のワンシーンを観ているかのように描き出されていく。また、4曲目「I'm on fire」は、繊細なピアノの音色に彩られたラヴ・バラード。力強さを秘めた穏やかなヴォーカルが高揚感を生み、曲全体を包み込んでいく優しい曲だ。
 一方、REMIX2曲はいずれも先の「AKATSUKI」をアレンジしたもの。4つ打ちベースのノイジーなクラブ・チューン「Version S.S.S」、雄大な楽曲へと見事に姿を変えた「Version O」共に、その聴き応えは無論、充分過ぎるほどにある。
 稲葉浩志のイニシャルを象る5ピースの世界。ひとりのアーティストに立ち返った彼自身の、奔放にして自在、そして鮮やかな「個人技」が余すことなく詰め込まれた本作は、パーフェクトな1枚と言うにふさわしい力作だ。

Text by 秋野 櫻

『K I』
稲葉浩志-J.jpg




Maxi Single
VERMILLION RECORDS
BMCV-5002
6月11日発売
¥1,143(税抜)

ご存じ、B'zのヴォーカリスト・稲葉浩志の2ndソロ・マキシ・シングル。日本テレビ系「K-1 JAPAN」のイメージソング「AKATSUKI」を含む新曲3曲+REMIX2曲の全5曲を収録。重量級のロック・サウンド、アンニュイなミディアム・ナンバー等、シングルらしからぬヴォリュームとヴァリエーションを備えたパーフェクトな1枚だ!

【B'z Official Web Site】http://www.bz-vermillion.com/

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