星村麻衣

ARTIST PICK UP

星村麻衣

従来のピアノのイメージを180度変えた斬新なアプローチで、
ピアノの概念そのものを打ち破るアーティストが登場した。
その名は星村麻衣。生き物のように縦横無尽に奏でられるピアノを体感せよ!

(初出『Groovin'』2003年6月25日号)

星村麻衣-A.jpg ピアノという楽器に、貴方はどんなイメージを持っているだろうか?圧倒的に多いのは「静」のイメージだろう。ヒーリング・サウンドや、弾き語り系アーティストなど、よく耳にするピアノ音は「静」のエッセンスとして使われているのが一般的だ。 
 その一般的なイメージとは全く異なる立ち位置で音を奏でるアーティストが彼女、星村麻衣である。ピアノという楽器のポテンシャルを最大限に引き出しながら作るという斬新なアプローチによって作られる全ての楽曲の中では、ピアノはひとつの武器として、バラードのみならず、どんなタイプの楽曲にも際立つ存在として鳴り響く。そのピアノの存在感と、椅子を蹴り倒して立ち弾きながら唄うそのパフォーマンスは、「動」そのものなのである。
 そんな彼女に初めて会ったのは、デビュー曲「Stay with you」だった。前向きなポップ・ソングの中で、縦横無尽に跳ねまくるピアノ。今の暗い世の中にあって、ハジケるばかりのピアノ、凛とした意志を持った歌声は必要以上に清く見えたりもして、自分が求めてたのはこれだ〜!とばかりに、数年に1回出るか出ないかのアーティスト登場に大喜びしたものだ。
 続いてリリースされた2枚目のシングル「Cherish」では、グッと大人の雰囲気の楽曲を披露、これまたピアノが絶妙に跳ね、ハジケまくっている。こういうミディアムな雰囲気のある曲でも、ガッチリ引き込ませる楽曲を作る彼女はもはや本物だ、とそう実感した。
 次のドラマ主題歌となった「GET HAPPY」では、大胆なまでのバンド・サウンドを導入。本来、ピアノとは無縁であるはずのガツンとしたロックという音の中でも、力強いタッチで弾かれるピアノが、楽曲をよりきらびやかで、力強く、疾走感のあるものに仕上げている。
 そしてこの1stアルバムである。ここに収録された12曲は「ピアノロック」と称され、その中には従来見せてきた王道、ポップ、スロー・バラード、ミディアム、そして初の弾き語りと様々なジャンルの曲があるが、中でも注目すべきは「Vacation」と「ふたり」の2曲である。「Vacation」の方は全編ポップで、間奏で聴かれるセッションが楽しいタイトル通りの曲。「ふたり」はサックスを取り入れたジャズとロックの融合と言うべき構成で、A、Bメロはジャズ的に、サビでポップ・ロックに変化する小洒落た曲。2曲に共通してるのは、聴きやすさ、楽しさ。それでいて彼女の個性であるピアノは、縦横無尽に生き物のように楽曲の中で元気に動き回る。本来こういう「わかりやすい」部分と、「個性的な」部分というのは水と油のようなもので交わる事がないのだが、これがこの2曲(や「GET HAPPY」)では絶妙に混ざり合って、片側にバランスを崩すことなく1楽曲として成り立っている。それはまさに前述した作曲方法のなせるワザであり、新たなピアノの可能性を存分に見せつけられた1枚だ。さらに「GET HAPPY」「Cherish」の南徹氏をはじめ「Stay With You」に西平彰氏、そして桜井秀俊氏(ex 真心ブラザーズ)といったプロデューサー陣に加え、本人プロデュースの曲も収録されている。
 ピアノという「素材」にこだわり、ジャンルという「具材」もたっぷりの、星村麻衣風味いっぱいの『SOÚP』、冷めないうちに召し上がれ。

Text by 麦山幸男(木更津桜町店)

『SOÚP』
星村麻衣-J.jpg




CD
Sony Music Associated Records
AICL-1437
7月9日発売
¥2,913(税抜)

ドラマ主題歌「GET HAPPY」で注目を集めたピアノガール星村麻衣の1stアルバム。ピアノロック、ポップ、ミディアム、バラード、弾き語りと多彩なサウンド全てにピアノが鳴り響く、個性をギンギンに放つ1枚。ピアノ好き、個性的女性ソロ好きは買い!

【星村麻衣 公式サイト】http://www.hoshimuramai.net/

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