中島みゆき

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中島みゆき

空前の大ヒット曲「地上の星」がロング・セラーを依然更新中の中島みゆき。
3年ぶりとなる待望の新曲は、
フジテレビ系ドラマ『Dr.コトー診療所』の主題歌。

(初出『Groovin'』2003年7月25日号)

中島みゆき-A.jpg 中島みゆきは、おとぎ話に出てくるような神秘的な力をもった魔女なんじゃないかと思う。といっても正直なんのことやらという話だろうが、僕にはそう思えてならない。僕が子供から大人へと、当り前だが確実に年を重ねていっているのに、中島みゆきは今でも、僕が中学生の時に(再放送だったかどうか定かではない)見たドラマ「金八先生」で、加藤優が警察に連行されていくシーンで流れていた、78年の「世情」を聴いて涙した、あの時に受けた印象とまったく変わらないままでいるのだ。
 75年のデビュー以来、70年代、80年代、90年代、2000年代と、それぞれの時代でチャート1位に輝いたことのあるアーティストは彼女だけだという。大雑把に言ってしまえば10年に1回はチャート1位の楽曲を作っていることになる。これは簡単なようでいて、ものすごく難しいことだ。それぞれの楽曲が、その時代時代に迎合しただけのヒット曲ではなく、ただひたすら「中島みゆきの作品である」ということが…。「地上の星」は6月16日付のオリコン・シングル・チャート(100位以内)で151週チャート・インで54位。23年ぶりに更新した歴代シングル・ロング・セラー記録を依然更新中。単純に「151週チャート・イン」と言うけれど、オリコンで1位をとっても4週でチャート外という曲が星のように現れては消える中、これは考えられないことなのだ。彼女を魔女だと思う僕の勝手な想像も、まんざらではないように思いません?
 きっと、この原稿が世に出る頃でもまだまだ記録を更新中であろうことと思うが、そんな中、通算38作目となるシングル「銀の龍の背に乗って」がリリースされた。本作は、現在放送中のフジテレビ系ドラマ「Dr.コトー診療所」の主題歌。この「Dr.コトー診療所」は、ヤングサンデー連載中の人気漫画で、離島医療に情熱をかける青年医師"コトー"を中心に、病気、命、家族といった普遍的なテーマを、濃密な人間関係と共に、自然との共存関係無しでは生きられない離島を舞台に描いたヒューマン・ストーリー。そして、この楽曲は、ドラマの内容を納得した上で、主題歌の依頼を受けて作られた曲だという。それゆえ、楽曲を聴くとドラマの主人公の離島医療への情熱が、そして心情がものすごく伝わってくる詞になっている。しかしそれだけではなく、この詞はもっと深く自分の弱さを自覚し、ただ嘆いているだけでなく、勇気をもって自分にも、そして自分を取り巻く環境にも戦っていこうという力強いメッセージなのだと思う。動かない現実を1mmでも動かすように努力する気持ち。そういうような、戦っていこうとする人たちへの讃歌である。カップリングは、力強いメッセージの「銀の龍の背に乗って」とは対照的な、女性の心を繊細に描いている「恋文」。"「アリガトウ」って意味が「これきり」っていう意味だと最後まで気がつかなかった"というフレーズは、純粋で無垢な恋心を表していてなんとも切なく、共感できる女性は多いのではないだろうか?
 「地上の星」とのダブル・チャート・イン等で話題になってしまうだろうが、本作はただ単純に、自分の現状についてフッと考えさせられ、そして勇気づけられ、様々なことに戦っていこうと思える曲。この作品が、2000年代の2曲目のチャート1位に輝くというのもあながち考えすぎではないだろう。中島みゆきという美しい魔女の魔法にかかって、今日もサビが頭の中でリフレインする…。

Text by 常盤安信(横須賀佐原店)

『銀の龍の背に乗って』
中島みゆき-J.jpg




Maxi Single
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
YCDW-00014
発売中
¥1,000(税抜)

3年ぶりとなる新曲は、フジテレビ系ドラマ「Dr.コトー診療所」の主題歌。命の尊さを見つめる強い意志、そして戦うことへの力強いメッセージを歌い上げている。中島みゆきの世界をより完璧に表現するべく、マイケル・トンプソンをはじめとしたL.A.の一流ミュージシャンが参加。

【中島みゆき OFFICIAL SITE】http://www.miyuki.jp/

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