OVER THE SKY〜Yuming International Cover Album〜

洋楽とユーミンの見事な融合「OVER THE SKY」。
本当に良いものは時を超えて多くの人に愛され伝わってゆく。
そんな道しるべになる素晴らしいアルバムがまた1枚生まれたような気がする。

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OVER THE SKY〜Yuming International Cover Album〜

(初出『Groovin'』2003年7月25日)

 今から30年以上前にJR(旧国鉄)が「ディスカバー・ジャパン」というキャンペーンを企画し大ブームになったという話を聞いたことがある。京都や金沢など日本各地の魅力を余すところなく伝え「日本には素敵な街がいっぱいあるんだな」と日本の良さを再認識させることに成功したという(うろ覚えですが)。突然なぜこんな古いことを持ち出したのかと言うと、最近のJ-POPのカヴァー曲ブームはどこか「ディスカバー・ジャパン」に通じるところがあるのではないかとふと思ったからだ。若いアーティストが自分達の親世代の曲をカヴァーし、それがヒット・チャートに上る。その結果「日本にはこんなに素敵な曲があるんだな」と多くの人が再確認する。最近のカヴァー曲ブームの影には「ディスカヴァー日本の唄」的なムーヴメントも実はあったりするのではないかと私は思っているのだが、あなたはどう思いますか?
 松任谷由実の曲は世代を超えて非常に多くのアーティストによってカヴァーされている。昨年末発売されたユーミン・カヴァー・アルバム『Queen's Fellows』ではクレイジーケンバンドから椎名林檎までと幅広い世代のミュージシャンの参加にユーミンの曲の普遍性を改めて感じたのだが、そんな中、ユーミンの歌を愛するアーティストによって、また新しいカヴァー・アルバムが誕生した。ただ、今までと違うのは海外のアーティストによるインターナショナル・カヴァー・アルバムだという点。参加アーティストはスティーヴン・ビショップ、アメリカ、ベス・ニールセン・チャップマン、ジェイク・シマブクロなど70's、80'sの代表的なアーティストから新進気鋭のアーティストまでとヴァラエティに富んだ豪華な顔ぶれ。プロデューサーはケニー・G、マイケル・ボルトンなどを手がけるリック・チューダコフとピーター・ブネッタを中心に、各アーティストのレギュラー・スタッフも制作にあたっている。その結果オリジナルの楽曲を忠実に再現するのではなく、各々のアーティストの持ち味を最大限に生かしたカヴァー・アルバムでありながら、大人のための洋楽コンピレーション・アルバムともいえそうな内容に仕上がっている。
 ベス・ニールセン・チャップマンによる「A HAPPY NEW YEAR」はボサ・ノヴァ風にアレンジされ、夏の夕暮れの寂寥さが伝わってくる1曲。年が明けてどことなく静かな街の匂いを伝えるオリジナルとは異なった斬新なアレンジが魅力的。マイケル・フランクスの甘い歌声に耳が緩む「あの日にかえりたい」はAORのコンピレーション・アルバムに入っていても何の違和感もなさそうなまさにアーバン・メロウな1曲。アメリカによる「Hello, my friend」はアルバム中最もお気に入りの1曲。美しいハーモニーに彩られたアメリカ・サウンドの中にも、オリジナル楽曲の胸がキュンとなる世界がしっかり残っている辺りは見事の一言。最近では諫山実生によるカヴァー・ヴァージョンが大ヒットした「朝陽の中で微笑んで」もパティ・オースティンの豊潤な歌声に彩られ年代物のワインのようなふくよかな香りが漂う仕上がりになっている。波音をバックに始まる「春よ、来い」はハワイを代表するウクレレ奏者ジェイク・シマブクロによるカヴァー。オリジナルの和テイストの雰囲気を残しながらも夏を感じる「春よ、来い」といった感じがこの季節にぴったりの1曲だろう。
 洋楽とユーミンの見事な融合「OVER THE SKY」。本当に良いものは時を超えて多くの人に愛され伝わっていく。そんな道しるべになる素晴らしいアルバムがまた1枚生まれたような気がする。

Text by 大野裕子(パルシェ店)

『OVER THE SKY Yuming International Cover Album』
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CD
東芝EMI
TOCT-25065
¥2,667(税抜)
発売中

スティーヴン・ビショップ、マイケル・フランクス、パティ・オースティンなど70年代、80年代を代表する海外のアーティストによるユーミン・カヴァー・アルバム。カヴァー・アルバムでありながら大人のための洋楽コンピレーション・アルバムとしても十分楽しめる内容が○。

【OVER THE SKY 特設サイト】http://emimusic.jp/yuming/intl/

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