B'z

デビュー15周年を迎える2003年9月、入魂のアルバム『BIG MACHINE』が遂に登場！
歳月の堂々たる重みに裏打ちされた本作は、
まさに「王者」の風格と自信に満ち溢れている。

（初出『Groovin'』2003年8月25日号）

　1988年9月21日、B'zは1stシングル＆アルバムを同時にリリースし、彗星のごとくデビューを果たした。あれから15年。松本孝弘と稲葉浩志が打ち立ててきた数々の金字塔について、今更説明する必要はないだろう。日本のミュージック・シーンにおいて名実共にトップの地位に君臨しながらも、今なお無限に進化し続けるB'z。
　「音」に対するその飽くなき姿勢は、まさに「王者」の称号に相応しい。デビュー15周年を迎えるとあって、ここ最近彼らの活動は更に加速していた。2003年突入後、3月に34thシングル『IT'S SHOWTIME!!』のリリースと既発8cmCDシングル10作品のマキシ化が同時に行われたのを皮切りに、6月には稲葉のソロ・シングル『K I』、7月にはオリコン・シングルチャート31作連続初登場1位を獲得した35thシングル『野性のENERGY』、そして8月には松本のソロ・プロジェクトによる邦楽カヴァー・シングル第1弾『異邦人』を立て続けにリリース。そして9月、いよいよ彼らは入魂の真打『BIG MACHINE』を発表する。前作『GREEN』より約1年2ヶ月振り、通算13枚目のオリジナル・アルバムとなる本作は、この記念すべき年を象徴するパワフルな1枚。揺らぎのない自信が全編に漲る超力作だ。
　本作に収録されているのはTV ASAHI NETWORK SPORTS2003のテーマソングである前述のシングル2曲「IT'S SHOWTIME!!」「野性のENERGY」に新曲11曲をプラスした全13曲。新曲には、アサヒスーパードライCMソング「WAKE UP, RIGHT NOW」をはじめ、NBA タイアップソング「儚いダイヤモンド」、NHK BS2アニメ「時空冒険記　ゼントリックス」テーマソングである「CHANGE THE FUTURE」等、すでにオンエアされCD化が待ち望まれていたトラックも含まれている。
　本作の全体的な印象はズバリ、ポップ＆キャッチー！加えてハード・ロックというよりはストレートなロック色の濃い仕上がりだ。松本の繰り出すヘヴィーなギター・サウンドはもちろん健在、いや更に重量感を増しているのだが、シンプルかつ痛快なリフの多用が功を奏してか、バック・トラックがこれまでよりも研ぎ澄まされているように感じる。その巧みな作用は太く際立ったアグレッシヴなサウンドへと結実し、聴き手の心を大いに揺さぶりにかかる。たとえばオープニング曲「アラクレ」を聴いた瞬間、俄然気持ちが盛り上がってしまうのも全く無理のない話であるように。
　しかしながら、それだけで終わらないのがB'zのB'zたる所以。じっくりと聴かせてくれる美しいバラード「Nightbird」、ジャジーなリズムとブルージーなギターが絡み合うアンニュイなナンバー「ブルージーな朝」、そしてインダストリアルチックな重低音と「お、そう来たか！」と感嘆せずにいられない変則展開を伴う表題曲「BIG MACHINE」等、変幻自在のヴァリエーションをその懐にしっかりと内包しているのである。
　ヴォリュームたっぷりの内容にもかかわらず、あっという間に全編を聴き終えたような感覚に包まれるのは、さすがというか何というか、百戦錬磨の彼らだからこそなせるワザ。15年という歳月の堂々たる重みに裏打ちされた本作は、まさに「王者」の風格と自信に満ち溢れている。

Text by 秋野 櫻