レミオロメン

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レミオロメン

行き場のない苛立ちや、寂寥感や閉鎖感の中での泣いたり笑ったり…。
新星レミオロメンが放つ2nd Single「電話」は、
今、この時代に存在すべきリアルな名曲だ。

(初出『Groovin'』2003年8月25日号)

レミオロメン-A.jpg ロックと時代は切り離せない。その時代の空気に鳴るべき音、メロディ、歌詞というものが必ず存在する。ジョン・レノンの「イマジン」は、あの1971年の不穏さと虚無感が歌と音に図らずも盛り込まれた生まれるべくして生まれた曲であり、あと10年早くても遅くても、いや5年の差が生じたとしてもあのように強烈な(そして優しい)メッセージを内包する曲になったかどうか。個人的には時代など関係ない普遍的な王道ポップスをこよなく愛しているが、例えば80年代に産み落とされたキラメキ・ポップスの方法論を2003年の現在に単純にスライドさせて作ったとしても、その曲の持つ有効性に疑問を持たざるを得ないことも十分承知しているつもりだ。「有効性」なんて難しい言葉を使ってしまったが、要は「リアルかどうか」ということである。
 レミオロメンの「電話」という曲を初めて聴いた時、これこそ今の時代の空気の中で生まれ得たロックだと感じた。「今の時代の空気」がどんな空気かを説明することは難しい。あえて言葉にすると寂寥感や閉鎖感など、マイナス・イメージを喚起させる言葉になってしまう。しかし彼らの曲には絶望感はない。孤独や行き詰まりを感じた上でどう生きていくかという、おぼろげながらも前向きな姿勢が見え隠れする。「電話」の何がそのような「今の気分」にさせるのか、正直よく分からない。激しいギターのストロークなのか、ヴォーカルの低音ヴォイスなのか、恋人に語りかける風の歌詞なのか。しかし聴き始めてから30秒と経たないうちに、今、この時代に存在すべきリアルな曲だと感じ、そしていい曲だと素直に思った。
 レミオロメンは、藤巻亮太(ヴォーカル/ギター)、前田啓介(ベース)、神宮司治(ドラムス)の3人からなる。小中高と同級生だった彼らは群馬、前橋を拠点にライヴ活動をスタートし、東京でも下北沢のライヴ・ハウスを中心に活動の場を広げていく。その結果、今年3月にリリースされた1st Mini Album『フェスタ』はインディーズ・チャートで瞬く間に上位に食い込んだ。続く1st Single『雨上がり』も各FM局、CS音楽局のへヴィ・ローテーションを獲得するなど、信じられないスピードで反響が広まっていく。この頃行われたあるインストア・ライヴでも、新人ながら540人を動員したというから驚きだ。そして満を持しての2nd Singleが、既にライヴでは絶大なる支持を得続けているこの名曲「電話」というわけだ。
 リリースされた時代の空気が真空パックされ、しかも普遍的な魅力を持ち得ているような強い曲。このような楽曲に巡り会えるのは希だ。この「電話」を聴いて個人的に思い出したのは、例えば(ポップス寄りの選曲で申し訳ないが)、ユニコーンの「すばらしい日々」や小沢健二の「天気読み」を初めて聴いた時の衝撃だ。これらの名曲に出会った時の自分が若かったように、「時代にリアルかどうか」を嗅ぎ分ける感性はいつの時代でも若い人の専売特許である。このレミオロメンも若い人たちの感性に強烈に響いたからこそ、ここまでの反響だったのであろう。そしてこの反響はまだまだ序の口であるような気がしてならない。

Text by 高瀬康一(編集部)

『電話』
レミオロメン-J.jpg


Maxi Single
ビクターエンタテインメント
SPEEDSTAR RECORDS/OOKIGUMO
VICL-35567
発売中
¥1,000(税抜)

23歳の男3人による3ピース・ロック・バンド、レミオロメンの待望の2nd Single。すでにライヴでは名曲の呼び声高い「電話」と、地を這うようなリズムとエッジの効いたギター・リフが都会の夜の空気を表現するソリッドなロック・ナンバー「タクシードライバー」を収録。

【レミオロメン 公式サイト】http://www.remioromen.jp/

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