エルヴィス・コステロ

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エルヴィス・コステロ

エルヴィス・コステロ待望の新作アルバムは、
ジャズ・フィーリングを漂わせながら切々と歌い上げるバラード集だ。
秋の夜長にぴったりな、必聴のヴォーカル・アルバム!

(初出『Groovin'』2003年8月25日号)

エルヴィス・コステロ-A.jpg もはや人気と作品クオリティのバランスを保っている、唯一ベテラン・ロッカーと言ってもいいエルヴィス・コステロ。「スマイル」が月9の主題歌に使われたり、2枚組のベストが新たに編纂されたり、フジロックに出演したりと、日本において未だにこれだけの人気を保っているという事実は、長年ファンを続ける者にとっては嬉しい限りだ。そんなコステロがオリジナル・アルバムとしては『ホエン・アイ・ワズ・クルーエル』以来、約1年半振りに新作『ノース』をリリースする。
 『ホエン〜』はデビュー当時の"怒れる若者"のイメージを彷彿とさせるようなラウドなロック・アルバムだったが、本作はジャズ・フィーリングを漂わせながら切々と歌い上げるバラード集だ。先だって婚約を発表した相手であるジャズ・アーティストのダイアナ・クラールへの熱い想いを表現する手段として、こういった音楽性を選択したのかも知れないが、元々ロックなどという1ジャンルには収まらない豊かな音楽性を内包していたとはいえ、その変幻自在振りには本当に驚かされる。
 しかしなんとふくよかで深みのある音楽だろうか。5年前のバート・バカラックとのコラボ盤『ペインテッド・フロム・メモリー』は、個人的に人生の愛聴盤となっているが、あの辺りから醸し始めたヴォーカリストとしての表現の豊かさは凄いの一言だ。昨年の追加公演の渋谷公会堂で見せた、ハンド・マイクでステージを移動しながらの、まるでシナトラのような貫禄の唄いっぷりに、初期パンク風レパートリーを期待してきたロック少年は呆然としていたが、これも魅惑のコステロ・ワールドの一端なのだ。
 朋友スティーヴ・ナイーヴを再び迎え、彼のピアノ伴奏のみの曲もあれば、48人編成のホーンや弦楽器からなる曲まで全13曲。録音は今年の4月から5月にかけてN.Y.で行われており、プロデュースはコステロ自身とケヴィン・キレンが担当している。
 タイトルの「ノース」の意味を聞かれ、「僕が向かっている場所だ」と答えたコステロ。今まで様々な音楽地図を広げてきた彼が、次に向かう場所として提示したこの意味ありげな答えは実に興味深いが、まだまだ音楽活動への興味と意欲を失っていないことが何より嬉しい。とりあえずは本作でその充実ぶりを確かめて頂きたい。

Text by 高瀬康一(編集部)

『ノース』
エルヴィス・コステロ-J.jpg




CD
ユニバーサル インターナショナル
[初回限定盤]DVD付 UCCH-9001 ¥2,718(税抜)
[通常盤]UCCH-1004 ¥2,427(税抜)
9月10日発売

オリジナル・アルバムとしては約1年半振りの新作は、気心の知れたメンバーと共に作り上げたジャジーな香り漂うバラード集。初回限定盤はDVD(ビデオ・クリップ3曲収録予定)付き。日本盤のみのボーナス・トラックとして「Too Blue」を収録。

【エルヴィス・コステロ 日本オフィシャルサイト】http://www.universal-music.co.jp/u-pop/artist/elvis_costello/

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