岡村孝子

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岡村孝子

オリジナルとしては約3年ぶりとなる、岡村孝子の最新アルバム『TEAR DROPS』。
日常の中でのあらゆる思いを温かい涙に変えてくれるかのような、
零れんばかりの満天の星の下で生まれた、溢れ出る母性と愛情に満ちた作品。

(初出『Groovin'』2003年9月25日号)

岡村孝子-A.jpg 幼い頃にこんなことを思ったことはないだろうか。涙というものは、あまりに流し過ぎると自分の中の涙の量がどんどん減っていって、いつか無くなってしまうんじゃないか…。もちろんそんな訳はないことは、自然な時間の流れの中で誰もが理解していくことだ。むしろ、涸れるほどに泣いても止まってくれず、我慢すると余計に溢れて苛立ちを覚えたり…。涙というものは美しいものであるが、時として厄介なものでもある。
 オリジナル・アルバムとしては『Reborn』以来約3年振り、13枚目のリリースとなる岡村孝子の最新作『TEAR DROPS』がリリースされた。今作に収録されている「肩車」の中の「大丈夫、まかせて。ママがいるからね。」という言葉に、つい先日再会した今では3児の母となった友人の姿が重なって、とてもリアルに伝わってきた。この曲以外にも、普段何気なく使っている言葉の重みや温かさに改めて気付かせてくれる「おかえり」や、過ぎた時間や失ったものへの前向きな気持ちが表れた「天晴な青空」、そして「ねじれるような孤独も傷みも生きている証」とさえ言える強さを含んだ「涙のしずく」など、アルバム全体を通して一貫した「大きな母性と愛情」が強く感じられる。これまでの作品にも女性ならではの強さは表れていたが、そういった(強さや女性らしさも伴った)母性は、彼女自身が実際に母になったことで、より広く深いものになったようだ。
 独特の、芯の強さを感じさせる響きを持った通る声が、やわらかいメロディーに乗って、そっと心の琴線に触れてくるような言葉1つ1つを大切に歌い上げる。まるで子供を育てる母のように。岡村孝子の音楽は、聴く者の年齢に関わることなく、常に優しく包み込んでくれる(中学生の時に初めて聴いたアルバム『liberte』は、今でも新鮮な気持ちで聴くことができる大切な1枚だ)。歳を重ねるにつれて、若い頃に聴いた音楽から遠ざかっていくということはよくあるが、岡村孝子という人は、いくつになっても同じ気持ちで聴くことのできる作品を生み出せる、数少ないアーティストの1人だろう。
 決して特別ではない誰にでも訪れる日常や、そこから自然に涌き出る感情、それら全てを受け入れる強さ、そして、大切な人を思う大きな母性や女性らしさ…といったものが、彼女の生み出す作品の中には常にある。だから多くの女性たちは、ただ共感するだけでなく、自分もそうなりたいという憧れや意志を持って、彼女の作品に耳を傾けるのだろう。
 「TEAR DROPS」は直訳すれば「涙のしずく」。今の私には、涙は悲しい時や辛い時にだけ溢れてくるものではない事もわかる。今作に込められた彼女の思いは、大人になって、より強く理解できるようになった。「あなたがいるから、ママは大丈夫」という言葉はまだ実感できないけれど、これまでもそうだったように、これから彼女の音楽を聴き続けていく中で、自然と解っていくのかもしれない。

Text by 二宮万里(編集部)

『TEAR DROPS』
岡村孝子-J.jpg




CD
BMGファンハウス
BVC4-31001
発売中
¥2,913(税抜)

オリジナルとしては約3年ぶりとなる、岡村孝子の最新アルバム。日常の中から生まれる様々な事柄を冷静に見つめ、そこから前向きに進もうとする強さを、やわらかいメロディーに乗せて1曲1曲大切に歌い上げている。母になった彼女の姿をそのまま映したような、溢れ出る母性と愛情に満ちた作品。

『ENCORE・V〜20th Anniversary Concert tour, '02 DO MY BEST』
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DVD
BMGファンハウス
BVB4-31001
発売中
¥4,500(税抜)

デビュー20周年を迎えた昨年に行われたコンサート・ツアー2002「DO MY BEST」。今作は最終日の9月6日に渋谷公会堂で行われた感動のライヴを収録。「夢をあきらめないで」「虹を追いかけて」といった珠玉の名曲や、アンコールでの、一夜限りの"あみん"復活による「待つわ」など、貴重な映像が満載。

【岡村孝子 official homapage】http://www.okamuratakako.com/

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