CHARCOAL FILTER

ARTIST PUCK UP

CHARCOAL FILTER

後半戦も超ハイ・テンションで突っ走るCHARCOAL FILTER。
新作『Happy Set』には一回りも二回りも成長した、チャコフィルの"今"が全て詰まっている!

(初出『Groovin'』2003年9月25日号)

 シンプルなビート・バンドから始まったグループが、アルバムを発表していくごとに様々な音楽的要素を吸収して成長していく様子を見守るのが昔から好きだった。そのようなバンドの究極がビートルズで、初めての音楽体験が彼らだったから、今でも「バンドの成長物語」を追体験していくのが好きなのは当然かも知れない。60年代というロックが思春期だった時代背景を考慮に入れても、彼らはアルバムごとに飛躍的に成長していったわけだから、それを追っていく者にとってもとんでもない興奮が伴ったわけだ。
 日本でも昔からそういうバンドは多かった。ユニコーンしかり、スピッツしかり。ビート・パンク然とした勢いだけの初期から、ニュー・ウェイヴ風音作りに寄り道したり、ラテン・フレイヴァーやストリングスの導入など、古今東西あらゆる音楽ジャンルを飲み込んで自分たちの音楽に反映していく様を見つめ続けることは、ロックやポップスを聴くという行為の醍醐味の1つと言っていいだろう。「俺達はこれしかないぜ!」とばかりジャンル一筋の美学もカッコいいとは思うが、エンターテイメントという意味では、雑多な音楽性を武器にカメレオン的変貌で楽しませてくれる方が質が上だと思うのだ。
 CHARCOAL FILTERといえばシンプルなバンド・サウンドに、青春を感じさせる熱く爽やかな詞が乗ったパワー・ポップ・バンドというのが今までの印象だったが、9/25にリリースされたばかりのニュー・アルバム『Happy Set』を聴いてみて、それだけでは終わらない様々な要素を感じた。彼らは確実に成長していた。
 1996年に結成し99年にCDデビュー、本作で4枚目のアルバムとなるのだから成長していて当然とも言えるが、その著しさに驚く。今年の5月にリリースされた「やさしさライセンス」や、同じく8月にリリースされた「虹」といったシングル曲で見せる"これぞチャコフィル!"という曲であっても、そのリズムのタイトさ、エッジの効いたキレのいいサウンド、ヴォーカルの表現力の豊かさなど、一聴してバンド自体のレヴェルが上がっていることが分かる。更にアルバム収録曲で見せる音楽的な幅の広さにも注目したい。例えば「7port」という弾けるようなサマー・ソングで登場するマーチ風のドラミングや、「イエローキャブリオーレ」の冒頭部分のまるでスペシャルズのような高速スカは単純に楽しいし、個人的な一押しソング「My Girl」という曲ではBOOWYの「HONKY TONKY CRAZY」を彷彿とさせるリズム・パターンにロカビリー風のギター・ソロが絡むなど、音像はかなりカラフルだ。更に「皐月」という曲のタイトルの新鮮な語感からも、ありきたりな日本語を選ばないようにしようという意志が感じられたりもする。
 最近の音楽シーンでは、若いバンドがデビューしても2、3年で結果(=ヒット)を出さなければ見捨てられるような厳しさが漂っているが、人間の成長だってかなり時間のかかるものなのに、たかが数年で何が出来るというのか。昔は苦節10年でようやくブレイクというグループがザラにいたが、そこまでとは言わなくとも、業界にしてもファンにしてももう少し長い目でアーティストの成長を楽しむ余裕を持ちたいと思う。そういう意味でもCHARCOAL FILTERのように成長が期待できるバンドに対しては、長い目で見守っていきたいと切実に思う。

Text by 高瀬康一(編集部)

『Happy Set』
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CD
ワーナーミュージック・ジャパン
[初回生産限定盤]DVD付き WPZL-30009〜10
[通常盤]WPCL-10032
発売中
¥2,300(税抜)

「やさしさライセンス」「虹」のシングル2曲を含む約1年振りの4thアルバム。昨年1月発表のマキシ「卒業」以来プロデュースを担当している亀田誠治を引き続き迎えて制作された力作だ。初回限定盤は「Hallin' Love」ツアーのゲネプロ映像(7/19渋谷公会堂)を収録したDVD付き。

【CHARCOAL FILTER Official Website】http://powerpop.co.jp/artist/cf/

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