一青 窈

ARTIST PICK UP

一青 窈

デビュー・シングル「もらい泣き」のブレイク以降、この1年で素晴らしい飛躍を遂げた一青 窈。
初の映像パッケージとなる「姿見一青也」(すがたみひととなり)は、
ライヴ映像を中心にこれまでの軌跡を完璧に網羅した豪華極まりない作品だ!

(初出『Groovin'』2003年9月25日号)

一青窈-A.jpg

  わたしの涙腺は徳光和夫にもかるーく勝てるほどハンパじゃなく緩い。子供向けアニメでウルッ、動物番組でポロッ。なにしろあの『少林サッカー』を観た時でさえティッシュを手放せなかったぐらいなのだ(家人は笑い過ぎて涙ぐんでおりました)。しかしながら、音モノのいわゆる「ライヴ映像」で涙腺が緩んだ経験はこれまで1度もなかったりする。意地悪な言い方ではあるが「映像作品としてのライヴ」は、ライヴの醍醐味である「臨場感」が圧倒的に物足りない。ひとつのパッケージの中に整然と収められた「臨場感」はすでに何倍にも薄められている。それを敢えて全力で味わう気にはどうしてもなれないのである。
 で、結局何が言いたいのかというと、そんなわたしがいつの間にか泣いていたワケです。本作「姿見一青也」(すがたみひととなり)を観ているうちに。時間の経つのも忘れて全力で映像を味わい、流れ落ちたその涙は…この上もなく美味だった!
 昨年10月に発表したデビュー・シングル「もらい泣き」がいきなりブレイク、以降2枚のマキシ・シングル及びアルバム1枚を発表しいずれもヒットを記録と、この1年で素晴らしい飛躍を遂げた一青 窈(ひととよう)。彼女にとって初めての映像パッケージとなる本作は、初のライヴ・ツアー「ええいああ」のファイナルを飾った渋谷AXでの公演より9曲、初の野外ライヴ・東京池上本門寺特設ステージでの公演「月天心〜しゅるり〜」より8曲、そして東京キネマ倶楽部で行われた限定ライヴ「さらさらいや」より2曲の計19曲にも及ぶライヴ映像に加え、3rdマキシ・シングル「金魚すくい」のPVをボーナス・トラックとして収録した全20曲で構成。ライヴ映像には未発表曲「ハナミズキ」も含まれるなど、これまでの彼女の輝かしい軌跡を完璧に網羅した豪華極まりない内容に仕上がっている。
 とにかく驚かされたのは、ライヴにおける何もかもが「一青 窈」というひとりのアーティストの「こだわり」に徹底的に彩られていること。その作用ゆえか、ステージ上にライヴという枠組みを超えた幻想的な空間が広がっているように感じられるのである。特に池上本門寺におけるそれは圧巻のひとこと。夜の闇と美しいライトの光、きらきらと輝く雨、寝殿造を思わせる純和風のセット、そして音楽が一体となったステージには神々しささえ漂っていた。
 その幻想的なエネルギーの源は無論、一青 窈その人にある。彼女の歌から溢れ出た感情のしずくは会場をなみなみと満たし、ゆるやかな波を立てながらオーディエンスの琴線を揺さぶる。その波動は衰えることなく、時を越えてパッケージとなった本作からも確実に感じられるのである。要するに、現場の「臨場感」が薄められずしてそのまま綺麗に保存されているのだ。
 彼女のパフォーマンスには、それを映し出す媒体が何であれ、波動を伴った「臨場感」を見事に伝える力量が備わっている。よって、映画(「珈琲時光(原題)」)の主演が決定したというニュースを聞いたときもさほど驚きはなかった。彼女の「表現者」としての才能は、シンガーというカテゴリーをもやすやすと超えてしまうほど研ぎ澄まされているのだから…。その魅力の全てがぎっしりと詰め込まれた本作は、現にわたしがそうであったように、きっとあなたの涙腺を柔らかく解きほぐしてくれることだろう。

Text by 秋野 櫻

『姿見一青也(すがたみひととなり)』
一青窈-J.jpg



コロムビアミュージックエンタテインメント
[DVD]COBA-4261
[VHS]COVA-6760
10月1日発売
¥4,571(税抜)

一青 窈、初にして待望の映像作品集。ライヴ・ツアーのファイナル公演(渋谷AX)、野外ライヴ(東京池上本門寺)、限定公演(東京キネマ倶楽部)より計19曲のライヴ映像を厳選、加えて3rdマキシ・シングル「金魚すくい」のPVをボーナス・トラックとして収録した全20曲。DVDは初回盤限定特別仕様なのでお買い求めはお早めに!

【一青 窈 OFFICIAL SITE】http://www.hitotoyo.ne.jp/

inserted by FC2 system