驚異のニューロック・サウンド

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驚異のニューロック・サウンド

Text by 鷲尾 剛(すみや本社商品部 オーディオソフト・グループ)

 60年代後期から70年代初頭、髪を風になびかせ、肩をそらし、敢然と嵐に立ち向かう若きロックの英雄たちがいた。時にサイケデリックに、時にグルーヴィーに。百数十グラムの塩化ビニール盤に刻まれたロックの新たなる可能性は、彼らの思想と揺るぎなき確信の日々を映し込む万華鏡。未来への希望と云う名の圧搾空気を充填した名盤の数々は、時代の移ろいと共に忘れ去られたのか?否!そうではない。たとえカタチが12センチの銀色円盤に変わっても、21世紀、彼らのスピリットは先達としての輝きに磨きをかけて甦った。天国に召され神々しいまでの装いで降臨する者あり、生き永らえて老残の姿を晒す者もあり、しかし、そこには等しく驚異のニューロック・サウンドが鳴り響く。これを殺伐とした潤いなき現代への警鐘と捉え、老若男女よ、今一度、忘我の境地に身を任せてみないか!
(※該当名盤発売当時のレコード会社宣伝マン諸氏の精神が、憑依した状態で書き下ろしました。)

(初出『Groovin'』2003年9月25日号)

オールマン・ブラザーズ・バンド『フィルモア・イースト・ライヴ』
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CD
ユニバーサル インターナショナル
UICY-7181
発売中
¥3,500

印象的なジャケットも有名なオールマン・ブラザーズ一世一代のライヴ名盤。70年代初頭の臭さ一杯のスワンプな作品集。アメリカ南部出身のバンドならではのブルージーで熱い演奏は今でも新鮮であり、しかも本盤はアナログ発売時には漏れていた楽曲をも併せ収録という嬉しい技も光るお買い得盤となっている。「ステイツボロ・ブルース」や「ウィッピング・ポスト」のギターを聴くたびに、オートバイ事故でこの世を去ったデュアン・オールマンへの敬慕が深まるアルバムだ。もちろんバンド自体のアンサンブルも云う事なしの絶品でもある。そうそう、PLAY IT LOUDな1枚でもあることも太字で注記しておこう。(1971年作品)

CCR
『バイヨウ・カントリー』
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CD
ビクターエンタテインメント
VICP-62072
発売中
¥1,942

タイトルに騙されてはいけない。これはカントリーではない、ゴリゴリのロックン・ロールであり、湿度の高いスワンプ風味のサウンドだ。中でも全米大ヒットの「プラウド・メアリー」のB面としてもリリースされた「ボーン・オン・ザ・バイヨウ」は悶絶興奮の名曲として不滅だ。
(1969年作品)

ヴァニラ・ファッジ
『キープ・ミー・ハンギン・オン』
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CD
ワーナーミュージック・ジャパン
20P2−2096
発売中
¥1,820

このおどろおどろしいサウンドは何だ!ダイアナ・ロス&スプリームスの名曲を解体再構築し大胆にカヴァーしたタイトル曲はじめ、延々と続く演奏の長さは時代を象徴している感がある。また妙に気になるエロティックでPOPなジャケットも全てのロック少年(中年も)必携である。(1968年作品)

グランド・ファンク・レイルロード
『ライヴ・アルバム』
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CD
東芝EMI
TOCP-67004
発売中
¥1,800

雷雨の後楽園(東京ドームの前身的球場)での初来日公演はGFRのイメージを決定づけた。すなわちワイルド&エキサイティングなナンバー・ワン・ロック・バンド。後年はPOPな路線への軌道修正もあった彼らだが、本盤ではひたすら疾走する彼らの真骨頂炸裂。「アー・ユー・レディ」は今でも鳥肌モノ。(1971年作品)

クリーム
『クリームの素晴らしき世界』
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CD
ユニバーサル インターナショナル
UICY-2369
発売中
¥3,107

若きエリック・クラプトンが在籍したことで知られる革命的グループのスタジオ&ライヴの2枚組アルバム。スタジオ盤に収録されたロック史上不滅の名曲「ホワイト・ルーム」もさることながら、ライヴ盤冒頭収録の「クロスロード」の演奏には悶絶。また17分におよぶ「スプーンフル」にも脱帽。(1969年作品)

サンタナ
『天の守護神』
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CD
Sony Music Japan International
SRCS-9439
発売中
¥1,700

サン・フランシスコのローカル・バンドだった当時から、ライヴで観衆を熱狂させることから、「ショー・ストッパーズ」なる異名を取っていたサンタナの代表作にして全米1位6週間を記録したラテン・グルーヴ全開の1枚。印象的なジャケと共にニューロックの代名詞となったマスト・アイテムだ。(1970年作品)

シカゴ
『シカゴの軌跡』
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CD
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-11351
発売中
¥2,400

一世を風靡したブラス・ロックの雄であるシカゴは、まさしくブルー・アイド・ソウルである。重厚なサウンドと限りなく黒いヴォーカルは、AORに転向した80年代のイメージとは遠く、むしろ骨太のロック・バンドと云ったおもむき。コンサートの冒頭で演奏された「イントロダクション」が最強。(1969年作品)

ジャニス・ジョプリン
『チープ・スリル』
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CD
Sony Music Japan International
SRCS-9802
発売中
¥1,700

本来はビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーのアルバムであり、ジャニスはそのヴォーカリストだった訳だが、今や彼女の出世作として有名。中でも「サマー・タイム」の絶唱はビリー・ホリディにもたとえられた記憶がある。他にもグイグイと迫る「心のかけら」などライヴ盤ならではの迫力十分。(1968年作品)

ジョニー・ウィンター・アンド
『ライヴ』
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CD
Sony Music Japan International
CSCS-6008
発売中
¥1,748

百万ドルのブルース・ギタリストと謳われたジョニー・ウィンター入魂必殺のライヴ盤。問答無用のスピード感、そしてホワイト・ブルース全開の本作の白眉は、やはりストーンズのカヴァーである「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」だろう。ギターはもちろん、喉から絞り出すようなヴォーカルも絶品。(1971年作品)

フェイセズ
『馬の耳に念仏』
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CD
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-568
発売中
¥1,748

ヴォーカルにロッド・スチュアート、ギターにロン・ウッドを配した彼らがモノにした名作中の名作がこれ。中でも「ステイ・ウィズ・ミー」はライヴにおけるハイライトを飾っていた超弩級の曲。凄みすら感じさせるドライヴ感は凡百なハード・ロック・バンドでは敵わない迫力。イントロで即死だぞっ!(1972年作品)

ブラインド・フェイス
『スーパー・ジャイアンツ・ブラインド・フェイス』
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CD
ユニバーサル インターナショナル
POCP-2268
発売中
¥1,748

クラプトン、S.ウィンウッド、G.ベイカーなどそうそうたるメンツで結成されたスーパー・グループ。衝撃的なロリータ・ヌード・ジャケが話題を呼んだが、米国ではソレが問題となり差し替えとなる。全体に地味な手堅い演奏が多い中、クラプトンのギターが炸裂する「プレゼンス・オブ・ザ・ロード」が人気。(1969年作品)

ブラッド・スウェット&ティアーズ
『血と汗と涙』
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CD
Sony Music Japan International
SRCS-9822
発売中
¥1,700

グラミー賞をも獲得し、ジャズ・ロックなる名称を生んだ歴史的名盤。このアルバムから新加入のカナダ人ヴォーカリスト、D.C.トーマスの野太くソウルフルな歌いっぷりは当時のロック少年を軒並みノックアウトしたものだ。「モア・アンド・モア」のヴォーカルとブラス・セクションの絡みが最高。(1969年作品)

マウンテン
『勝利への登攀』
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CD
Sony Music Direct
MHCP-2005
発売中
¥1,700

クリームの後継者としての位置を不動のものとしたレスリー・ウエスト率いるマウンテンの実質的セカンド。ジャック・ブルース作品「想像されたウエスタンのテーマ」のうねるようなノリ、そしてイントロからラストまで怒涛のハード・ロックに仕上がった「ミシシッピー・クィーン」など聴き所満載。 (1970年作品)

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