Every Little Thing

大ヒット・ベスト盤『Every Best Single』の第2弾!!
キラー・バラード「fragile」をはじめ、ヒット・シングルが満載!!
ツアーでも大好評だったアコースティックバージョンも2曲収録。

（初出『Groovin'』2003年9月25日号）

　"ベスト盤がリリースされる"って聞くと、それだけでなんかワクワクしませんか？まるでクリスマス・プレゼントをもらえる子供のように。収録曲が発表されるまでのドキドキ感。何が収録されるかを友達とああだこうだと話し合ったりしたりして…。こんな経験、少なくても1度や2度は誰にでもあるんじゃないかなぁ。ベスト盤がリリースされる背景にはいろいろな事情があるのだろうけど、やっぱりリスナーとしては単純に嬉しいもの。さらに新曲や未発表曲、アルバム未収録曲なんかが収録されたあかつきには、その嬉しさも倍増。
　さて、そんな胸ときめくワクワクするようなベスト盤をEvery Little Thingがリリースする。これまでに、デビュー曲から「Someday, Someplace」までのシングルを収録した『Every Best Single＋3』と、それまでの全楽曲からバラードを集めた『Every Ballad Songs』の2枚のベスト盤を発表している彼らだが、本作には『Every Best Single＋3』以降のシングル「Pray」から最新シングル「ファンダメンタル・ラブ」までが収録されている。さらにライヴで大好評を博した初期のナンバー「For the moment」と「出逢った頃のように」のアコースティックバージョンもプラス。また単にシングル・ベストの続編というだけでなく、キーボード/プロデューサーである五十嵐 充が卒業（2000年3月）後の第2期Every Little Thingへの成長を綴った内容としても楽しめる（1〜3曲目は、五十嵐在籍シングル）。リリース順に収録されているので、現在のヴォーカル＋ギターというユニットとしてのサウンドを模索するかのような新たなサウンドへの挑戦の歴史、デジタル・ビート主体のサウンドから、バンドよりのサウンドへの変化の流れを感じることができるだろう。そういった意味においても、アルバムのラスト2曲のアコースティックバージョンは彼らの今後の新たなステップへの布石であると言っても決して大袈裟ではないのかもしれない。
　デジタル・ビートから、バンドよりのサウンドになったこともその要因の1つだが、伊藤のギターがより耳に残るようになった。これまではデジタル・ビートの波に飲まれていた感があったかもしれないが、今は明らかにEvery Little Thingのギタリストとしてサウンドを支え、そして主張している。プレイ中は派手なパフォーマンスも少なく、スタジオ・ミュージシャンのように寡黙で堅実な演奏をしている。しかし、ギターのサウンド、フレーズがEvery Little Thingらしさを主張しているのだ。また、持田にしても、初期はアイドル的な雰囲気を醸し出していたが、シングルとしては初の持田による作詞・作曲による「jump」以降、確実にシンガー、アーティストとして、地に足がついた存在になったといえる。「jump」以降の彼女のまとう空気は明らかに今までのものとは違うものだと強く感じられたのは僕だけだろうか。感情を感じさせない無機質なヴォーカルでありながら、優しさ、悲しみの感情が自然と伝わってくる不思議な魅力を持った声。少なくとも僕は、その、胸をしめつけるほど（特にバラードの時）心に伝わってくる不思議な魅力を持った声の虜になっていることに、今回改めて気付かされた。
　ベスト盤には、オリジナル・アルバムとはまた違った、アーティストの真剣な思いが込められている。その時その時の最高の楽曲をシングルとして送り出し、そのシングルを集めたのだから真剣以外の何ものでもない。だからこそ、その流れを辿りながら聴くことによって彼らの成長がわかるのだ。このベスト盤を聴いてEvery Little Thingの魅力を再確認し、新たな魅力を発見してほしい。

Text by 常盤安信（横須賀佐原店）