KICK THE CAN CREW

〜男女に、そして大人子供にかかわらず響く言葉と音に、触った時から立った鳥肌、
今だ盛り上がってんだ！〜ヒップホップの常識を覆し続けるキックがおくる
連続リリース第6弾は初のベスト・アルバム！さらにニュー・シングルも発売！

（初出『Groovin'』2003年11月25日号）

　ぶっちゃけ、ヒップホップは苦手だった。その昔「おそらくこれがヒップホップ」と初認識して耳にした曲に乗り物酔いに似た感覚をおぼえ（もともと乗り物酔いがひどかったこともあり）、それからずっと遠慮していた。例えば食べ物の好き嫌いにしても、大人になれば指摘もされなくなる。さらに歳をとっていくにつれ、新しく何かを始める機会も少なくなっていくから、元々好きなものは好きなまま、苦手なものは苦手なままだったりする。ましてや苦手なものが好きになるなんてことはちょっとした事件に等しい。なんてことを思っていたらそんな事件が自分に起きた。そして早2年。今や私はキックが大好きなんである。
　きっかけはメジャー1発目のシングル「スーパーオリジナル」。超前向き＆男前な気持ちのいいリリックに、それまで持っていたヒップホップに対する偏見をいとも簡単に覆された。その後もすんなり耳になじむ音と日本語の組み合わせの面白さに、目からウロコが落ち続けた。そんな彼ら、4thシングルで永遠の名曲、山下達郎氏の「クリスマス・イブ」をサンプリングという、なんとも大胆なことをやらかしてくれた。さらに紅白出場で「上がってんの？下がってんの？」（「マルシェ」）をお茶の間にまで披露し、翌2002年2月にメジャー1stアルバム『VITALIZER』をリリースしたかと思ったら、2ndアルバム『magic number』をリリースするまでの約1年間に5枚ものシングルを次々リリース。もちろん、時にノリノリ、時にまったり、どの作品も中身はしっかり詰まった内容。ひとつのテーマに沿って描かれる三人三様のリリックも毎回楽しませてくれて、しかも楽しませるだけじゃなく、大事なことまで気付かせてくれるのだ。10〜20代の若者のみならず、大人にも子供にも響き渡る言葉と音に鳥肌が立ちっぱなしなんである。
　そんな、まさにVITALIZER！な彼らだが、11/12にリリースされたばかりのシングル「ナビ/揺れ」に引き続き、最新シングル「脳内VACATION」（12/10リリース）でも音のリラックス空間を見事に作り上げている。タイトルだけでも十分癒されそうだ。「ナビ/揺れ」と併せて「癒し三部作」と名付けたくなるほどのグルーヴィーなミディアム・ナンバーである今作を聴きながらゆったり脳内小旅行、なんてのもいいかもしれない。
　ちょっとしたきっかけで日々の楽しみはぐーんと広がる。たかが音楽、されど音楽。そんな、心身共にベスト・コンディションにしてくれる、キックならではの「音」が満載の最新2作品で2003年いっぱいまで楽しく過ごせるハズ。さらに年が明けたらいよいよ7連続リリースをしめくくる3rdアルバムがリリースとなる。「ちょうだいVACATION」と作品中でも訴えている（？）ほど今年もハタラキッパだったキャラ立ち3本マイク。ちょっと早いけど今年もありがとう。そしてお疲れさま。来年も楽しませてね。

Text by 二宮万里（編集部）