平井 堅

アコースティック・ライヴ"Ken's Bar"を元にしたコンセプト・アルバム、
そして今年のはじめに出演した"MTV Unplugged"でのライヴ＆ドキュメントDVDが
同時リリース！天賦のシンガー、平井 堅の魅力を力強く物語る名盤だ！

（初出『Groovin'』2003年11月25日号）

　平井 堅のヴォーカリゼーションには「歌うこと」への飽くなき情熱、こだわり、尊敬の念、そして愛が満ち溢れている。歌に対するその真摯な「姿勢」も含め、彼ほど「『歌うこと』が天職なのだ」と感じさせるシンガーはいないのではないだろうか。
　今回ご紹介するコンセプト・アルバム『Ken's Bar』、そしてライヴ＆ドキュメントDVD『MTV UNPLUGGED KEN HIRAI』は、彼がまさしく天賦のシンガーであることを力強く物語る作品だ。
　まずはアルバムについて。自身の曲はもちろん彼を惹きつけてやまない名曲の数々をアコースティック・サウンズでカヴァーするライヴ・イヴェント"Ken's Bar"。その5周年記念第1弾作品としてライヴのコンセプトを元に制作されたのがこの『Ken's Bar』だ。収録全12曲は、矢野顕子の天才的＆天衣無縫なピアノで生まれ変わった「大きな古時計」をはじめ、ミニー・リパートンの「LOVIN' YOU」、KUWATA BANDの「ONE DAY」、ジョージ・マイケルの「FAITH」、ジャクソン5の「ABC」、坂本 九「見上げてごらん夜の星を」等々、洋邦、男女、ジャンルの別を超越した名曲揃い！たとえタイトルに馴染みがなくとも、どこかで必ずや耳にしたことのあるポピュラーなナンバーばかりだ。
　ところで、有名な曲をカヴァーするということにはある種の難しさが伴うもの。何故なら「みんなが知っている曲」だからだ。原曲のイメージとどう折り合いをつけるのか、そこにカヴァーの難しさがある。しかしながら、彼はその難題をやすやすとクリアし、全曲見事に自分のモノにしているのである。原曲を消化し、それを自らの歌へと昇華させる感性の素晴らしさは、数多のシンガーの中でも群を抜いている。まさに「聴き惚れてしまう」という言葉がピタリと当てはまる極上の1枚だ。
　アルバムと同時発売のDVD『MTV UNPLUGGED KEN HIRAI』は、今年のはじめにN.Y.で行われた"MTV Unplugged"のライヴ映像と、そこに至るまでのドキュメント映像をまとめたもの。本放送でオンエアされなかった未公開映像を含む全19曲が収録されている。「まさか自分がその中で歌うなんて想像もしなかった」という本人のコメントから想像するに、"MTV Unplugged"への出演は彼にとってとてつもなく大きな節目となったはず。本作はその全てを体感できる歴史的な作品に仕上がっている。
　アルバムの初回盤は特殊ダブル紙ジャケパッケージ。また、公式HPの期間限定スペシャル企画にアクセスできる"ConnecteD"仕様、更にアルバムとDVDのダブル購入特典（応募）があるのもファンには嬉しいかぎり。とにかく本2作は、見逃すのがあまりにもったいないほど素晴らしい出来映え。両タイトルとも、平井 堅の「歌うこと」への愛を十二分に感じさせてくれる名盤だ。

Text by 秋野 櫻