DOUBLE

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DOUBLE

もはやこれは貫禄勝ち!とでも称したいほど、
圧倒的な歌唱力と楽曲のパワーで迫るDOUBLEのニュー・アルバム。
ジャンルを超えて支持される理由が、ここにある。

(初出『Groovin'』2003年11月25日号)

DOUBLE-A.jpg 最近のJ-POPSシーンを見てみると、HIP HOP勢の台頭ももはや当たり前の事として定着し、また従来からのソウルやR&Bともリンクしながら、いい意味でその境界を取り去り、そこからまた新たなスタイルや音が生まれ続けている。我々は何かあると、すぐそれを表現するために「○○系」とか「○○風」とかといった形容をしたがる(というより、そういった表現をした方が楽なので、ついカテゴライズしてしまう)が、もはやそういった形だけの分類は、実状に沿わなくなってきている感すら否めない。しかし、こういったボーダーレスなシーンで生きていくためには、そうは言ってもやはり1つバシッと芯になる確固たるもの(=個性)を持っていないと残れないのも、確かな事実。不確かで何でもありの時代だからこそ、自由さの中でバランス感覚と実力、それにもう1つ遊び心が発揮されたとき、その作品は最強のものとなる。
 今回リリースされるDOUBLEのニュー・アルバム『Wonderful』は、まさにそんな強さと自由さを兼ね備えた作品と言える。アルバムとしては約1年ぶりとなるが、過去『VISION』と『Re:VISION』が合わせて50万枚以上の売り上げという大ヒットを記録しただけに、今作『Wonderful』にも大きな期待が集まるところだ。DOUBLEと言えばやはり従来から定評のある歌唱力と、R&Bテイストのサウンドで人気を集めてきた訳だが、本作『Wonderful』ではさらに一歩踏み込んで、HIP HOPからバラードまで実に幅広い選曲で楽しませてくれる。そして先にちょっと触れた遊び心の部分だが、それは本作の構成にも現れている。アルバムの中でもポイントとなる箇所にそれぞれ「Intro」「Interlude」が散りばめられ、さらにフィーチャリング・アーティストとしてAI(DOUBLEとAIとのデュエット曲「My friend」はクールで秀逸な出来のナンバー)やTOKONA-X(Def Jam Japanから10/8にデビューした期待のHIP HOPアーティスト)を迎えた楽曲も収録され、アルバムとしてのカラーをさらに鮮やかに彩っている。もちろん、先行シングルとしてリリースされた「Rollin' on」と「destiny」も収録され、まさに今のDOUBLEがあらゆる角度から体験できる内容だ。
 そして何と言っても印象的なのが「Breathe again」。これはカヴァーで、元々はトニー・ブラクストンが93年にリリースした1stアルバム『ラヴ・アフェア』に収録された曲で、邦題は「熱い吐息」。ベイビーフェイスのレーベル"La Face"と契約した初めての女性アーティストとして知られるトニー・ブラクストンだが、この曲もベイビーフェイスのプロデュースでリリース、またアルバムはR&Bチャートで1位を獲得、800万枚を超える大ヒットを記録した。これだけ有名な曲だけにかえってカヴァーとなると難しいところだが、今回のDOUBLEのヴァージョンはオリジナルが持つ微妙なニュアンスと細やかな表情を上手く彼女なりに表現し、そこに可憐さと健気な感じを内包した、優しさ溢れる良い出来だ。そしてここにはR&Bに対する彼女の真剣な思いと愛情が詰まっている。
 最近飽和状態が続くJ-POPSシーンにあって、『Wonderful』は歌唱力と楽曲のクオリティといった基本をしっかり押さえながら、その上にパワーとリスペクトの心と新たなチャレンジの気持ちを加えミックスした、実力派の彼女ならではの好内容。DOUBLEのこれまでの活躍ぶりはもはや説明の必要がないほどだが、この『Wonderful』によってまた新たなDOUBLEの歴史が刻まれることだろう。そして何年後かのシーンにおいては必ず名盤の1枚として挙げられる、そんなアルバムになるはずだ。

Text by 土橋一夫(編集部)

『Wonderful』
DOUBLE-J.jpg




フォーライフ ミュージックエンタテイメント
発売中
CD
FLCF-3990
¥2,913(税抜)

先行シングル「Rollin' on」と「destiny」も収録され大充実の、DOUBLEのニュー・アルバム。彼女ならではの歌唱力とクールなバック・トラックに加え、本作にはAIやTOKONA-Xもフィーチャーされ、ヴァラエティに富んだ仕上がり。トニー・ブラクストンのカヴァー「Breathe again」も最高!

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