向風

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向風

プロミスのCMソング「一人じゃない」が今夏、猛威を震った向風。
11/19に上陸した「風祭り」が現在勢力を強めながら日本を縦断中。
風に対する警戒が依然必要です。

(初出『Groovin'』2003年11月25日号)

向風-A.jpg 今年の夏、「ひ〜と〜りじゃないか〜ら」と口ずさんだ人は数知れず。ここまでお茶の間に浸透した日本語パンク・バンドっているのか?と、してやったりの含み笑いをしてしまうワタシはパンクが大好きだ。好きなだけにいろいろなパンク・バンドを片っ端からチェックしているのだが、そうするとどうしても、どのバンドも同じに聴こえてきたりする。演奏もヴォーカルも楽曲も、ある一定のところまでいっているバンドは数多いが、その上から先が無いと、自分の中でも聴き流されてしまうし、仮にお店で取り扱ってもやっぱり売れなかったりする。感じるものは誰しも同じということだろう。そんな風に、ブームに便乗した勢いで出てきただけのようなバンドが、この「日本語パンク」というジャンルにおいては圧倒的多数だったりしていることも紛れもない事実だ。
 では、どんなバンドだったらそうではなくなるのか?さっき挙げたような、「演奏」「ヴォーカル」「楽曲」を始め、「メロディー」や「スピード」などいろいろな要素はあるが、要は単純に聴いた人に何か届くものがあるか無いか。これしかないと思う。あらゆることを凝りまくって巧く完成しているバンドよりも、がむしゃらさが先行しているバンドの方が勝ったりすることがあるのも、このジャンルの面白いところである。
 そういう意味で向風は直球ど真ん中、もっと言えばストレート3球勝負みたいなバンドである。楽曲もストレートなら歌詞もわかりやすく、かつ珍しいぐらい簡潔。1番しかないの?ぐらいの文字の少なさは笑ってしまうぐらい潔い。それに熱さと温かさと親しみやすさを足して3で割ったようなヴォーカルが乗り、一度聴いただけで胸に刻まれてしまう。それはこの夏「一人じゃない」を口ずさんでいたあなたが一番良く知ってるはずだ。
 そんな彼らが完成させたこのアルバム『風祭り』も、「学校(ココ)じゃ育たねぇ」と歌う学生応援歌とも言える「ロック☆スター」、目標に向かって行動を起こせと身近な視点で緩く喚起する「楽〜らく〜」、様々な曲感とテンポが詰め込まれた曲の中で、大事なものは何かを歌い上げる「大事」を始め、シングル同様のパッションを持ったストレートな楽曲で貫かれている。またしても野球で例えるなら緩急はつけてあるものの、球種はストレートのみで延長14回(曲)を完投してしまったかのようなアルバムなのである(ちなみに球種を増やして、最大の武器のストレートが伸びなくなったりしてるパンク・バンドは即、戦力外通知です)。
 高度成長期を終えた日本のパンク・ブームは過渡期を迎え、これからは色んなバンドが淘汰されていく時代。そんな中でも向風は今後も生き残る数少ないバンドだろう。バンドの持つ魅力は言わずともだが、それより何より向風というバンド名は「どんな障害にも負けない」という意味を込めて付けられているのだ。彼等の奏でる力強い音が、後押しするように先程の憶測を確信に変える。まったくもってたくましく、頼もしい、これからが楽しみなバンドだ。

Text by 麦山幸男(スーパーモールいせさき店)

『風祭り』
向風-J.jpg




Borderless Globe Entertainment
発売中
CD
COCU-21001
¥2,500(税抜)

大ヒット「一人じゃない」「雲にのろう」の2枚のシングルを含むメジャー1stアルバム。一貫してストレートなサウンドと潔くわかりやすい歌詞で、胸に刻まれてしまう向風サウンドが満載。「何度つまずいても色褪せない」アルバムだ。初回生産分のみ限定パッケージ。

【向風 OFFICIAL WEB SITE】http://www.mukaikaze.com/

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