MISIA

寒い冬だから聴きたくなる声がある…。
新しいMISIAのヴォーカル＆サウンド・スタイルは大きく、そして深い。
歌うことが大好きなMISIAだからこそ伝わるものがある…。

（初出『Groovin'』2003年11月25日号）

　衝撃のデビューから早くも5年。間違いなく日本のR&Bというジャンルを確立したのはMISIA。90年代末、その圧倒的な歌唱力に驚いた。全てに於いて完成度の高い音楽性は聴く人たちの心を捉えて放さない。おおらかで緩急自在に操る表現力、7オクターヴの音域を持つ張りのある声、衝撃だった。
　そしてMISIAの新しいスタイルとも言える最新シングル『IN MY SOUL／SNOW SONG』。今回はN.Y.でレコーディングされた両A面シングル。海外ではブランディ等のプロデューサーとして数々のヒットを飛ばし、R&Bの名曲を作り続けているキース・クラウチを迎えたレコーディングは、莫大なバック・トラックをキースが送り、それをMISIAが選曲して、N.Y.で2人が初めて音作りに突入、という手順で行われた。制作された曲の中から冬をイメージする2曲を選んで収録。MISIAの特徴とも言える、圧倒的な感情を込めて歌い上げる形ではなく、心の底に押し込めた感情を少し抑え目にした表現で歌われる歌は、静かで優しくそして大きく深い。R&Bに少しHIP HOPの要素を取り入れた、シンプルでありながら、複雑かつ美しいコーラス・ワークが特徴的な曲。シンプルな曲だからこそ、リラックスしたMISIAの息遣いが聴こえるような感動を味わうことが出来る。MISIA自身が歌うことを楽しんで制作し、心からの思いを歌ったという曲は心にすんなり溶け込んでじんわり広がってくる。この詩世界の深い哀しみの中に、じんわりと湧き上がる温かい思いを歌に託している。そしてもう1曲はMISIAの描くX'masソング。雪の中の彼女と彼の関係を雪が持つイメージに重ねた、雪が降る頃になるときっと思い描く、そんな曲。心に広がる雪のイメージは必ずしも優しく温かいわけでは無いけれど、2曲とも、寒い季節になると思い出すだろう名曲。やっぱり冬になるとMISIAの声、聴きたくなるよね。冴え渡る星空の彼方から聴こえるMISIAの声、綺麗だと思うんだ。MISIAの新たな魅力を引き出したのは天才プロデューサーとN.Y.の町に息づくソウルなんじゃないかと思う。全てが良い曲を作るための必然だったのかも知れない。
　更にシングルと同時発売されるのが、MISIAの5年間を振り返る上で重要となる、デビューから「Everything」までのシングルを発売順に収録したシングル・コレクション『MISIA Single Collection〜5th Anniversary』。こちらはc/w曲も同時収録した第1期MISIAの集大成。あえてリリース順に収録することでガツ〜ンって頭の上から殴られたような衝撃。繰り返し聴くと、聴くたびに新しい発見がある。さらに最新シングルがMISIAの中でどういう位置付けされるのかを改めて確認できる作品集でもある。MISIAがヴォーカリストとして何を思い、何を歌に託してきたのかが余すところ無く表されているので、ぜひじっくりとそれを感じ取ってほしい。
　そうそう、MISIAって、全てのジャンルの粋を世界規模で超えていくアーティストだよね。今MISIAが持っているもの、それはただただ素晴らしい"歌"なんだと思うな。

Text by 有田幸恵（島田駅前店）