Vo Vo Tau

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Vo Vo Tau

「癒し」から「しなやかな強さ」へ。
Vo Vo Tau初のマキシ『裸〜Nude〜』は、
厳しい現実に向けて「こうありたい」と真っ直ぐに歌う裸のトラスト・ソング!

(初出『Groovin'』2004年1月25日号)

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 「ファンクはセックスだ!」さすが本場の先生は言うことが違う。日本の音楽の専門学校とやらがソウルやファンクの精神をどう教えるのかは知らないが、L.A.の音楽学校の教師は冒頭のようなセリフを連発するらしい。日本人は音楽を頭で聴くことが多く、特に衣食住や宗教と密着している黒人音楽をレコードの音だけで習得しようとしても無理が生じるというもの。そんなインドアなレコードマニアが作る日本産のブラック・ミュージックには、音がそれらしくても肝心のソウルが入っていないことも多いようだ。
 98年にL.A.の音楽学校で出会ったRyo-thing(ギター/プログラミング)と、Pei(ベース)、Sugar(ドラムス)の3人の若き男子生徒は、冒頭のようなファンキーな先生から「ファンクやソウルの何たるか」を叩き込まれた。その後黒人ラッパーをフィーチャーしてL.A.のクラブで活動を開始し、習ったことを現場で体得していった。2000年に帰国した3人は翌年Ring(ヴォーカル)と出会い、Vo Vo Tauを結成する。本場仕込みの3人のスキルは、Ringのしなやかなヴォーカルを得たことによって俄然威力を発揮していく。生音と打ち込みのバランスを考え抜いた上に生み出される独自のR&Bサウンドは、都内を中心としたライヴ活動でも評判となり、昨年の10/22にはデビュー・アルバム『Vo Vo Tau 01hz』を発表した。
 その中のリード・トラック「Beautiful Days」がTV-CMから流れてきた時、アコースティックな音色とメロディの良さが印象的だった。打ち込み主体のHIP HOPや昨今の硬質なR&Bサウンドではなく、しなやかなグルーヴがやけに心地良い。ソングライターのRyo-thingが弾くラテン風味のアコースティック・ギターのループが魔力的に響き、その上を情感豊かなRingのヴォーカルが漂っていく。アコースティック・ソウル?オーガニック・ソウル?ネーミングは何でもいいが、とにかくミニー・リパートンやリンダ・ルイスを初めて聴いた時の新鮮さに近い感覚があった。僕はてっきりその「Beautiful Days」がデビュー・シングルだとばかり思っていたが、今年に入って1/21にリリースされた『裸〜Nude〜』が1st Maxi Singleらしい(c/wが「Beautiful Days」)。本盤は更にライヴを観てみたいという声に応え、昨年11月26日に渋谷BOXXで行われたスペシャル・ライヴを40分間に編集したDVDも付いているというお買い得盤だ。
 さてM-1の「裸〜Nude〜」だが、「Beautiful Days」のメロウなラヴ・ソングとは一変して、厳しい現実に向けて「こうありたい」と真っ直ぐに歌う裸のトラスト・ソングになっている。外に向けてのメッセージ・ソングというよりは、自分の心の内側に向けて噛みしめるようなリリックが心に響く。お互いの傷を舐め合うだけの表面的な「癒しの時代」は終わりを告げ、これからはどんな現実にも対応していける「しなやかな強さ」が必要であると痛切に思うが、この曲などは正しくそんな時代を読みとっていると言えるだろう。
 冒頭のファンキーな先生の言葉通りソウル/ファンクは快楽表現であるが、と同時に社会問題を赤裸々に歌うという側面も持っている。Vo Vo Tauは、例えばマーヴィン・ゲイやスライ&ザ・ファミリー・ストーンのそんな精神にも近づこうとしているのかも知れない。

Text by 高瀬康一(編集部)

『裸〜Nude〜』
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プラティア・エンタテインメント
発売中
Maxi Single+DVD
PYCM-1
¥1,500(税抜)

先行発売されたデビュー・アルバム『Vo Vo Tau 01hz』から人気の高い2曲、「裸〜Nude〜」と「Beautiful Days」をCUT OUT!更に昨年11月26日に渋谷BOXXで行われたスペシャル・ライヴを40分間に編集したDVDも付いて¥1,500(!)という超お買い得盤だ。


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