一青 窈(ひとと よう)

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一青 窈(ひとと よう)

「君と好きな人が百年続きますように」……。
昨年めざましい活躍を見せた一青 窈の2004年第1弾マキシ・シングルは、
ハナミズキ(花水木)の花のように優しく、そうっと、「大切なこと」を語りかけてくれる秀作だ!

(初出『Groovin'』2004年1月25日号)

一青窈-A .jpg 「君と好きな人が百年続きますように」……サビにあったこの一節にガツンとやられた。
 たとえばこの言葉を友人に投げかけるのであれば、すんなりと素直に言えるだろうし、また心からそう思えることだろう。しかし、今現在どんなに願っても想いの届かない異性(=片想いの相手)に対してはどうだろう?そんなことを思うなんて到底できない、ましてや口に出すなんて!という方がほとんどなのではないだろうか。人は「欲しい」と思っているモノに執着する。それが容易に手に入らない場合はなおさらだ。加えてそれが、お金では決して買えないモノ……つまり「人の心」であれば、行き場を失った執着心から生まれるネガティヴな感情(怒り、絶望、無力感など)に自分の気持ちを乗っ取られてしまう危険性が高い。ではどうすればそうした状態に陥るのを免れることができるのだろう。それは「手放す」ことである。執着心を手放し、自分ではなく相手の幸せを心から願うことができたとき、不思議と自らもネガティヴな感情から開放されるのである。……などと、わかった風なことをつらつらと書いてはみたが、実行するのはなかなか難しいもの。勇気だっているし、それなりに痛みも伴う。だからというわけではないが、ネガティヴな感情に苦しんでいる人にこそ、本作『ハナミズキ』を聴いてみて欲しいと思うのだ。執着心を手放すことによって得られる「大きな愛の形」と「安らぎ」、それらが溢れるほどに満ちている本作は、足踏みしているあなたの気持ちをそうっと後押ししてくれることだろう。
 デビュー・シングル『もらい泣き』が大ブレイク、この1年でめざましい活躍を遂げ、NHK「紅白歌合戦」初出場で2003年を華々しく締めくくった一青 窈。彼女の新たな歩みを示す2004年第1弾マキシ・シングル&通算5枚目となる本作は、ライヴで披露され話題を集めていた美しい曲。日本テレビ系「火曜サスペンス劇場」の主題歌としてすでにオンエア中なので、リリースを心待ちにしていた人も多いのでは?
 モダン歌謡テイストの前マキシ・シングル『江戸ポルカ/夢なかば』から一転、本作はしっとりとしたスロー・ナンバー仕様。ピアノとストリングスの音色が柔らかく響く落ち着いたサウンドに仕上がっている。限りなく優しいメロディーが紡ぎ出していくのは、想いの届かない「君」の幸せを願ってやまない切ない気持ち。それを流麗に歌う彼女の声が、少しの諦めと寂しさを伴った素直な心模様と、「これでいいんだ」と芯から思えたときに初めて実感できる「誇らしい気持ち」を聴き手に投げかける。いわば、執着心を手放して初めて得られる「大きな愛」の在りかたを、歌を通して「教えて」くれるのである。それをどう受け取るのかはもちろんあなた次第。そっと心のどこかにしまい込んでもいいし、その感動的な余韻に身を委ね、思いきり涙するのもいい。
 相手に執着すればするほど、自分自身も傷つく。反対に、相手の幸せを願えば願うほど、自分も幸せになることができる。この一見単純な、しかし誰もが目を反らしがちである「真理」を、一青 窈はきっと身をもって「知って」いるのだろう。「君と好きな人が百年続きますように」……本作を聴いたあなたが心からそう思えるよう、願ってやまない。

Text by 秋野 櫻

『ハナミズキ』
一青窈-J.jpg




コロムビアミュージックエンタテインメント
2月11日発売
Maxi Single
COCA-15622
¥1,000(税抜)

レコード大賞新人賞受賞&NHK「紅白歌合戦」初出場で昨年を華々しく締めくくった一青 窈。2004年第1弾リリースとなる本作は、ライヴで披露され注目を集めていた話題曲。「大きな愛」を歌った優しい、しっとりとしたスロー・ナンバーだ。なお日本テレビ系「火曜サスペンス劇場」の主題歌として絶賛オンエア中!初回限定特別ジャケット。

※写真は初回盤のジャケットです。

【一青 窈 OFFICIAL SITE】http://www.hitotoyo.ne.jp/

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