くるり

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くるり

外国人ドラマーが正式加入、新生くるりの5thアルバムは
個々のキャラクターを武器に、とことんギター・ロックで攻めまくる!
これぞロック、聴かなきゃアナタは損をする!!

(初出『Groovin'』2004年2月25日号)

 映画「ジョゼと虎と魚たち」、あなたは観ただろうか?くるりが音楽を手掛けたこの作品、私は2ヶ月以上も前に観たというのに、いまだ鮮明に映像が焼き付いていて、思い出す度に心がチクチクとうずいてしまう。年が明けてからは上映会場が急増したり、TVスポットも流れるなど、世間的にも評判は上々。しかし私は凄い感動した!とか、号泣したよ〜とか、明快な感想では括れず、むしろ鑑賞直後は複雑な後味が残った。しかもそれが何なのか?何故なのか??自分でもよく分からないほろ苦さで、数日悶々としたほどだ。でも確実に自分の中で強烈なインパクトを残す作品だった。
 内容の大枠は、青春を謳歌する普通の男子大学生と、足が不自由でちょっと偏屈な女の子が織りなすラヴ・ストーリーである。しかしドラマや映画のフィクションにありがちな、お涙ちょうだい系ではない。障害を大袈裟に表現する訳でもない。むしろ誰しもが味わった事のある、人間の普遍的な感情の積み重ねややりとりを自然な流れで描いている。喜怒哀楽全てが日常の他愛なさを持ち、人肌の温度を忠実に伝えている。フィクションに慣れきった体にこのリアリティ、あなたならどう受け止めるだろうか?
 そしてくるりの音楽も、この作品には必要不可欠である事を実感。全体的に日常のゆるやかさを保つテンポで、出しゃばる事もなく、過ぎゆく時を見守るように流れていく。くるりの持つ独特なアンニュイさも相性良く映像とリンク。PV等でディレクション経験があるvo.岸田の映像イマジネーションも存分に発揮されたであろう楽曲たちは、インスト曲においてもストーリーを感じさせる深みのあるサウンドとなり、映像を彩っていた。
 ところでくるりは、サントラ以外にもシングル「HOW TO GO」「ハイウェイ」「ロックンロール」と、ここ半年間で4作品をリリースするという精力的な活動を行ってきた。そして3月10日、待望の5thアルバム『アンテナ』をリリースする。映画主題歌「ハイウェイ」とサントラの楽曲は本作には収録されないが、この辺りはサントラでたっぷりお楽しみ頂くとして「HOW TO GO<Timeless>」「ロックンロール」を含む全10曲の本作は、くるりというバンドを再確認するに相応しいロック・アルバムとなった。プログレのダークな空気感もあれば、ド直球なロックン・ロールをポップに響かせる。アコギが奏でるカントリー調の弾き語りは、骨太なギター・サウンドに囲まれる作品の中でも存在感を放つ。岸田と大村のギター・コンビネーションも今では申し分なし、程良く肩の力を抜きつつ互いを煽り立てるように、ドラマテックなサウンドを築き上げている。様々な角度からギターロックを楽しませてくれている本作…新生くるりは実に頼もしく進化を遂げたようだ。
 昨年11月にクリストファー・マグワイアがドラマーとして正式加入。突然の外国人ドラマー加入に当然驚いたが、この突拍子もないアプローチもまたくるりの魅力。6月には日本武道館公演が決定、今年もますますくるりから目が離せないぞ!

Text by 浜田幸子(編集部)

『アンテナ』
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ビクターエンタテインメント
3月10日発売
CD
VICL-61306
¥2,900(税抜)

くるり待望の5thアルバムは、ロックバンドとして再確認するに相応しい骨太なギターサウンドが満載の全10曲。シングル「ロックンロール」のストレートさにホッとすれば、ワールド全開にディープなギターを掻き鳴らす。これぞロック、ご堪能あれ!

【くるり on WEB】http://www.quruli.net/

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