平川地一丁目

ARTIST PICK UP

平川地一丁目

自分の幼さと誠実さの中に見え隠れする切なさ。
桜の季節とともに訪れる別れ、そして出会い。
1つのシーンを切り取ったら、こんな歌が生まれました。

(初出『Groovin'』2004年2月25日号)

平川地一丁目-A.jpg 皆さんはもう耳にされたでしょうか?切なくも純粋な心の音楽を。皆さんの心の底に眠る確かなもの、そんな思いを詞に、そしてメロディーにして歌っているのがこの平川地一丁目というアーティストです。もう、大人になってしまった皆さん、そう、私を含めた中途半端な大人を形成している人たちには何処か気恥ずかしい言葉の数々かもしれないけれど、言葉の持つ力を改めて思い知る、そんな感じでしょうか?大人になってしまった今でも思う純粋だった頃の自分…そんなことを思いながら聴いてみました。
 平川地一丁目とは静岡県清水に実存する地名です。彼らは現在新潟県佐渡に住んでいますが、生まれたのは静岡、平川地一丁目だったんです。グループ名は他にも候補があったようですが、それはまたの機会にお話ししましょうか。彼らがいた頃にはまだ書店だったその場所には現在洋菓子店があって、直次郎君が「美味しいそうなので是非行ってみて」と言っていたとか。
 さて、林龍之介君15歳、林直次郎君13歳の兄弟ユニット平川地一丁目の活動の始まりはもうご存知でしょうか。龍之介兄ちゃんが地元佐渡の音楽イヴェントに出たいがために、直次郎君を誘って出場したのが3年前。インディーズ盤をレコーディングしたのが2年前の夏休み。そして昨年、シングル『とうきょう』をリリース。ユニットとしてはまだ始まったばかり、そして今ちょうど大人になろうと一生懸命な世代でもある彼らの、壊れそうなほどの繊細さが愛しい。昔の、ある曲の"壊れそうなモノばかり集めてしまうよ"…というフレーズがなんとなく彼らを見ていて浮かんできました。
 今作「桜の隠す別れ道」…理屈抜きで、ものすごく日本的な曲ではないでしょうか。別れと出会いの曲なのに、何故日本が連想されるのか?桜が持つ独特な和の空間、そして卒業。決められた3年という期限付きの出会い。あまりに儚い瞬きほどの時間。実際に今年中学を卒業する龍之介兄ちゃんに、そして同じく卒業を迎える旅立ちの人に共通する思いでしょう。きっと桜の季節に卒業を迎えるこの日本に毎年訪れる風景を切り取った曲なのかもしれません。詞は柔らかく、優しい。それが、切なく歌い上げる彼らの歌声にぴったりで、心の奥底にじんわりと染み込む温かいミディアム・バラード。幼いながらの誠実な恋心も見え隠れする、そんな甘酸っぱさがふんわり口に広がることでしょう。
 「桜の隠す別れ道」…それはまさにフォークというカテゴリーに収まりきれないエヴァー・グリーンなナンバー。この国で70年代に中学生、高校生だった人たちには懐かしいかもしれません。でも新しい発見もある曲だと思います。実際に卒業を迎える皆さんには共感を得られるであろうまっすぐな思い、大切にしていきたい曲になるでしょう。言葉の持つ力が十分に引き出され、1つ1つを大切に使い、そして表現している。ちょっぴり古風!?そこがいいのかもしれません。壊れそうな硝子のように、繊細な心を持った彼らから届いたのはそんな曲です。これ以上多くを語る必要はないでしょう。龍之介兄ちゃんの描く曲の切なさと直次郎君が歌う切なさをただ思う、そんな曲。ほんと、理屈じゃないんです。胸に迫るこの思いがあるだけなんです。

Text by 有田幸恵(島田駅前店)

『桜の隠す別れ道』
平川地一丁目-J.jpg




DefSTAR RECORDS
発売中
Maxi Single
DFCL-1127
¥1,165(税抜)

タイムリミットは3年でした。次の桜の季節にはお別れです。そして新たな出会いがあるでしょう。儚い中学生活を誠実に切なく歌った平一流卒業ソング。ミディアム・バラードが心に迫ります。きっと桜の花を見るとふと思い出す、優しい気持ちになるそんな1曲です…。初回盤は紙ジャケ仕様。

【平川地一丁目 公式サイト】http://www.hirakawachi1.com/

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