ジョージ・ハリスン

ARTIST PICK UP

ジョージ・ハリスン

ジョージ・ハリスンという深遠なる個性。
そしてその奥深さを知るために不可欠だった"ダーク・ホース・レーベル時代"の
作品群が、ここにようやく復活。

(初出『Groovin'』2004年2月25日号)

ジョージ・ハリスン-A.jpg 所謂世間の評価なんてものとは関係なく、自分自身が思い入れを抱く対象というようなものが誰にもあると思う。元々自分の嗜好性に世の中の評価など関係ないのだが、それでも自分にとっては思い入れがあるだけに、周りが冷たくすればするほど「自分だけはわかっているんだよ」などとつぶやいてみたくなったりもする。
 当然音楽を聴いていてもそういう場面には多々出くわす訳で、例えば一時代を築いたアーティストが作品としては素晴らしいものを作り続けているにも拘らず、移り気な時代の趨勢に翻弄され、その作品群が過小評価されていたり、あるいはまったく話題にさえ上らなかったりするケースを僕らは沢山知っている。そしてそんな状況下で生み出された作品にこそ、不思議なことにアーティスト自身の等身大の姿が素直に表現されていたり、時代におもねるようなことが無かった分、いつになっても消えることのないピュアな輝きを放っていたりする事実も知っている。だからこそ思い入れや、愛しさは余計に募ってしまうのだろう。そんな意味でビーチ・ボーイズのブラザー/リプリーズ時代と並んで僕の深い思い入れの対象となっていたのが、今回ようやく再発がかなったジョージ・ハリスンの"ダーク・ホース・レーベル時代"の作品群なのである。
 ジョージが自身のレーベル、ダーク・ホースを立ち上げたのはまだアップルとの契約が残っていた1974年。当初はA&Mによってディストリビュートされ、ジョージも積極的にプロデュースに乗り出し、ラヴィ・シャンカールやスプリンター(「ロンリー・マン」は名曲)の作品を発表。また自身のプロデュース以外にもヘンリー・マックロウ(ウイングス「マイ・ラヴ」での名演、忘れ難し!UKスワンプの名グループ、グリース・バンド出身)やアティテューズ(ダニー・クーチ、ジム・ケルトナーに加えデヴィッド・フォスターも在籍)等の作品を発表するも、肝心のジョージが作品を発表する段階になってA&Mとの関係が悪化。レーベルごとワーナーに移籍することとなるが、ジョージ以外のアーティストとの契約は切られていき、最終的に在籍アーティストはジョージ1人という形になって運営されていく。
 縮小され徐々に停滞していくレーベルの歴史が表しているように、確かにこの時代のジョージは地味である。ビートルズ解散後『オール・シングス・マスト・パス』という大作を物にし、バングラデシュのコンサートでロック界の先頭に立っていた時と比べれば、それはもう相当に地味である。けれどそこに残された作品はどれもこれも忘れ難い。「マイ・スウィート・ロード」の盗作問題をネタにした「ディス・ソング」を含む『33 1/3』の、"あっさりとした粘り腰"が癖になるファンキーさと明快なポップさはどうだ。イントロのたった数秒のオブリガートを弾かせる為にエリック・クラプトンを呼びつけた名曲「愛はすべての人に」で始まる『慈愛の輝き』に聴ける芳醇なメロディーはどうだ。また復活作とされる『クラウド・ナイン』からこぼれ落ちる、あの"4人組"っぽさにどう抗えばいいというのか。さらに地味だと言いながらも、91年にエリック・クラプトンの全面的なバックアップで行われた唯一のソロ来日公演も正にダーク・ホース時代の出来事であり、それは今も日本のファンの心の中に最高の思い出として生き続けている。
 ロック史的な見方ならビートルズ時代、そして解散後のアップル・レーベル時代におけるソロ活動に話題が集中するのも確かだと思うし、別段それを否定する気もない。それはそれでジョージが成し遂げた大きな仕事に変わりはないから。けれどそのような評価とは別次元でジョージの素顔を垣間見られるこの時期の作品群を改めて味わってみるのもジョージを知るためには欠かせないと思う。
 CDとDVDのセットで出る輸入盤ボックスはちょっとと言う方も、バラ売りの国内盤のどれか1つでも手にとってみて欲しい。発表当時は世の中から完全に無視された『ゴーン・トロッポ』にだって、シニカルでもなく、寡黙でもなく、インドでもない、そんなジョージがいたりするのだから。

Text by 植木一成

ジョージ・ハリスン
『33 1/3』
33 1/3-J.jpg




東芝EMI
3月10日発売
CD
TOCP-67335
¥2,427

冒頭から切り込んでくるグルーヴ感。でもどこか緩さを感じさせるところが最高の味。ジョージ流AORだった前作『ジョージ・ハリスン帝国』の流れを汲みつつも、楽曲の完成度は数段アップ。「ジス・ソング」に代表されるポップ魂も炸裂。(植木一成)

ジョージ・ハリスン
『慈愛の輝き』
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東芝EMI
3月10日発売
CD
TOCP-67336
¥2,427

文句なしの名盤。原題(『GEORGE HARRISON)』が指し示すように等身大のジョージの魅力が溢れる作品。メロディー・メーカーとしてのジョージが特に際立った1枚でもある。ビートルズ時代に書かれていた「ノット・ギルティ」のビートルズ・ヴァージョンは『アンソロジー3』に収録。(植木一成)

ジョージ・ハリスン
『想いは果てなく〜母なるイングランド』
想いは果てなく-J.jpg




東芝EMI
3月10日発売
CD
TOCP-67337
¥2,427

80年に一度完成を見ながらレコード会社からの要請、そしてジョン・レノンの悲劇のため新たに追悼曲「過ぎ去りし日々」等と数曲を差し替えて翌年発表された。この後のアルバムでも披露されるカヴァー曲のセンスと出来栄えにも耳を奪われる。
(植木一成)

ジョージ・ハリスン
『ゴーン・トロッポ』
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東芝EMI
3月10日発売
CD
TOCP-67338
¥2,427

1曲目からヴォーカルのこの勢いは何なのだろう!当時のジョージの生活環境のなせる技か、思いっきりトロピカルなサウンドに包まれた南国風味満点の一品。そんな中、「ドリーム・アウェイ」で聴けるひねたポップ感覚と歌メロは正にジョージ節。
(植木一成)


ジョージ・ハリスン
『クラウド・ナイン』
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東芝EMI
3月10日発売
CD
TOCP-67339
¥2,427

ダーク・ホース・レーベルにおいて最も商業的に成功した作品。ビートルズ大好き野郎である"策士"ジェフ・リンをプロデューサーに迎え、ビートリーな世界を確信犯で展開。シングル・カットされた「セット・オン・ユー」は、英・米共に大ヒット。
(植木一成)

ジョージ・ハリスン
ジョージ・ハリスン with エリック・クラプトン and ヒズ・バンド/
ライヴ・イン・ジャパン
ライヴ・イン・ジャパン-J.jpg




東芝EMI
3月10日発売
CD(2枚組)
TOGP-15007〜8
¥3,800

ビートルズ来日から25年、91年12月に行われたライヴの貴重な記録。ビートルズに対するネガティヴな思いを払拭したジョージが次々と繰り出すビートルズ・ナンバーに感涙。思わず胸が熱くなるクラプトンの的確なサポートも2人の深い交流があればこそ。(植木一成)


George Harrison
『Dark Horse Years 1976-1992』
George Harrison-J.jpg

EMI UK
3月1日発売
CD+DVD(8枚組)
IMCD:X-97052(輸入盤)
店頭価格(予価)¥19,800
ご予約特価¥16,800

『33 1/3』から『ライヴ・イン・ジャパン』までのオリジナル・アルバムと、ビデオ・クリップやEPK素材等の未公開映像を満載したDVDの8枚組ボックス・セット。DISC6〜7の『ライヴ・イン・ジャパン』の2枚のみSACDハイブリッド仕様だ!(単品発売分も同仕様)(植木一成)

ジョージ・ハリスン
『オール・シングス・マスト・パス
〜ニュー・センチュリー・エディション〜』
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東芝EMI
発売中
CD(2枚組)
TOCP-65547〜8
¥3,495

アップル時代の代表作というだけでなく、間違いなく70年代ロックを代表するアルバム。デジタル・リマスタリングの効果でジョージの歌声はさらに表情豊かになり、演奏も見違えるほどしっかりした輪郭に生まれ変わった。ボーナス・トラックに驚きの名曲も。(植木一成)


ジョージ・ハリスン
『ブレインウォッシュド』
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東芝EMI
発売中
CD
TOCP-67074
¥2,427

2002年に発表された最期のオリジナル・アルバム。全編に響き渡るジョージのギターの素晴らしさは特筆もの。この音色、このフレーズは唯一無二!ジョージの個性や世界観が至る所から感じられ、発表当初は涙無しには聴けなかった名作。(植木一成)

V.A.
『トリビュート・トゥ・ジョージ・ハリスン
〜ソングス・フロム・ザ・マテリアル・ワールド
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ビクターエンタテインメント
発売中
CD
VICP-62227
¥2,400

昨年の2月にリリースされた海外アーティストによるトリビュート盤。ビル・ワイマン、ジョン・エントウィッスル、デイヴ・デイヴィス等、同じ時代を生き抜いた"戦友たち"の参加が胸を熱くする。 ゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツの「サヴォイ・トラッフル」を選ぶセンスにニヤリ。(編集部 高瀬)


『コンサート・フォー・ジョージ』
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ワーナーミュージック・ジャパン
発売中
DVD(2枚組)
WPBR-90271〜2
¥7,000

2002年11月にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで開かれたジョージのトリビュート・コンサートを記録した映像作品。見所はトム・ペティが歌うトラヴェリング・ウィルベリーズの「ハンドル・ウィズ・ケア」。ロイ・オービソンそっくりの歌い方で二重の追悼に。(編集部 高瀬)

『エド・サリヴァン presents
ザ・ビートルズ ノーカット完全版
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ビデオアーツ
発売中
DVD(2枚組)
VABS-0010
¥4,700

ビートルズの演奏だけでなく、彼らが出演した際の番組全体を丸ごと収録した完全版。B.ジョエルもT.ラングレンもE.カルメンも皆この放送を見たからこそ、ミュージシャンになろうと決心したのだ(たぶん)。今となっては3人でハモる「ディス・ボーイ」に涙する。(編集部 高瀬)

『ザ・ビートルズ
ファースト U.S.ヴィジット
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東芝EMI
3月31日発売
DVD
TOBW-3170
¥4,800

ビートルズのアメリカ初上陸40周年を記念し、1964年2月7日のアメリカ上陸から22日のイギリス帰国までの4人を徹底的に追ったドキュメンタリーが初DVD化。やんちゃなポールとリンゴ、ニヒルなジョージ、大人な落ち着きを見せるジョンなど、アイドルだった4人の眩いばかりの魅力は必見だ。(編集部 高瀬)

【ジョージ・ハリスン 日本オフィシャルサイト】http://www.emimusic.jp/artist/harrison/

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