一青 窈(ひとと よう)

ARTIST PICK UP

一青 窈(ひとと よう)

セカンド・アルバムは「大家(ダージャー)」から「ハナミズキ」までのシングルに
初主演映画主題歌も収録された、ベスト・アルバムとも言えるほどの豪華な内容。
押しも押されぬ歌姫となった彼女の実力を十二分に満喫できる作品。

(初出『Groovin'』2004年3月25日号)

一青窈-A.jpg ある国に、歌の大好きな美しいお姫さまがいました。お姫さまは小さい頃から、お城から見える山や川、鳥や動物や花たちを歌にして歌っていました。ある時、お城にやってきた予言者が言いました。「この姫の歌には大きな力がある。今、外の世界は悲しい出来事で包まれてしまっているが、その歌声がたくさんの人を救うことだろう。」お姫さまは他の国にお嫁に行くはずでしたが、「私の歌にどんな力があるのかわからないけれど、もし私の歌で人を救うことができるなら、私は歌ってあげたい。」と思い立ち、身分を隠して旅に出たのでした。……この話にはまだ結末は訪れていません。なぜならお姫さまは今「日本」という国で、たくさんの人にその歌声を届けているところだから。この国に溢れた悲しみが、少しずつ消えていくように祈りながら…。
 …いきなり何事かと思われたかもしれないが、デビュー前に間近で「もらい泣き」を聴いて感動してからずっと、私の中で一青 窈という人は、「歌で世の中を救うためにやって来た姫」のような気がしてならないのだ。現に彼女は「もらい泣き」で幅広い年代から支持を受け、昨年はあらゆる新人賞を独占した。今作には「大家(ダージャー)」から「ハナミズキ」までのシングル曲が収録されているが、「大家(ダージャー)」「ハナミズキ」には「もらい泣き」にも見られる大きな母性にも似た深い愛情と慈しみが表れていて、瞼を熱くせずにはいられない。また、「金魚すくい」「うやむや」といった曲には、よくある日常を違った目線から見た新鮮な発見があり、ドキッとさせられる。そして「夢なかば」の、古き良き昭和時代を思わせるような、弾むようなキラキラしたメロディーはなんとも心地良い。さらに彼女が敬愛する井上陽水が曲を手掛けた「一思案(ひとしあん)」「面影モダン」といった曲では、「少年時代」や「夢の中へ」「飾りじゃないのよ涙は」を彷彿とさせる「ザ・陽水メロディー」と「ザ・一青詞(ことば)」の組み合わせがこんなにもぴったりはまることに感動させられる。さらに「一思案」はこれから公開される一青の初主演映画「珈琲時光」の主題歌でもある。曲を聴くことで、映画の方もさらに楽しみになることだろう。
 先程、彼女は「歌で世の中を救うためにやって来た姫」のようだと述べた。「姫」というのは「特別な存在」である。歌の上手さは言うまでもないが、彼女の清々しい歌声と、一度会ったら必ず惹かれてしまう、明るくポジティヴなキャラクターには、童話や古典に登場する、強い意志を持った姫のようなカリスマ性がある。さらに彼女の歌(歌詞)は驚くほどさまざまな表情を持っている。ある曲では無邪気な明るさで心からの幸せを歌い、またある曲では、恋に激しくその身を焦がし悲痛な叫びを上げる。その一喜一憂は、聴いている者をその物語の中へ引き込み、いつしか夢中にさせてしまう。振り返ってみても、そんな歌姫はこれまでにもそういなかったし、今後もそう簡単には出てこないだろう。
 そんな彼女の、ベスト・アルバムのように豪華な内容の今作は、最新シングルでもある「ハナミズキ」で幕を閉じる。主人公はやっぱり幸せになって欲しい…そう思って聴いていると少し切なくなってしまう。けれどそこには凛としたヒロインの姿がある。きっと彼女もこれから幸せになるはずだ。その様子をずっと見守っていきたい。そう強く思わせる「一青 窈」のこれからも、私は楽しみでならない。

Text by 二宮万里(編集部)

『一青想(ひとおもい)』
一青窈-J 初回盤.jpg 一青窈-J 通常盤.jpg



コロムビアミュージックエンタテインメント
4月7日発売
CD
[初回盤]DVD付 COCP-32696 ¥3,150(税込)
[通常盤]COCP-32697 ¥2,625(税込)

昨年は新人賞を総ナメ、今や押しも押されぬ歌姫となった一青 窈の2ndアルバムは「大家(ダージャー)」から「ハナミズキ」までのシングルに、初主演映画主題歌も収録された豪華な内容。彼女の実力を十二分に満喫できる。初回盤は「もらい泣き」「大家(ダージャー)」「金魚すくい」「江戸ポルカ」「ハナミズキ」のPVを収録したDVD付。

【一青窈 OFFICIAL SITE】www.hitotoyo.ne.jp/

inserted by FC2 system