くず

『ムーンライト』で巷を賑わしたあの男たちが帰ってきた！
昨年「2003年世界柔道応援ソング」（現フジテレビ系「水10！ワンナイR&R」"おむこさん"テーマ・ソング）としてオンエア後、問い合わせが殺到したあの曲が待望のCD化！

（初出『Groovin'』2004年3月25日号）

　DonDokoDonの山口智充扮するANIKI、雨上がり決死隊の宮迫博之扮するHIROの2人が刑務所の中で出会い、シャバに憧れて歌うというTV番組「エブナイ」（現フジテレビ系「水10！ワンナイR&R」）のコントから飛び出した"くず"。そんな設定から生まれた『ムーンライト』は、デビュー曲にして異例の大ヒットを記録。変にアーティスト然とした気張りがなく肩の力が抜けた感。伸びやかな歌声、確かな声量、そしてユニゾン、ハモリ共にコーラスも抜群と、歌唱力の高さはアーティストとしての力量充分、ヴァラエティ番組発お笑いフォーク・ユニットという肩書きが邪魔に思えるほど。同曲のサビで、そんな2人の美しいハモリに気持ちよさを覚えた人は数知れないはず。
　歌詞は、投げやり（失礼！）に捉えられそうなヴィジュアルとは全く正反対に、徹底的に前向き。「僕の座右の銘が今を生きるなんです。今を最高に生きる努力をしないとなんで次の日があるねんって。」とHIROが語るように、こうありたい、ここから飛び出したい、そんなポジティヴ・シンキングから生まれる夢と希望に満ちた歌を歌っている。その後、底抜けに明るい超ド級前向きソング『生きてることってすばらしい』（2ndシングル）、宇多田ヒカル、GLAYを始め、多彩なゲストを擁して完成させた『くずアルバム』（1stアルバム）を経てリリースされるのが、今回紹介する3rdシングル『全てが僕の力になる！』だ。今作にはそのくずの前向きっぷりが全開。「自由な羽根を誰かに押さえつけられても　何をやってもダメな今日があっても　全部ひっくるめて力にすればいい」という、なんとも迷いのない歌詞。普通のアーティストがこんな内容の詞を歌ったら、狙いすぎだの、臭すぎだの、外野から散々野次が飛ぶのは間違いないが、くずが歌うと妙に素直に歌詞を受け入れられるから不思議だ。それは今まで一貫して前向きなメッセージを届けてきた事、アーティストにはない親近感を持っている事、そして何よりサビで重なる2人の歌声が問答無用の力強さを放っているからだろう。そしてこの直球メッセージ・ソングが、何か新しいことが始まりそうな、希望に満ち溢れたこの季節にぴったりな春風のようなストリングスで彩られ、楽曲の中で季節感を増幅させているのも大きなポイントだろう。もうこの際、TUBEが「夏」ならくずは「春」なんてのはどうだろう。多少暴走気味、かつ突発的な発案だが、彼らの迷いのない前向きっぷりは「春」にこそふさわしいし、他にその座を狙う人もいない。というわけで気に入った方は広めていって下さい（笑）。
　それはさておき、今作にはおまけ大充実の初回5万枚限定盤が存在する。その名も「くず箱」。気になる中身は①特殊パッケージ仕様②特製Tシャツ封入③おまけDVD（ワンナイR&Rメンバー出演ライヴ収録）④4/9パシフィコ横浜のワンナイR&Rのスペシャル・ライヴ抽選ステッカーという豪華内容。プレミア必至のこのアイテム、まだ店頭に残っていたら迷わずGETだ。

Text by 麦山幸男（スーパーモールいせさき店）