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 今回ご紹介するのは、実にフル・アルバムとしては6年ぶりとなる、高橋徹也の新作『リフレクションズ』。高橋徹也と言えば、Ki/oon時代にリリースした3枚のアルバム…そこから発せられる独特の言葉遣いと一筋縄ではいかないサウンド、そして洗練されたメロディ・ラインの印象が強いというリスナーもいると思うが、その後2002年8月にヴィヴィドからリリースしたミニ・アルバム『Night & Day, Day & Night』の内容が素晴らしかっただけに、フル・アルバムを心待ちにしていた方も多いことだろう。実際、本作『リフレクションズ』は、その期待を裏切らない、彼らしさ全開の優れた内容だ。
 高橋徹也の魅力を語るとき、欠かせないのは彼独特のヴォーカル・スタイル。線の細さ、繊細さとそれとは裏腹な大胆さ。言い換えれば陰と陽のバランス。それが例えスローな曲であろうと、グルーヴィーなフリー・ソウル的アプローチのサウンドであろうと、絶妙のバランスで発揮される。もちろんそれは、彼自身が詞・曲を手がけているということに起因するものではあるが、そのバランス感覚はサウンドと詞、そして歌が渾然一体となって独特の世界を形成するのに大きな役割を果たしている。またサウンド作りにおいて、彼の中ではジャンルの壁が無いことも、もう1つの大きな特徴。実際、ジャズ・アプローチの曲もあれば、エレ・ファンクやメロウ・ソウル的アプローチもある。音楽に接する時、知っていることを系統立てて認識した上で聴いていくという聴き方も大事ではあるが、もし詳しい音楽的予備知識を持ち併せずにこの『リフレクションズ』を聴いたリスナーが、本作を入り口として様々なサウンドに入っていけるとしたら、こんなに嬉しいことはない。
 様々な触発の引き出しをさり気なく備え、そのメロディやサウンドを心の中にループさせていく高橋徹也の新作は、きっと聴き込む程に、あなたにとっての大切な1枚になるに違いない。

(初出『Groovin'』2004年4月25日号)
Text by 土橋一夫(編集部)

高橋徹也
『リフレクションズ』
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ヴィヴィド
発売中
CD+8cm CD
VSCD-286
¥3,150(税込)

フル・アルバムとしては6年ぶりとなる高橋徹也の新作は、グルーヴィーで、洗練されたサウンドとメロディが心に響く1枚。彼独特のサウンドは、聴き込む程に癖になる。なお8cm CD(ボーナス・ディスク)付きで、ここにはSmall Circle of Friendsと、Dry&Heavyの内田直之が参加。

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