Fayray

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Fayray

「愛しても愛し足りない」…恋をすると誰もが感じるもどかしさを
Fayrayがムードたっぷりに歌い上げる!早くも2004年第3弾マキシ・シングルとなる本作は、
彼女ならではの豊穣な世界に彩られた珠玉の1枚だ!

(初出『Groovin'』2004年5月25日号)

 愛しても愛しても、愛し足りない……恋をすると誰もが一度はこうした感覚にさいなまれるのではないだろうか。こんなに好きなのに、こんなに相手のことを想っているのに、まだ何かが足りない気がする……そんな欠乏感に常につきまとわれるのだ。この感覚を埋めようとして愛する気持ちに拍車をかけてみても、欠乏感は一向におさまらない。いや、おさまるどころかもっとひどくなるばかりなのである。どうしてこんなことになってしまうのだろうか?それは、実は「自分が愛し足りない」ことに原因があるのではなく、「相手から愛され足りていない」という思いを気づかぬうちに、心の奥底にくすぶらせているからなのである。自分はこんなに愛しているのに、愛した分だけ相手から愛情が返ってこない……そう感じるときのもどかしさは相当なもの。それを一刻も早く解消したくて、人は更に「愛する」。ほんとうはたくさんの愛を受け取っているのに、それには目もくれず。「見返りを求める行為には常に欠乏感がつきまとう」というこの世の真理をすっかり忘れ果てて。
 「愛しても愛し足りない 触れていても満たされない 愛とはきっとそんなもの そうふたりで育てるもの」「君に会って 自分を知って 見えたこと 失ったもの 無駄なものは一つも無い そう一人うなずく」……本作の歌詞が象徴するように、おそらくFayrayはこのことに気づいているのだろう。今回ご紹介するニュー・マキシ・シングル『愛しても愛し足りない』は、人を愛することの難しさと素晴らしさを見事に歌い上げた"大人の"珠玉作なのである。早くも2004年第3弾マキシとなる本作。精力的にリリースを重ねる彼女の意欲と、作詞・作曲&セルフ・プロデュースをもこなすアーティスティックな側面を充分に感じさせる1枚に仕上がっている。ちなみに、フジテレビ・関西テレビ系ドラマ「アットホーム・ダッド」の挿入歌としてすでにオンエアされているので、チェックを入れていた人も多いのでは?
 アコギとピアノで静かにはじまるイントロは、6/8拍子に揺れるリズムに乗せて次第にその表情を変えていく。ホーン・セクションに彩られたジャジーかつブルージーなサウンド世界が広がり、どこかレトロな雰囲気をかもし出しているのである。これが彼女の声と実にマッチしており、アンニュイでマットな質感を持つヴォーカルを更に際立たせる。そうして生み出される独特の切なさは聴く者の心を瞬時にとらえ、「愛すること」のほんとうの意味、そのことに気づいた「僕」の心情が描かれた歌詞を鮮やかに伝えていくのである。
 また、カップリング曲も秀逸のひとこと。数々のアーティストによって歌われてきたジャズのスタンダード・ナンバーをムードたっぷりにカヴァーした「My Funny Valentine」、エレキとアコギのみでシンプルにリ・アレンジした「愛しても愛し足りない」のギター・ヴァージョンも含め、本作には、彼女のシンガーとしての円熟味を感じずにはいられない奥深さがある。抜群の安定感はもとより、彼女にしか体現できない豊穣な世界が、そこには確かに存在しているのである。「愛しても愛し足りない」感覚にとらわれている人はもちろん、そうではない人も、ぜひ本作を心ゆくまで味わってみて欲しい。「聴いても聴き足りない」という嬉しい誤算にきっと見舞われるはずだから。

Text by 秋野 櫻

『愛しても愛し足りない』
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R&C Japan
5月26日発売
Maxi Single
YRCN-10041
¥1,020(税込)

作詞・作曲&セルフ・プロデュースをもこなすシンガー、Fayrayの2004年第3弾マキシ・シングル。ジャジーかつブルージーなリード曲の他、ジャズのスタンダード・ナンバーのカヴァー曲、リード曲のギター・ヴァージョンを含む全3曲を収録。フジテレビ・関西テレビ系ドラマ「アットホーム・ダッド」の挿入歌とし絶賛O.A.中!

【Fayray OFFICIAL SITE】http://www.fayray.net/

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