アラニス・モリセット

ARTIST PICK UP

アラニス・モリセット

95年のデビュー以来、強烈なキャラクターと激しいメッセージで
世界中の音楽ファンに衝撃を与えたアラニスが、
更にパワー・アップして新作をリリース。

(初出『Groovin'』2004年5月25日号)

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 芸能界というところは、とてつもなく厳しいところだそうだ。芸能界に友人はいないが、それに携わる友人から聞いた話である。性格なんかも、どんなにおとなしそうなキャラを売りにしている人でも、かなりキツイらしい。他人を蹴落として行くくらいでないと、ショウビズの世界では生きていけないそうだ。こんな話を思い出した。私の友人の体験談である。過去に、とある新人アーティストのコンベンションに招かれた時のこと。ものすごくピュアな雰囲気を持った人で、挨拶もロクにできないくらいに緊張していたのだけれど、壊れそうな飴細工のような歌声に感動。あまりに神経質そうだったので、これからこんな厳しい世界でやっていけるのだろうかと心配しながらも、とてもステキな歌声にすがすがしい気持ちで帰ったそうだ。それから2年くらいしてからだったか、そのアーティストがキャンペーンで近くに来るというので会いに行ったそう。…会ってビックリ、この世界に入って2年も経てば、いろいろなことに慣れて当たり前なんだが、あまりにも慣れすぎて、初めて会った時の同じ人とは思えぬくらいの変貌ぶりだったそう。「ピュア」という言葉と最も遠く離れた人格がそこにいたそうだ…。
 で、アラニス・モリセットである。カナダで10歳の時にショウビズの世界に入り、子役をやりながら17歳でレコード・デビュー。ソング・ライティングを自身で手掛けながら、売り方はアイドルのようだったらしくバック・ダンサーを従えてパフォーマンスをしていた時期もあるようだ。その後、もろもろの人間関係に疲れ精神的にまいってしまい、しばらく休養する。そして、カナダからロスへ移り、マドンナ主宰のマヴェリック・レーベルと契約、95年に大ヒット・アルバム『ジャグド・リトル・ピル』を発売。ここからはご存知のとおり、過去3枚のアルバムはどれもヒットし、成功を収めたと言ってよいだろう。しかし今までのアラニスの楽曲は、辛辣なまでに過去の男を罵ったり、そりゃ無理だろうと突っ込みたくなる「頑張るんだソング」など、いかにも「難しい女」をイメージさせるものが多かった。いや、誤解のないように書いておくが、キライだったわけではありません。それが、彼女の素晴らしさでもあったわけだから。ところが、今回はなんだかちょっと違うようである。絶対に切らないと言っていた、あの長い髪をばっさり切ったり、音楽以外の活動も始めたとか周辺の情報ももちろんだが、今回のアルバムは素晴らしい。全体的にとってもポップでありながら、やはりロックなんである。先行シングル「エヴリシング」は、直接的な愛の言葉は出てこないのに限りなく愛を歌ったものである。全体を通してとてもナチュラルで、肩の力が抜けた感じがする。このアルバムが頂点とは言わないが、ある種極めたような気がする。長きにわたり、ショウビズ界で生きてきたアラニスが、やっと到達した場所なのかもしれない。きっと今の彼女こそ「ピュア」なんだな。

Text by 濱田尚子(静岡流通どおり店)

『ソー・コールド・カオス』
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ーナーミュージック・ジャパン
発売中
CD
WPCR-11790
¥2,520(税込)

2年ぶりのニュー・アルバム。ジョン・シャンクスと共にセルフ・プロデュース。今作も激しいまでに自身をさらけ出しているが、とても自然で肩の力が抜けたよう。究極のラヴ・ソング「エヴリシング」他、全10曲収録。日本盤にはボーナス・トラックが1曲追加収録。初回生産特典として、直筆サイン入りギターなどが当たる応募券付き。

【アラニス・モリセット 日本オフィシャルサイト】http://wmg.jp/artist/alanis/

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