佐野元春 and The Hobo King Band

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佐野元春 and The Hobo King Band

独立レーベル"Daisy music"を設立し、その第1弾リリースとなった『THE SUN』には、
その名のごとく眩しいばかりの陽光と、前向きな意志と、心に鳴り響くサウンドと歌声が
いっぱい詰まっている。今だからこそ聴くべき音楽が、ここにある。

(初出『Groovin'』2004年7月25日号)

佐野元春-A.jpg 佐野元春の活動や行動には、いつも驚かされる。初めてラジオから流れてきた「アンジェリーナ」を耳にした中学時代、そして友人が昼の校内放送でかけた「Someday」を聴き、『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』に収録の「彼女はデリケート」にロックな心を覚えた82年、83年にニューヨーク行きを宣言し、毎週ラジオから流れてくるアメリカのカルチャーに釘付けだった84年にかけて、そして完成したアルバム『VISITORS』の衝撃…。挙げればきりがない。音楽家には大きく分けて2つのタイプが存在する気がする。同じルーティーンを守り続けるタイプと、常に新しいスタイルを追求するタイプが。佐野元春の場合、恐らく殆どの人が後者と思うだろう。しかしその精神性の奥や今まで構築してきた作品の中に通底する"変わらないものは何か"を探りながら聴くとき、彼の音楽はさらに立体的に、そして鮮やかに心に飛び込んでくる、そんな瞬間がある。
 さてそんな彼が、突如新たに独立レーベル"Daisy music"を設立し、活動を再開した。最近はテレビ番組やCMでもまた違った側面を見せている彼だが、本作『THE SUN』は彼らしい前向きな意志と、実験精神も含めた様々なアプローチのサウンドが満載された、充実した仕上がりだ。14編のロックが、お互いに違った色合いを発しながらも、アルバムを通して聴き終えたときに感じる爽快感は特筆もの。そして何より、アルバム全体から沸き上がる彼の変わらぬロック魂が理屈抜きに嬉しい。
 普通にテロや戦争や事件が起こり、問題が山積みの今の時代、信じられるのは、自分であり本当に信頼できる家族や仲間であることを痛感している人も多いことだろう。信じられない時代を嘆くのは簡単だが、でもそれを自分から変えていこう、もしくは変えるため努力しようという試みは決してたやすいものではない。この『THE SUN』に込められた佐野元春の新たな決心、そして挑戦する姿は、間違いなく僕らの心の中に根付き、緩やかに変革へと向かわせるその原動力となるだろう。そしてそういうことを考える機会を与えてくれた佐野元春に、心から感謝したい。ロックが、そして佐野元春が好きで、本当に良かった。

Text by 土橋一夫(編集部)

『THE SUN』
佐野元春-J.jpg




Daisy Music
発売中
CD
[初回限定生産DVD付]POCE-9380 ¥3,500(税込)
[通常盤]POCE-3800 ¥3,150(税込)

独立レーベル"Daisy music"を設立し、その第1弾としてリリースされた本作は、シングル「君の魂 大事な魂」「月夜を往け」を含む14編のロックを収録した、彼らしい充実したアルバム。こんな混沌とした時代だからこそ鮮明に鳴り響くサウンドと彼の歌声は、時に優しく、そして激しく魂を揺らす。なお初回限定生産盤はスペシャルDVD付なので、お早めに!

【佐野元春 オフィシャル・ファンサイト】http://www.moto.co.jp/

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