EGO-WRAPPIN'

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EGO-WRAPPIN'

2年の沈黙を破ってのニュー・アルバムをリリース!
聴く者をガンガンに押さえつける気圧の高い11曲、この重厚さ、緊迫感に圧倒。
このテンション、聴く者は覚悟せよ!!

(初出『Groovin'』2004年8月25日号)

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 古館伊知郎の「報道ステーション」という番組がスタートして、数ヶ月が経つ。持ち前のトークが炸裂する看板番組「おしゃれカンケイ」とは違って、扱っている話題やゲストが重たいせいか、お得意のいい得て妙な形容がどことなく薄っぺらく空振りしているような感じがする。古館本人の資質、または古館が課せられているいわゆる独特の切り口に、自身が縛られてしまっているのか分からないが、本人もそのあたりは歯がゆいところであろう。
 そして僕は、今回紹介するEGO-WRAPPIN'のニュー・アルバム『merry merry』を前に、ある種同じような状況に身を投じた気がした。どんな言葉を選ぼうとしても、この作品の重圧感の前では、上滑りするような気がしてしまうのである。インディーズから含めるともう何枚もアルバムを出している。だいたい想像はつきそうだ、と実は高をくくっていた。いや、その点では決して過去の作品から大きく逸脱したものではなく、まぎれもなく唯一無二のEGO-WRAPPIN'が存在している。しかし、何かが違うのである。「集大成的作品」「あらゆるジャンルを消化した」…いずれも今作を形容するにはチープすぎる。そう、それだけ重いのである。これはいい加減な思いでコメントをする訳にはいかないと緊張が走った。この重厚感、演奏する方も勿論そうだが、聴くほうにもそれなりの覚悟がいるようである。
 EGO-WRAPPIN'は「色彩のブルース」「くちばしにチェリー」とメジャー・デビュー以降(厳密に言うとインディーズ末期以降)昭和歌謡をベースにした作風がまずあった。おかげで、たくさんのフォロワーも現れた。それはそれで斬新でもありオマージュでもありよかったと思う。しかし、今回はそれをさらに遡ったようにも思えるし、進化(深化)させ、かつ派生させ、良い意味で原点回帰をも匂わせている。ラテンやクール・ジャズのようでもあり、プログレのようでもある。個人的には、70年代の矢野顕子のようなところもあり、サラ・ヴォーンのようにも感じた。余談だが、私はこのアルバムを深夜にヘッドホンで聴いていた。左から右から、ギターやアナログ・シンセやらが、ぐるぐる行ったりきたり、突然シンセが"ウニョ〜"と奇声を発したりと、ものすごいスピードで、次々と、しかも混在して表れるサウンドに、不思議な感覚に見舞われてしまった。いうならば、フランク・ザッパ全作品を高速ダイジェストで聴かされているような感覚といった感じだろうか…。
 この重厚さ、気圧の高さは聴いた者でしか味わえず簡単に伝えられるようなものではない。ここまで書いて、この言葉でまとめると身も蓋もないが、なるほど、今にして思えば身も蓋もないくらい「突き抜けた作品」ということなのだと思う。間違いない。少々強引にまとめた感もあるが、今宵はこのへんで…。

Text by 松本真一(小田原なるだ店)

『merry merry』
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トイズファクトリー
9月8日発売
CD
TFCC-86168
¥3,000(税込)

前作『Night Food』より約2年ぶりのニュー・アルバム。70年代後半の女性ヴォーカルを彷彿とさせる「林檎落花」や、今まで培ったスキル、経験を見せつけるかのような圧巻のナンバー「カサヴェテス」などを含む珠玉の11曲!初回盤のみ限定特殊パッケージ仕様。

【EGO-WRAPPIN' Official Site】http://www.egowrappin.com

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