レイチェル・ヤマガタ

ARTIST PICK UP

レイチェル・ヤマガタ

優柔不断な仕切り屋で、救いようのないロマンチスト(本人談)。
静の中に激しいほどの情熱を湛えた天才シンガー・ソングライター、レイチェル・ヤマガタ。
いよいよ日本デビュー!

(初出『Groovin'』2004年8月25日号)

レイチェル・ヤマガタ-A.jpg 昔々、「アスファルトに眠れ」というコミックがあった。これが素晴らしい作品で、音楽を志すものを、哀しく切なく残酷に描いている。当時の少女コミックでは他にみられないカッコイイ作品であった。主人公ヒューは、音楽しか生きる術のない孤独な少女。解散寸前のバンド"スウェイン"に加入する。その才能でバンドは売れていくが、リーダーのジャックは自分の才能のなさを憂い脱退。ドラッグにおぼれ、バンドもぎくしゃくし、ヒューも昔の仲間と落ちてゆく…。主人公のヒューには、本人に自覚がない才能があり、結果才能のないジャックをどんどん追い詰めてしまう。
 実際に、こんなにドラマチックな事はないにしても、努力ではどうにもならないほどの生まれ持った才能は、頂点に立てなかったアーティストたちを苦しめてしまうのだろうか。レイチェル・ヤマガタを聴いていて、ヒューを思い出してしまった。アメリカ、ヴァージニア州出身。日系の父とイタリア系の母の間に生まれ、キャロル・キング、ロバータ・フラック、ジェイムス・テイラー、リッキー・リー・ジョーンズ、サイモン&ガーファンクルなどに影響を受ける。初めてのステージは、ファンク・バンド、バンパスのコーラス。それまでは音楽活動と言えるものは無く、独学でピアノを学んだくらいであった。このバンパスで、さまざまな音楽活動についてのノウハウを身につけていく。やがて、目指す音楽性の違いにより脱退、自分の楽曲をオープン・マイクの場で試すことに。その後、あるミュージシャンと出会い、スカウトマンを紹介される。さまざまな場面でのパフォーマンスを披露する中、いよいよ今回のメジャー・デビューとなった。
 プロデューサーにジョン・メイヤー、ジェイソン・ムラーズ、デイヴ・マシューズなどを手掛けるジョン・アレイジアを迎え、試行錯誤の上に出来上がった作品だという。とにかく、一度聴いたら忘れられないハスキーな声がよい。最近は、一発当たると同じような系統のミュージシャンが出てきて、一度聴いただけでは誰が歌っているのか分からないくらい、よく似た、というか同じようなものだらけという悪い習慣がある。そんな所にこんなすっばらしく個性の際だったアーティストが出てくると、音楽を売っているものとして大変うれしい。そして、何より驚いたのが、アーティストとアルバムの紹介ライナーをレイチェル本人が書いていること。これはあまりないことで、通常はレコード会社の人間によるものがほとんど。なんでも自分で納得してやらないと気が済まない人なのだろう。そんなところにも共感を持った。本人いわく「自分の精神や心理を自分自身でも理解できていないのに、他人の解釈を通して私のことを語られるのはどうしても納得いかなかったのです」とのこと。これを許したレコード会社もあっぱれである。
 他人の敷いたレールに乗らず、それが例え困難な道であっても自分で切り拓いていく…。簡単そうで大変しんどい道である。この人の音楽を聴いていると、なるほどそんな覚悟や自信、頑固な面も垣間見ることができる。冒頭で、主人公ヒューに似ていると書いたのは、音楽に対して絶対に妥協をしないという姿勢が見えたから。素のレイチェルがどんなキャラクターの持ち主かは知らないが、音楽に関しては疑うことはありえない私である。

Text by 濱田尚子(静岡流通どおり店)

『ハプンスタンス』
レイチェル・ヤマガタ-J.jpg



BMGファンハウス
9月8日発売
CD
BVCP-24055
¥2,200(税込)
※3ヶ月限定特別価格

既に輸入盤ではその存在が話題になっているレイチェル・ヤマガタ。名前からして親近感を感じてしまうが、甘いというより切ない片思いの雰囲気が漂うアルバム。日本盤のみボーナス・トラック収録、3ヶ月限定スペシャル・プライス仕様。

【レイチェル・ヤマガタ 日本オフィシャルサイト】http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Arch/BV/RachaelYamagata/

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