175R

約1年3ヶ月振りとなる175Rの最新アルバムは、
彼らが育んできた音楽性をあますところなく体現した珠玉作！
ヒット・シングル「GLORY DAYS」「夕焼けファルセット」を含む全14曲には、新鮮な驚きが満載!!

（初出『Groovin'』2004年8月25日号）

　北九州市に数年間住んでいたことがある。北九州市というところは面白い街で、かつて5つの市に分かれていた名残か、区によって土地柄というか個性がかなり異なるのだ。だから「北九州市出身」と聞くと、つい「区はどこ？」と訊きたくなってしまう。もちろん、この街で結成された175Rのメンバーにも訊けるものなら訊いてみたい。　
　昨年彼らの音を初めて聴いたとき、不躾ではあるが「J(S)W（ジュン・スカイ・ウォーカーズ）の進化形だ！」と思った。わたしが北九州市に住みはじめたちょうどその頃、インディーズからメジャーへと活動の場を移し、爆発的な盛り上がりを見せていた J(S)W 。リアル・タイムにしろ後追いにしろ、その記憶は、175RのVo.にしてメロディー・メイカーでもあるSHOGOの脳裏にもおそらく強烈に焼きついているのだろう。彼はフェイヴァリット・アーティストとして、しっかりJ(S)Wの名を挙げている。J(S)Wの真似事ではなく、現代の空気感をふんだんに携え、まったく新しいオリジナリティーを確立した175R。彼らの音はわたしにいつも、懐かしくも新鮮な驚きを与えてくれるのである。
　今回お届けするメジャー2ndアルバム『MELODY』も例外ではない。約1年3ヶ月振りのフル・アルバムとなる本作には、ヒット・シングル「GLORY DAYS」「夕焼けファルセット」を含む全14曲を収録。ヴァラエティー豊かなラインナップが、彼らの抽斗（ひきだし）の多さを物語る珠玉作だ。とはいえ、やはりベースとなっているのは175Rの最大の持ち味であるスカコア＆メロコア。リズム・チェンジを巧みに効かせたイケイケ・チューン「PICASSO」、ハードコア・テイストの「Time out!!」、パワー・ポップの真骨頂「Side Story is...」、175R流パーティー・チューン「Tiki Tiki BANG BANG!!」、活動休止が惜しまれるKICK THE CAN CREWのMCUをフィーチャーした「ORANGE feat.MCU」など、ファスト・ビート＆メロディックなサウンドがアルバム全体を通して勢いよく飛び跳ねる。直球ド真ん中の痛快な歌詞はもちろんのこと、全14曲中6曲を占める英語詞が日本語にはない独特の響きと、リズムを生み出しているのも見逃せないポイントだ。
　一方、ナチュラルな印象の「Everything」、弾き語り調でじっくりと聴かせる「五月色」、情感溢れるヴォーカリゼーションが尾崎豊（SHOGOはフェイヴァリット・アーティストに尾崎豊も挙げており、175Rは今年3月にリリースされたトリビュート・アルバムにも参加している）を彷彿とさせる「あの日あの夜 僕を照らしていた月の光」などでは、彼らの中に根づくしっとりとした側面を披露。SHOGOの声が"イケイケ押せ押せ"の曲とは異なる表情を見せているのも聴きドコロのひとつだ。
　北九州市で結成され、この10月には日本武道館単独ライヴに挑むまでに成長した175R。かつての良きサウンドの影響を受けつつ彼らが育んできた音楽性、それが見事に体現された本作に新鮮な驚きを感じるのは、きっとわたしだけではないはずだ。なお、初回限定盤のみ特典DVD付きなので、お買い求めはお早めに。

Text by 秋野 櫻