稲葉浩志

約2年振り、通算3枚目となるソロ・アルバムが完成！"より言葉が伝わりやすい音楽"を求めて、
東京、大阪、L.A.そしてN.Y.とレコーディング・スタジオを移して制作された、
3rdマキシ・シングル「Wonderland」を含む全14曲収録！

（初出『Groovin'』2004年9月25日号）

　アルバムを聴き進むうちに、こんなにもワクワクする気持ちにさせられたのは久しぶりだ。1曲終わるごとに「次はどんな曲なんだろう？」と心から楽しみに思える。B'zとしての活動は言うまでもなく絶好調、多忙を極める中よくぞここまで完成度の高いソロ・アルバムを作り上げたものだ、と感嘆せずにはいられない。
　既発ソロ作品がすべてオリコン・チャート初登場1位を獲得している稲葉浩志。2002年10月にリリースされた『志庵』以来約2年振り、通算3枚目となるソロ・アルバム『Peace Of Mind』もおそらく、いやきっと同じ道を辿ることだろう。事実、彼のソロ活動はこの夏、パワー全開で進行。TBS系テレビ番組「恋するハニカミ！」のテーマ・ソングとしてお馴染みのソロ3rdマキシ『Wonderland』はオリコン・シングル・チャート1位を獲得、7月には約20万人を動員する初の全国ソロ・ツアー "稲葉浩志LIVE2004 〜en〜" がスタート、加えて今夏に行われた数々のロック・フェスにソロとして参加するなど、実にパワフルな活動を展開しているのである。その集大成とでも言うべき本作は、彼の研ぎ澄まされた感性が余すところなく詰め込まれた文句ナシの1枚だ。
　3rdマキシ・シングル「Wonderland」を含む全14曲は、名代のギタリスト、スティーヴィー・サラスをはじめとする百戦錬磨のアーティストがレコーディングに参加。また、稲葉自身がギター＆ブルースハープをプレイしている曲も多数ある。そんな本作のサウンド世界は、当たり前のことではあるが、B'zとはまた違う魅力を放つ。ベースとなっているのは、よリストレートなロック。ファンクやブリティッシュ・テイストなどを随所に盛り込みつつも、作り込み過ぎることのない程よい加減の音世界を見事に構築している。後ノリ気味のタイトなスネア音は、その微妙な"溜め"でコチラの腰を揺さぶってくるし、丸く歪んだエレキ音のカッティングや繊細なアコギのストローク・サウンドは、身体が自然にリズムを刻みはじめるのを促しにかかる。ブルージーなミディアム・ナンバー「おかえり」、エッジの効いたリフがたまらなくイカす「THE RACE」、シンプルなメロディーが美しく響くバラード「水平線」、ボッサ調のメロウなナンバー「横恋慕」、奥深い歌詞の世界をアコギとピアノで弾き語り風に仕上げた「あの命この命」等々、アルバムに収録されているすべての曲が、ソロ・アーティスト稲葉浩志独自の音に彩られているのである。"より言葉が伝わりやすい音楽"を求めて、東京、大阪、L.A.、N.Y.とレコーディング・スタジオを移して制作されたというのも素直に頷ける。何故なら本作は、彼のどの作品よりもヴォーカルが前面に出ているのだから。
　忙しかろうが時間がなかろうが、ソロ・アーティストとして自身の"こだわり"を徹底的に貫き通していく。本作は、稲葉浩志のそうした"強さ"が結実した傑作盤だ。なお初回盤のみ、7月24日に横浜国際総合競技場で行われたロック・フェス"THE ROCK ODYSSEY 2004"でのライヴ映像1曲を収録した特典DVD付き。お買い求めは、ぜひともお早めに。

Text by 秋野 櫻