グリーン・デイ

ARTIST PICK UP

グリーン・デイ

この夏、日本を熱狂の渦に巻き込んだグリーン・デイ。衝撃のメジャー・デビューから10年、
今なおシーンの先頭をひた走る彼らの、バンド史上最高傑作が完成!
これが世界に叩きつけるグリーン・デイのパンク魂だ!

(初出『Groovin'』2004年9月25日号)

グリーン・デイ-A.jpg 僕が初めてグリーン・デイを知ったのは大学の頃。『ドゥーキー』と『インソムニアック』、30分そこそこの2枚のアルバムを1本のカセットのA/B面にそれぞれ録音して、車でかけっぱなしにしていた。なかなか曲と曲名が一致しなかったが、彼らの持つ疾走感と、ゴキゲンなメロディー・ラインは、僕の車のスピードを上げるのには十分なものだった。続く『ニムロッド』では、前2作の路線を踏襲しつつも、次なるアルバムへの伏線とも捉えられる実験的な楽曲を含んだ意欲作となった。そして前作『ウォーニング』は、バンド史上最大の"問題作"といえよう。これまでの彼らのウリであった疾走感とキャッチーなメロディーが、楽曲のスピードを落とし、グルーヴ感と良質のメロディに特化するという、過去にない実験的なアルバムとなったのである。『ドゥーキー』の幻影を追ってきたファンは戸惑い、「もうパンクじゃない!」なんて声もささやかれ、賛否両論を巻き起こした。しかしながら屈指の名曲「マイノリティ」を擁する事で、ファンが離れるどころか次々と増え続け、実はそれこそが彼らの目論見であったかのごとく、彼らは完全にパンク・ロックという枠を超越し、新境地を切り拓いたのである。
 それから4年…ついに彼らの待望の最新作が完成した。アルバムのタイトルになっている『アメリカン・イディオット』(バカなアメリカ人)とは、おそらく今世界で最も有名なあの人物のことなのだろう。早くから先頭に立って反戦を唱えていた彼ら。タイトルから推測して、こうした反体制のエネルギーが、そのまま本作のエネルギーへとつながったことは想像に難しくない。すでにさまざまな方面でオンエアされ、サマソニの1発目にも披露されたタイトル・トラック「アメリカン・イディオット」はその典型である。この疾走感とキャッチーなメロディが同居した「これぞグリーン・デイ!」とオールド・ファンも諸手を挙げて叫びたくなるようなパンク・チューンは、本作の導入部として楽曲的にもその歌詞の内容的にも、本作の持つ方向性を決定付けている。9.11のテロ以降、何が正義なのかという観念自体が揺らぐアメリカにおいて、このアルバムのリリースが持つ意味は大きい。本来パンク・ロックは、反体制の音楽。本作はグリーン・デイが「現在のアメリカ」をパンク・キッズの視点で捉え、アメリカ、そして世界に向けたメッセージが凝縮された真のパンク・アルバムといえよう。
 今回のアルバムで特筆すべきは、アルバム全編を通してひとつのストーリーが展開されているということだ。何人かのキャラクターが自分の意志に関係なく、戦争などの事態に巻き込まれていくというもので、平和への願い、本当は愛してやまない母国アメリカへの想いが込められている。グリーン・デイ流のパンク・オペラともいえる楽曲や、なんと9分にも及ぶ組曲も収録されている。「これまで俺の人生の中で作った、最も誇りに思えるアルバムだ」とビリーが語っているとおり、グリーン・デイを構成しているすべての要素がちりばめられた集大成ともいえる、とんでもないアルバムが出来上がったことは間違いない。

Text by 矢部信之(市原白金通り店)

『アメリカン・イディオット』
グリーン・デイ-J.jpg




ワーナーミュージック・ジャパン
発売中
CD
WPCR-11910
¥2,520(税込)

デビュー以来、メロディック・パンクの旗手としてシーンを牽引してきた、グリーン・デイの4年ぶりの新作。フォロワーの追随を許さないどころか、格の違いをはっきりと見せつけたアルバムだ!日本盤はボーナス・トラック収録。初回特典はジャケット・ステッカー封入、オリジナル・グッズが当たる応募券付。

【グリーン・デイ 日本オフィシャルサイト】http://www.wmg.jp/artist/greenday/

inserted by FC2 system