風街クロニクル〜another side of happy end〜

はっぴいえんど解散後にメンバー4人のコラボレーションから生まれた奇跡の楽曲たち。
"風街印"の永遠に輝くポップスが詰め込まれたコンピレーションが登場!

Fun! Fun! Fun! File 風街クロニクル〜another side of happy end〜

(初出『 Groovin'』2004年10月25日号)

 思い出してみると、自分が一番最初にハマった曲は原田真二の「てぃーんずぶるーす」だった。この曲の作詞が松本隆、アレンジは鈴木茂なのだが、松本氏はこの詞ははっぴいえんどの方法論の再現だったと後に語っている。"微熱"な詞世界が小学4年生だった自分に理解できたかは置いておくとして、聴いているとドキドキしてくるようなポップスの本質のようなものは十分に体感できた。その後の細野晴臣、大滝詠一両氏の活躍が自分の人生に与えた影響を考えれば(大袈裟ではなくマジで!)自分はまさしく「はっぴいえんどチルドレン」なんだと思わずにはいられない。でもそれは振り返って俯瞰した時の感慨であり、当時一般の音楽ファンでそのことを意識している人はほんの一握りだったと思う。
 80年代に入りはっぴいえんどのメンバー全員が見事にチャートの上位に絡む時代が来ると、ファンの間でも音楽雑誌等でも除々に「はっぴいえんど」というバンドに焦点が当たってきたが、当時は"今をときめく才人達が昔いたバンド"という認識だったように思う。はっぴいえんどの音楽性が革新的だったからこそのメンバー達の後の活躍なのだという逆説は、90年代に入らないと本格的には語られない。しかし最近では逆にはっぴいえんどという伝説ばかりに焦点が当てられ、例えば松本氏の先導により80年代の歌謡曲というフィールドで実践されたメンバー達の実験(敢えてこう呼びたい)を、リアルタイム世代以外が知り得る機会というのも少なくなってきたのではないのだろうか。
 そういった意味でぜひ注目して頂きたいのが、11/3にリリースされる『風街クロニクル〜another side of happy end〜』だ。はっぴいえんど解散後にメンバー達、細野晴臣、大滝詠一、松本隆、鈴木茂のコラボレーションによって生み出された名曲をコンパイルした、正にサブタイトル通りはっぴいえんどの側面的内容だ。90年以降や70年代の音源も収録されているがやはり80年代が一番多く、その煌めきや存在感も圧倒的だ。それぞれの曲に関しては思い入れが強すぎて客観的に語ることができないので、亀田誠治氏による詳細なライナーを読んで頂くことにして、このコンピレーションについて偉そうに一言だけ感想を言わせて貰えば、ここに収録されている音楽こそ「普遍性のあるポップス」なんだということ。子供による子供のためだけの一瞬のヒットのみを目的に作られたものではなく、大人が知性と技術を駆使して作り上げた、いつ、誰が聴いてもグッとくるポップス。そして80年代まではそういう曲がちゃんとヒットしていた。
 はっぴいえんどが蒔いた種は現在着実に花が開いていると思うが、メインストリームではなくなっているのが寂しい。そろそろ普遍性のあるポップスをヒット曲でも聴きたいと思っているのだが、それは「はっぴいえんどチルドレン」ゆえの無茶な望みなんだろうか?

Text by 高瀬康一(編集部)

『風街クロニクル〜another side of happy end〜』
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SMDR/GT music
11月3日発売
CD(2枚組)
MHCL-427〜8
¥3,150(税込)

はっぴいえんど解散後に、細野晴臣、大滝詠一、松本隆、鈴木茂のコラボレーションから生まれた名曲群を2枚組で収録。山口百恵、松田聖子、イモ欽トリオ、薬師丸ひろ子、YMOなどの往年の名曲から、クミコやKAYO、CHEMISTRY等最近の音源までソニー音源を中心に綴る一大クロニクル。初回限定盤はスリーヴケース仕様。

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