中島みゆき

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中島みゆき

中島みゆきが「いまのきもち」で「あの頃のうた」を歌う…。
セルフ・カヴァーの域を超える32枚目のオリジナル・アルバムとは如何なるものか?
"作家"中島みゆきの世界をしなやかに表現する、"歌い手"中島みゆきがここにいる。

(初出『Groovin'』2004年11月25日号)

中島みゆき-A.jpg 中島みゆきの32枚目のオリジナル・アルバムがようやく僕らの手に届いた。今作は"歌手"中島みゆきが、いまのきもちで"作家"中島みゆきの曲を歌ったアルバムとのこと。そうなるとファンとしては「どの曲が選ばれるのか?」がどうしても気になるわけで、当然ながら僕もまた、あれこれと予想をしては楽しんでいたわけだ。後日、早速届いた資料を見た僕は、軽い戸惑いとともに大いに喜んでしまった。ほとんどの曲が『予感』までのアルバムから選曲されているなんて!いわゆる「ご乱心時代」も良いけれど、やはり『予感』までの時代に愛着のある僕にとっては、まさにベスト選曲と言っても過言ではない内容である。すべてを解説してはお楽しみが減ってしまうので、何曲かについてしばし駄文にてこの喜びを表現することを、どうかお許し頂きたい。
 1曲目「あぶな坂」。イントロのギターもオープニング・ナンバーに相応しい華やかさ。オリジナルは1stアルバムに収録されている。初めてオリジナルを聴いた時は、背筋を氷でなぞられたような気がしたなぁ。人の心の脆さを静かに突きつける弾劾者、それがみゆきさんに対する第一印象だった気がする。それがどうだろう、今回の収録では、むしろ脆い心を持つ者を優しく包み込むような、穏やかな唄いまわしが印象的だ。4曲目「信じ難いもの」は、オリジナルは『親愛なる者へ』。スライド・ギターの音色が心地よい。結構寂しい詞なのに、なぜか笑顔で歌っているような印象を受けるのはなぜだろう。エンディングのスライド・ギターの掛け合いを聞いていたら、不意にオールマン・ブラザーズを思い出してしまった。5曲目「この空を飛べたら」は、元は加藤登紀子さんに提供した曲で、自身はアルバム『おかえりなさい』で歌っていた。シャンソンを思わせるメロディー・ラインは秀逸。それにしても一時期の「ご乱心時代」が嘘のような落ち着いたアレンジ、さすがは"師匠"瀬尾一三氏と実感。そして13曲目「土用波」、「むかしの歌なんて聴きたくない…」という歌い出しのこの曲がラスト・ナンバーなんて…。みゆきさん、冗談キツ過ぎです(苦笑)!
 産み落とされた歌はいつまでも変わらない。けれど歌う者は変わり続ける。時と共に、経験と共に…。そう思うと「いまのきもち」で「あの頃の歌をうたう」という事は、"作家"中島みゆきに対しての、"歌い手"中島みゆきからの時空を超えたエールなのかもしれない。「あんたも、まだまだ若かったわねぇ」…そんなみゆきさんの声が、今にも聞こえてきそうだ。

Text by 栗原 淳(鎌倉深沢店)

『いまのきもち』
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ヤマハミュージックコミュニケーションズ
発売中
CD
YCCW-10010
¥3,150(税込)

今だからこそ、聴きたい、歌いたい。中島みゆきが「あの頃のうた」を「いまのきもち」で歌い上げる珠玉の全13曲。ファンはもちろん、ビギナーにとってもお薦めの1枚。"師匠"瀬尾一三氏と共に作り上げた、歌姫の音世界を存分に楽しめる内容です。1月からは全国ツアーも決定。こちらも要チェック!

『夜会VOL.13「24時着 0時発」』
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ヤマハミュージックコミュニケーションズ
12月15日発売
DVD
YCBW-10002
¥7,350(税込)

2004年1月3日から28日までシアターコクーンで行われた、中島みゆき恒例の舞台の模様を収録。今回は台詞が少なめで、全27曲の歌を中心に物語が進行します(約113分収録)。鮮明な映像技術により、あたかも劇場にいるかのような臨場感で、あの感動を再び!

【中島みゆき OFFICIAL SITE】http://www.miyuki.jp/

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